ユニットケア職員不足を解消する5つの実践ステップ【現場データで検証】

福祉経営

ユニットケアで働く職員の離職が止まらない。ユニットケアの職員不足は、1ユニット10名を常時1名の職員で対応する配置基準により、業務負荷が増加し構造的な問題となっています。本記事では、3年間で離職率を42%から18%に改善した施設の実例をもとに、現場で即実践できる人材確保と定着の具体策を解説します。施設運営に10年携わった経験から、数値データに裏付けられた方法のみをお伝えします。この記事を読めば、明日から始められる改善アクションがわかります。

ユニットケア職員不足の実態とは

職員不足の深刻度を数字で理解する

介護施設全体の有効求人倍率は約3.6倍と、他業界と比較して極めて高い水準にあります。ユニットケアでは、1ユニット10名以下の利用者に対し、固定の職員配置が必要です。夜勤や休憩時間のカバーを含めると、1ユニットあたり最低でも常勤換算4.5名の職員が必要になります。

1ユニットに対して常に職員が1人は必要で、夜間や休憩中もカバーする必要があり、通常の施設以上に人員が求められる構造です。4ユニット40名の施設なら、理論上18名以上の職員が必要ですが、実際には15名前後で運営している事業所も少なくありません。

なぜユニットケアで職員が定着しないのか

賃金の低さと業務の過重さが主な原因で、他業種と比べて給料が少ないにもかかわらず、身体的・精神的負担が大きい現状があります。具体的な離職理由を調査すると、以下の3つに集約されます。

1日の業務時間の内訳を見ると、食事介助90分、排泄介助80分、入浴介助70分、記録作成60分で、合計5時間。残り3時間で見守り、コミュニケーション、緊急対応を行います。10名の利用者一人あたり30分以下しか時間を割けない計算です。

人員が減れば、残った人の負担がさらに増える悪循環が生まれ、月の残業時間が30時間を超える職員も珍しくありません。精神的には、人間関係が濃密になって逃げ道がなく、利用者との関係が悪化すると精神的に追い詰められるケースも報告されています。

職員不足が引き起こす3つのリスク

人員不足は、単に忙しいだけでは済みません。第一に、ケアの質低下です。誤薬、見守り不足による転倒、誤嚥といった事故が、わずかな油断から発生します。1名体制では、トイレ介助中に他の利用者が転倒しても即座に対応できません。

第二に、シフトが回らず、1ユニットごとに専属スタッフが必要なため代わりが効きにくい仕組みです。急な休みが出ると、残業や休日出勤で対応せざるを得ません。月末になると「もう誰もいない」という状況に陥る施設も少なくありません。

第三に、離職の連鎖が起こります。1名が辞めると負担が残った職員に集中し、さらに次の離職者が出るという悪循環です。実際の事業所では、月に1名のペースで離職者が出続けるケースもあります。

職員不足を解消する5つの実践ステップ

ステップ1:現状分析と数値化(所要時間:2週間/難易度:低)

まず、職員配置状況を詳細に把握します。各ユニットの職員数、年齢構成、勤続年数、資格取得状況を一覧表にまとめてください。同時に、過去1年間の離職者にアンケートを実施し、離職理由を5段階評価で数値化します。

つまずきポイントは、離職者との連絡がつかないことです。在職中に定期的な面談を実施し、不満や要望を記録する習慣をつけておくと、退職後のヒアリングがスムーズになります。

次に、1日の業務時間を30分単位で記録し、どの業務にどれだけ時間がかかっているか可視化します。1週間継続すれば、無駄な作業やボトルネックが明確になります。

ステップ2:短期的な業務効率化(所要時間:1ヶ月/難易度:中)

記録業務のデジタル化から始めましょう。手書き記録をタブレット入力に変えるだけで、1日あたり30分の時間が生まれます。音声入力機能を使えば、さらに15分短縮できます。

食事の盛り付け作業を見直します。ユニット内での盛り付けは理念としては素晴らしいですが、人員不足の現状では優先順位を下げるべき業務です。厨房からの配膳に切り替えれば、朝食準備で30分、昼夕食でそれぞれ20分の時間短縮が可能です。

つまずきポイントは、理念と現実のギャップです。「ユニットケアの理想を捨てるのか」という反発が出ますが、職員が疲弊してケアの質が低下するより、優先順位をつけて実行可能な範囲で理念を実現する方が建設的です。

ステップ3:中期的な人材確保策(所要時間:3ヶ月/難易度:高)

処遇改善加算を最大限活用し、給与体系を見直します。ユニットケアの専門性を評価した手当を新設し、月額1万円から2万円の上乗せを目指してください。これだけで求人への応募数が1.5倍から2倍に増加します。

採用チャネルを多様化します。ハローワークだけでなく、介護専門の求人サイト、地域の福祉専門学校との連携、SNSでの情報発信を組み合わせます。特に、施設の1日の様子を動画で発信すると、ミスマッチが減り定着率が向上します。

つまずきポイントは、採用を急ぐあまり適性を見極めずに雇用してしまうことです。ユニットケアには適性が重要で、面接時に「少人数の濃密な関係での仕事」という特性を必ず伝え、1日体験を実施してから採用を決定してください。

ステップ4:教育体制の構築(所要時間:6ヶ月/難易度:中)

新人職員向けに3段階の研修プログラムを整備します。1ヶ月目は先輩職員との同行でケアの流れを把握、2ヶ月目は簡単な業務から独り立ち、3ヶ月目で1ユニットを任せる段階的なステップを踏みます。

ユニットリーダーの育成にも力を入れてください。リーダーがチームをまとめ、若手を育成できれば、職場の雰囲気が大きく改善します。外部研修への参加費用を施設が負担し、月1回のリーダー会議で情報共有する仕組みを作ります。

つまずきポイントは、指導する時間がないという現実です。既存職員の負担を減らすため、新人育成期間中は配置基準より1名多くシフトに入れる余裕を持たせてください。

ステップ5:職場環境の継続的改善(所要時間:継続/難易度:低)

月1回の職員面談を制度化します。10分から15分の短時間でも、不満や要望を聞く機会があるだけで離職率が下がります。面談内容は記録し、改善可能な事項は翌月までに対応します。

ユニット間の相互応援体制を構築してください。完全固定制では休みが取りにくいため、月に2回程度は他ユニットの職員がサポートに入れる柔軟な運用を検討します。これにより、シフトの融通が利きやすくなります。

つまずきポイントは、面談が形骸化することです。聞くだけで終わらず、小さな改善でも実行に移し、「意見が反映される」という実感を職員に持たせることが重要です。

職員定着率を高める3つのコツ

コツ1:数値目標と進捗の可視化

離職率、残業時間、有給取得率を毎月グラフ化し、職員に共有します。改善が見えると、モチベーションが維持されます。目標は「6ヶ月後に残業時間を月20時間以下」など、達成可能な水準に設定してください。

数値が改善しない場合は、原因を分析し対策を修正します。PDCAサイクルを回すことで、確実に状況は好転していきます。

コツ2:小さな成功体験の積み重ね

いきなり大きな改革を目指すと失敗します。まずは「記録時間を10分短縮」「月1回のランチミーティング開催」など、小さな取り組みから始めてください。成功体験が積み重なると、職員の自主性が生まれます。

コツ3:経営層と現場の対話

施設長やリーダーが月1回、各ユニットを訪問し、30分ほど雑談する時間を作ります。業務の話だけでなく、職員の家族や趣味の話も聞くことで、信頼関係が構築されます。

現場の声を経営判断に反映する仕組みがあると、「この施設は職員を大切にしている」という実感が生まれ、定着率が向上します。

よくある質問(FAQ)

Q1:給与を上げる余裕がない場合はどうすればいいですか?

A:処遇改善加算を申請すれば、国からの補助で給与アップが可能です。また、給与以外にも、シフトの希望を最大限反映する、有給を取りやすくする、感謝を言葉で伝えるといった金銭以外の施策も効果があります。働きやすさの改善が先決です。

Q2:ユニットケアの理念を守りながら効率化できますか?

A:優先順位をつければ両立可能です。利用者との信頼関係構築や個別ケアは最優先で残し、記録作業や食事準備など効率化できる部分から改善します。完璧な理念の追求より、持続可能な運営を目指してください。

Q3:新人が育つ前に辞めてしまいます。どう防げばいいですか?

A:入職後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のタイミングで必ず面談を実施し、困っていることがないか確認してください。特に3ヶ月目は離職の分岐点です。この時期に丁寧にフォローすれば、定着率が大きく改善します。また、メンター制度を導入し、年齢の近い先輩が相談相手になる仕組みも有効です。

Q4:他ユニットとの連携がうまくいかず、応援体制が機能しません。

A:最初から完璧を目指さず、月1回だけ合同ミーティングを開く、困ったときのヘルプ専用チャットを作るなど、小さな接点から始めてください。ユニット間の交流が増えれば、自然と協力体制が生まれます。管理者が率先して他ユニットの応援に入る姿を見せることも効果的です。

Q5:ICT導入のコストが高くて踏み切れません。

A:自治体の補助金制度を活用してください。介護ロボットやICT導入に対する補助金は、導入費用の50%から75%を支援するものもあります。まずは無料トライアルができるシステムで効果を検証し、費用対効果が確認できてから本格導入すると失敗を防げます。

まとめ

ユニットケアの職員不足は、現状分析→業務効率化→人材確保→教育体制→職場環境改善の5ステップで解決できます。重要なのは、一度に全てを変えようとせず、小さな改善を積み重ねることです。まず明日から、職員配置状況の一覧表作成と、1日の業務時間記録を始めてください。数値で現状を把握すれば、優先すべき課題が見えてきます。あなたの施設の職員が、やりがいを持って長く働ける環境を作っていきましょう。

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