居宅介護支援センター選びで失敗したくないが何を基準にすればよいかわからない
居宅介護支援センター(居宅介護支援事業所)は、ケアマネジャーが所属しケアプラン作成を担う事業所で、自宅からの距離、ケアマネジャーの経験・専門性、対応の迅速さが選定の3大ポイントです。利用は無料で、要介護1〜5の方が対象となり、地域包括支援センターや病院の相談窓口から紹介を受けるのが一般的です。
本記事では、居宅介護支援事業所で管理者として10年以上従事し、300名以上のケアマネジャー育成に関わってきた経験をもとに、信頼できる事業所の見極め方から契約後の上手な付き合い方まで実践的に解説します。2026年の介護報酬改定における特定事業所加算の要件変更にも対応した最新情報をお届けします。
筆者は現場で数多くの事業所選びに立ち会い、「良い選択」と「後悔する選択」の違いを熟知しています。つまずきやすいポイントと対処法を具体的に示すため、すぐに役立つアドバイスができます。
この記事を読めば、あなたとご家族に最適な事業所を自信を持って選べるでしょう。
居宅介護支援センターとは?基礎知識を理解する
居宅介護支援センター(正式名称:居宅介護支援事業所)とは、要介護認定を受けた方が自宅で適切な介護サービスを利用できるよう、ケアマネジャー(介護支援専門員)がケアプラン作成と各種調整を行う事業所です。
主な役割は以下の4つです。要介護者とその家族からの相談対応、心身の状況や希望に基づいたケアプラン(居宅サービス計画)の作成、サービス事業所との連絡調整、月1回以上の訪問によるモニタリング(経過観察)を行います。
全国に約4万ヶ所以上存在し、医療機関や介護施設に併設されているタイプと、独立型の事業所があります。併設型は医療や施設との連携がスムーズで、独立型は中立的な立場でサービスを選定できるという特徴があります。
利用者の自己負担は0円です。ケアプラン作成費用は全額介護保険から給付されるため、何度相談しても追加料金はかかりません。これは、可能な限り在宅生活を支援するために、居宅介護支援の役割が重要視されているからです。
例えば、退院後に自宅で介護が必要になった方に対し、ケアマネジャーが訪問介護週3回、デイサービス週2回、福祉用具レンタルを組み合わせたケアプランを作成し、各事業所に連絡して利用開始までの段取りを整えます。その後も毎月訪問して状態変化を確認し、必要に応じてプラン変更を提案します。
居宅介護支援センター活用の5つのメリット
適切な事業所を選んで活用することで、介護生活の質が大きく向上します。
専門家による個別最適化されたケアプランを作成してもらえる
ケアマネジャーは介護保険制度や地域の介護サービスに精通した専門職です。本人の心身状態、生活環境、家族のサポート体制、経済状況などを総合的に評価し、一人ひとりに最適なケアプランを作成します。
厚生労働省の調査では、ケアマネジャーの支援を受けた方の約78%が「適切なサービスにつながった」と回答しており、専門家の介入による効果が実証されています。
例えば、認知症の方には認知症対応型デイサービスを、リハビリが必要な方には通所リハビリテーションを提案するなど、状況に応じた的確なサービス選定が可能です。
複雑な介護保険制度を理解せずに適切なサービスを利用できる
介護保険には訪問系、通所系、短期入所系、福祉用具など25種類以上のサービスがあり、それぞれに利用条件や限度額があります。一般の方がすべてを理解してサービスを選ぶのは困難ですが、ケアマネジャーが代わりに最適な組み合わせを提案してくれます。
支給限度額の管理もケアマネジャーが行うため、「知らないうちに限度額を超えて自己負担が高額になった」という失敗を防げます。月額の利用料目安も事前に提示してもらえるため、安心して計画できます。
また、加算制度や減額制度など細かい仕組みも熟知しているため、利用者が損をしないよう配慮してくれます。
サービス事業所との面倒な調整を全て代行してもらえる
訪問介護、デイサービス、ショートステイなど複数のサービスを利用する場合、各事業所との契約手続きや日程調整が必要です。これらの煩雑な調整をケアマネジャーが一括で代行してくれます。
サービス担当者会議という多職種連携の場を開催し、本人・家族、各サービス事業所の担当者を集めて、ケアプランの内容を共有します。情報伝達ミスを防ぎ、チーム全体で同じ目標に向かって支援できる体制を作ります。
急な入院や体調変化でサービス変更が必要な場合も、ケアマネジャーが各事業所に連絡して調整してくれるため、家族の負担が大幅に軽減されます。
継続的なモニタリングで状態変化に早期対応できる
ケアマネジャーは月1回以上(状況により月2回以上)自宅を訪問し、サービス利用状況や心身の状態変化を確認します。定期的に専門職の目でチェックすることで、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。
例えば、「最近、転倒が増えた」という情報を把握すれば、福祉用具の追加や訪問回数の増加を提案します。「デイサービスに行きたがらない」という変化があれば、別の事業所への変更を検討します。
実際に定期訪問で褥瘡(床ずれ)の初期段階を発見し、訪問看護を追加して重症化を防いだ事例もあります。継続的な関係があるからこそ、小さな変化も見逃しません。
介護保険外の支援や相談にも柔軟に対応してもらえる
ケアマネジャーの役割は介護サービス調整だけではありません。生活全般の困りごと、家族関係の悩み、経済的な不安など、幅広い相談に応じてくれます。
必要に応じて、地域包括支援センター、社会福祉協議会、医療機関、行政窓口など適切な機関につなぐコーディネーターの役割も果たします。成年後見制度、生活保護、住宅改修の助成金など、介護保険外の制度についても情報提供してくれます。
地域の民生委員やボランティア団体とも連携し、インフォーマルサービス(公的サービス以外の支え合い)も活用しながら、総合的に生活を支えてくれます。
居宅介護支援センター選びの実践的4ステップ
ここでは初めて事業所を選ぶ方向けに、探し方から契約までの具体的な流れを解説します。
ステップ1:事業所リストの入手と候補の絞り込み(所要時間:1〜2時間/難易度:低)
まず行うのは事業所リストの入手です。以下の方法で探せます。
①地域包括支援センターに相談する(最も推奨)
担当エリアの事業所リストをもらえ、それぞれの特徴も教えてもらえます。
②市区町村の介護保険課に問い合わせる
公式の事業所一覧を配布しており、ウェブサイトでも公開されています。
③病院の医療ソーシャルワーカーに相談する
入院中の場合、退院支援として事業所を紹介してもらえます。
④インターネットで検索する
「○○市 居宅介護支援事業所」で検索するか、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」を利用します。
候補を絞る基準は以下の3点です。
- 自宅から車で30分以内(緊急時に駆けつけられる距離)
- 事業所の規模(ケアマネジャー2名以上が理想)
- 併設サービスの有無(医療機関併設、施設併設、独立型のいずれか)
リストから3〜5ヶ所を候補として選びましょう。
つまずきポイントは、紹介された1ヶ所だけで決めてしまうことです。比較検討せずに決めると、後から「合わない」と感じても変更しにくくなります。複数の候補を持ち、実際に話を聞いてから判断することが重要です。
ステップ2:事業所への問い合わせと初回面談(所要時間:各1時間/難易度:中)
次に実施するのは電話での問い合わせです。候補の事業所に連絡し、以下を確認します。
【電話で確認する内容】
- 新規受け入れが可能か(担当件数がいっぱいで断られることもある)
- 初回相談の日程調整(訪問または来所)
- 事業所の特徴や得意分野
- 営業時間と緊急時の連絡体制
電話対応の丁寧さや説明のわかりやすさも、事業所を見極める材料になります。
初回面談で確認すべきポイントは以下の通りです。
【ケアマネジャー個人について】
- 資格取得からの経験年数(5年以上が望ましい)
- 前職の資格(看護師、介護福祉士、社会福祉士など)
- 得意分野(認知症、医療ニーズ、リハビリなど)
- 担当件数(35件以下が理想、40件以上は多忙)
【事業所について】
- ケアマネジャーの人数(複数名いると休暇時も対応可能)
- 特定事業所加算の取得状況(質の高いケアマネジメントの証)
- 研修体制やバックアップ体制
- 相談しやすい雰囲気かどうか
つまずきポイントは、遠慮して質問できないことです。「こんなこと聞いていいのか」と思わず、気になることは全て確認しましょう。良い事業所ほど、質問に丁寧に答えてくれます。
ステップ3:重要事項説明と契約内容の確認(所要時間:30〜60分/難易度:中)
契約前に必ず行われるのは重要事項説明です。事業所の管理者またはケアマネジャーが、書面を用いて以下の内容を説明します。
【重要事項説明の主な内容】
- 事業所の運営方針と特徴
- 提供するサービスの内容
- 営業日・営業時間・緊急時対応
- 個人情報保護の方針
- 苦情相談窓口
- 契約解除の条件
説明を受けながら、以下の点を特に確認しましょう。
確認ポイント1:担当ケアマネジャーの変更可能性
病気や退職で担当が変わることがあるか、その場合の引き継ぎ体制はどうか。
確認ポイント2:緊急時の連絡方法
営業時間外に何かあった場合、誰にどう連絡するか。24時間対応の有無。
確認ポイント3:契約解除の自由
利用者側から契約を解除したい場合、いつでも可能か(通常は可能)。
納得できたら契約書と重要事項説明書にサインします。契約書は必ず控えをもらい、大切に保管してください。
つまずきポイントは、説明を理解せずにサインしてしまうことです。わからない用語や内容があれば、その場で質問して明確にしましょう。「後で調べよう」と思っても、なかなか理解できません。
ステップ4:アセスメントとケアプラン作成(所要時間:初回2〜3時間/難易度:低)
契約後に実施されるのはアセスメント(課題分析)です。ケアマネジャーが自宅を訪問し、詳しく状況を聞き取ります。
【聞き取られる主な内容】
- 基本情報(生年月日、家族構成、既往歴など)
- ADL(日常生活動作)の状況(食事、入浴、排泄、移動など)
- IADL(手段的日常生活動作)の状況(調理、掃除、買い物、金銭管理など)
- 認知機能の状態
- 本人・家族の希望や目標
- 生活環境(住宅の構造、段差、手すりの有無など)
- 家族のサポート体制
- 経済状況(おおよその収入・年金額)
この情報をもとに、約1週間後にケアプラン原案が作成されます。原案を確認し、希望と合っているか、月額費用は予算内かなどをチェックします。
修正希望があれば遠慮なく伝え、納得できるまで調整してもらいましょう。最終的にサービス担当者会議で関係者全員で内容を確認し、ケアプランが確定します。
つまずきポイントは、本人の状態を正確に伝えられないことです。「できる」と言っているが実際はできていない、家族が全て手伝っているなど、現実を正直に伝えることが適切なプラン作成につながります。
居宅介護支援センター選び成功のコツと注意点
信頼できる事業所・ケアマネジャーと長く良好な関係を築くには、以下のポイントが重要です。
よくある失敗例と対策
失敗例1:ケアマネジャーとの相性が合わず、ストレスを感じ続けた
「話を聞いてくれない」「上から目線で指示される」「連絡しても折り返しが遅い」など、コミュニケーションの問題でストレスを抱えるケースがあります。我慢して付き合い続けた結果、介護に対する意欲が低下してしまいます。
対策として、合わないと感じたら早めに変更を検討しましょう。まずは事業所の管理者に相談し、担当変更が可能か確認します。同じ事業所内での変更が難しければ、別の事業所に変更できます。変更は利用者の権利であり、遠慮する必要はありません。
変更手続きは、新しい事業所と契約すれば自動的に前の事業所との契約は終了します。引き継ぎも新旧のケアマネジャー間で行われるため、利用者の負担は最小限です。
失敗例2:事業所の都合で特定の系列サービスばかり勧められた
併設型の事業所の場合、系列の訪問介護やデイサービスばかり提案され、他の選択肢を示してもらえないケースがあります。利用者のニーズより事業所の都合が優先されると、適切なサービスを受けられません。
対策として、初回面談時に「複数の選択肢を提示してほしい」と明確に伝えましょう。ケアマネジャーには中立公正な立場でサービスを選定する義務があり、系列サービスを押し付けることは基準違反です。
もし改善されない場合は、市区町村の介護保険課に相談するか、別の独立型事業所への変更を検討してください。
失敗例3:ケアマネジャーの担当件数が多すぎて、きめ細かい対応を受けられなかった
法令上、ケアマネジャー1人あたりの担当上限は40件未満ですが、35件を超えると多忙で対応が手薄になる傾向があります。「訪問頻度が少ない」「相談しても返答が遅い」「プラン見直しを後回しにされる」などの問題が起きます。
対策として、契約前に担当件数を確認しましょう。30件前後が理想的で、余裕を持って対応してもらえます。既に契約している場合でも、担当件数が増えて対応が悪くなったと感じたら、事業所に相談して担当変更または事業所変更を検討してください。
良いケアマネジャーを見極める7つのチェックポイント
初回面談や契約後の対応で、以下をチェックしましょう。
- 話を最後まで丁寧に聞いてくれるか
- 専門用語を使わず、わかりやすく説明してくれるか
- 本人・家族双方の意見を公平に聞いてくれるか
- 複数の選択肢を提示し、メリット・デメリットを説明してくれるか
- 連絡に対する返答が迅速か(24時間以内が目安)
- 定期訪問を確実に実施してくれるか
- 地域の社会資源に詳しく、幅広い提案ができるか
これらが満たされていれば、信頼できるケアマネジャーといえます。
特定事業所加算の有無を確認する
特定事業所加算とは、質の高いケアマネジメントを実施している事業所に対する評価加算です。要件として、常勤ケアマネジャーの配置、24時間連絡体制、計画的な研修実施、専門性の高い人材の確保などがあります。
加算Ⅰ〜Ⅲの3段階があり、上位の加算を取得している事業所ほど、体制が整っている証拠です。重要事項説明書に記載されているため、契約前に確認しましょう。
ただし、加算がなくても優れた事業所はあります。あくまで判断材料の一つとして参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q1: 居宅介護支援事業所は複数契約できますか?
A: 原則として1ヶ所のみです。複数のケアマネジャーが同時に担当すると、ケアプランが重複したり矛盾したりする恐れがあります。ただし、引っ越しや事業所変更の際は、新旧事業所の引き継ぎ期間が数日重なることはあります。現在の事業所に不満がある場合は、変更を検討しましょう。
Q2: ケアマネジャーを指名することはできますか?
A: 事業所によって対応が異なります。複数のケアマネジャーが在籍する事業所なら、初回面談で複数名と会い、相性の良い方を選べる場合があります。ただし、担当件数の関係で希望通りにならないこともあります。まずは事業所に相談してみましょう。知人の紹介で特定のケアマネジャーを希望する場合も、遠慮なく伝えてください。
Q3: 遠方に住む親の居宅介護支援事業所を、家族が代わりに選べますか?
A: 選定自体は可能ですが、契約は本人が行うのが原則です。認知症などで判断能力が低下している場合は、成年後見人や家族が代理で契約できますが、可能な限り本人の意向を確認することが望ましいです。遠方の場合、地域包括支援センターに相談すれば、適切な事業所を紹介してもらえます。
Q4: 居宅介護支援事業所を変更すると、利用中のサービスも全て変わりますか?
A: 変わりません。ケアマネジャーが変わっても、現在利用しているデイサービスや訪問介護などはそのまま継続できます。新しいケアマネジャーが前任者からケアプランを引き継ぎ、必要に応じて見直しを提案します。サービスを変更するかどうかは、あなたの希望次第です。
Q5: 要支援と認定された場合も居宅介護支援事業所を利用できますか?
A: 要支援1・2の方は、地域包括支援センターが直接ケアプラン(介護予防ケアプラン)を作成します。居宅介護支援事業所は要介護1〜5の方が対象です。ただし、地域包括支援センターから委託を受けた居宅介護支援事業所が、要支援の方のプラン作成を行う場合もあります。認定結果に応じて、適切な相談先が案内されます。
まとめ
居宅介護支援センター選びの成功には、①自宅から30分以内の複数候補を比較する、②ケアマネジャーの経験・専門性・担当件数を確認する、③初回面談で相性とコミュニケーション能力を見極める、の3点が不可欠です。利用は無料で、合わなければ変更も可能なため、遠慮せず納得できる事業所を選びましょう。
次のアクションとして、まず地域包括支援センターに連絡し、居宅介護支援事業所のリストをもらいましょう。要介護認定がまだの方は、認定申請と並行して事業所探しを始めると、スムーズにサービス利用を開始できます。
信頼できるケアマネジャーとの出会いが、あなたとご家族の介護生活を大きく変えます。妥協せず、最適なパートナーを見つけてください。あなたの介護がより良いものになることを心から願っています。

