「介護福祉士って本当に足りていないの?」と疑問に思っていませんか。
結論から言えば、2025年時点で約32万人、2040年には約57万人の介護職員が不足すると予測されています。これは現場の約2割に相当し、10人体制が必要な施設に8人しか配置できない深刻な状況です。
この記事では、厚生労働省の最新データをもとに、介護福祉士の人数不足の実態と時系列での変化、そして現場・事業所・個人それぞれができる具体的な対策まで、実践的に解説します。公的データと現場の実態を組み合わせた情報で、介護業界の未来を見据えた判断材料を提供します。
人手不足の真実を知ることで、これからのキャリア選択や職場改善のヒントが見つかるはずです。
介護福祉士は何人不足している?時系列で見る深刻化の実態
2025年問題:32万人の不足が現実に
厚生労働省の試算によると、2025年度には約243万人の介護職員が必要とされる一方、2019年度の211万人から約32万人が不足すると予測されています。これは年間約5.3万人ペースで人材を確保しなければならない計算です。
2025年は団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる年で、介護需要が急激に増加します。実際、65歳以上の高齢者は3,653万人、75歳以上は2,155万人に達する見込みです。
現場では既に「夜勤シフトが組めない」「一人当たりの業務量が限界」という声が上がっており、数字以上の切迫感があります。
2040年問題:57万人不足で現場は崩壊寸前
さらに深刻なのが2040年です。団塊ジュニア世代が高齢者となるこの年、約272万人の介護職員が必要になる一方、約57万人が不足すると推計されています。
これは全体の約21%に相当し、必要な人員の5人に1人が確保できない状況を意味します。地域によっては介護サービスそのものが提供できなくなる事態も懸念されます。
特に都市部では高齢化率が急速に進むため、都市部の有効求人倍率は7.65倍と全国平均3.97倍の約2倍に達しており、人材獲得競争が激化しています。
年間5万人の確保が必要な理由
2025年度までは毎年約5万人規模での人材確保が必須です。しかし現実は厳しく、離職率は約14%前後で推移しており、新規採用と定着の両面での対策が求められています。
介護福祉士資格取得者は増加傾向にあるものの、実際に現場で働く人の割合が低いことも課題です。資格を持ちながら他業種で働く、いわゆる「潜在介護福祉士」の掘り起こしも重要な戦略となっています。
なぜ介護福祉士が不足するのか?3つの構造的原因
原因1:少子高齢化による需給バランスの崩壊
最大の原因は、介護を必要とする高齢者が急増する一方で、支え手となる現役世代が減少していることです。
要介護・要支援認定者は2000年の約256万人から2023年には約708万人へと2.8倍に増加しました。一方、15~64歳の生産年齢人口は減少の一途をたどり、介護業界だけでなくすべての業界で人材獲得競争が激化しています。
この構造は個人の努力だけでは解決できず、社会全体での対応が必要な課題です。
原因2:仕事内容と賃金のミスマッチ
令和6年の賃金構造基本統計調査によると、医療・福祉産業の平均賃金は30.64万円で、全産業平均を下回っています。
身体的負担が大きく、夜勤もある仕事にもかかわらず、この賃金水準が「割に合わない」と感じる人が多いのが実情です。実際、業界調査では、24.6%の職員が「身体的負担が大きい」と回答しています。
ただし近年は処遇改善加算の拡充により、月額で数万円の改善が実現しており、状況は徐々に好転しつつあります。
原因3:人間関係のストレスによる離職
意外に思われるかもしれませんが、離職理由の第1位は「職場の人間関係」で23.2%を占めます。これは「収入が少ない」(6位)よりも多い結果です。
少人数で密接に働く現場では、コミュニケーションの問題が大きなストレスとなります。評価制度が不明確で、頑張りが正当に評価されないと感じることも、人間関係の悪化につながっています。
相談窓口がある事業所では「人間関係に悩みがない」と答えた職員が42.1%だったのに対し、窓口がない事業所では22.9%に留まり、19.2%もの差が出ています。
国が進める5つの人手不足対策と効果
対策1:処遇改善加算の一本化と加算率引き上げ
2024年6月、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ加算が「介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。これにより2024年度は2.5%、2025年度は2.0%(月額約6,000円相当)のベースアップが実現する見込みです。
制度の簡素化により、上位加算を取得しやすくなり、より多くの事業所で給与改善が進むことが期待されています。
対策2:情報システム導入による業務効率化の推進
記録業務のタブレット化、シフト管理システム、見守りセンサーなどの情報システム導入支援が進められています。
厚生労働省の調査では、情報システム導入施設の多くがプラスの効果を実感しており、「記録時間が30%削減」「利用者対応に集中できる時間が増えた」といった声が上がっています。
介護ロボットの導入支援も拡大しており、腰痛予防や移乗介助の負担軽減に貢献しています。
対策3:外国人材受け入れ4ルートの整備
経済連携協定、在留資格「介護」、育成就労(旧技能実習)、特定技能1号の4つのルートで外国人材を受け入れています。
特に特定技能1号は通算5年間就労可能で、2025年4月からは訪問介護も解禁されました。2023年度の調査では、外国人労働者を受け入れている介護事業所は前年比で増加しており、若い労働力の確保に寄与しています。
対策4:多様な働き方の導入支援
短時間勤務、季節限定勤務、副業・兼業など、多様な働き方を可能にする「介護現場における多様な働き方導入モデル事業」が展開されています。
「フルタイムは難しいが週3日なら」「午前中だけなら」といった希望に応える体制を整えることで、潜在的な人材を掘り起こす狙いです。
対策5:介護の魅力発信と啓発活動
11月11日を「介護の日」とし、2週間を「福祉人材確保重点実施期間」に設定。SNSや動画、漫画を活用した若者向けの情報発信、介護体験イベント、バスツアーなどを実施しています。
実際の介護現場の様子を知ってもらうことで、「きつい」「汚い」といったマイナスイメージを払拭し、やりがいや専門性をアピールしています。
事業所ができる人手不足対策4選
対策1:評価制度の明確化で頑張りを可視化
仕事のできる人とできない人の評価基準を明確にし、給与や昇進に反映させることで、職員の不満を軽減できます。
年功序列ではなく、スキルや貢献度に応じた評価制度を導入することで、若手職員のモチベーション向上と定着率改善が期待できます。具体的には、介護技術、コミュニケーション能力、チームワークなどを項目化した評価シートの活用が有効です。
対策2:相談窓口設置で人間関係を改善
職員が気軽に悩みや不満を相談できる窓口を設置することで、問題の早期発見と解決が可能になります。
定期面談の実施、匿名での意見箱設置、外部カウンセラーとの連携などが効果的です。サーベイツールを活用して組織課題を可視化し、データに基づいた改善策を講じる施設も増えています。
対策3:採用活動の積極化と情報発信
ハローワークや人材紹介会社に任せきりではなく、自ら魅力を発信する「攻めの採用」が必要です。
公式サイトの採用ページを充実させ、実際に働く職員の声や職場の雰囲気を写真・動画で紹介しましょう。SNSでの情報発信、オンライン面接の導入、介護専門の転職エージェントとの密な連携も効果的です。
対策4:資格取得支援でキャリアパスを明示
介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士の資格取得費用を全額または一部負担することで、職員のスキルアップを支援します。
資格取得後の給与アップや役職登用を明示することで、「この職場で成長できる」という実感が定着率向上につながります。研修時間の確保や受験対策講座の開催も有効です。
よくある質問(FAQ)
Q1:介護福祉士の資格を取れば給料は上がりますか?
A:はい、資格手当として月1~3万円程度の給与アップが一般的です。処遇改善加算により、さらなる待遇改善も進んでいます。
Q2:人手不足の職場は激務ですか?
A:施設によって異なります。情報システム導入や評価制度が整った職場では、効率的に働ける環境が整っています。見学や面接で実際の業務量を確認しましょう。
Q3:未経験でも介護業界に入れますか?
A:可能です。資格がなくても始められ、働きながら資格取得を支援する施設も多くあります。
Q4:外国人職員とのコミュニケーションは難しくないですか?
A:最初は戸惑うこともありますが、多くの外国人職員は日本語能力試験N3レベル以上で、業務に必要なコミュニケーションは十分可能です。
Q5:今後も介護職の需要は続きますか?
A:2040年まで需要は増加し続け、その後も一定の需要が見込まれます。安定した職業といえます。
まとめ:人手不足時代の介護キャリア戦略
介護福祉士の人数不足は、2025年に32万人、2040年には57万人という深刻な状況です。しかし、この人手不足は裏を返せば「必要とされる仕事」「安定した雇用」を意味します。
国の処遇改善、情報システム導入、外国人材受け入れなど、多角的な対策が進行中です。事業所レベルでも評価制度の整備や働き方改革が進んでおり、5年前、10年前とは職場環境が大きく変わりつつあります。
これから介護職を目指す方は、処遇改善加算を取得している施設、情報システム導入に積極的な職場、資格取得支援制度がある事業所を選ぶことで、働きやすさとキャリアアップの両立が可能です。
人手不足という課題はありますが、それは同時に、あなたの力が必要とされている証でもあります。適切な職場選びと継続的なスキルアップで、介護のプロフェッショナルとしての道を切り開いてください。

