介護士人材不足を3軸で解決する実践ガイド│定着・採用・効率化で持続可能な運営を

福祉経営
  1. 介護施設の84%が実感する人材不足、どう解決する?
  2. 介護士人材不足の深刻な現状│データが示す実態
    1. 2026年・2040年問題と必要人数
    2. 有効求人倍率と採用困難の実態
    3. 事業所の不足感と経営への影響
  3. 介護士人材不足の5大原因│なぜ確保も定着も困難なのか
    1. 原因1: 少子高齢化による構造的ミスマッチ
    2. 原因2: 賃金水準と処遇への不満
    3. 原因3: 人間関係とハラスメント問題
    4. 原因4: 身体的・精神的負担の大きさ
    5. 原因5: ネガティブイメージと社会的評価の低さ
  4. 解決軸1: 職員定着率の向上│辞めない職場づくりの3施策
    1. 施策1: 処遇改善加算の最大活用(準備期間: 2〜4ヶ月)
    2. 施策2: 人間関係の改善とハラスメント対策(着手期間: 継続的)
    3. 施策3: 柔軟な働き方の導入(着手期間: 1〜3ヶ月)
  5. 解決軸2: 多様な人材確保│3つの採用戦略
    1. 戦略1: 外国人材の積極的受け入れ(準備期間: 6〜12ヶ月)
    2. 戦略2: 潜在介護士の掘り起こし(着手期間: 2〜4ヶ月)
    3. 戦略3: 未経験者・異業種からの転職者(着手期間: 継続的)
  6. 解決軸3: 業務効率化とテクノロジー活用│4つの手法
    1. 手法1: ICT・介護ロボットの導入(導入期間: 3〜6ヶ月)
    2. 手法2: 業務の標準化と役割分担(着手期間: 1〜2ヶ月)
    3. 手法3: 記録・報告業務の簡素化(着手期間: 1〜2ヶ月)
    4. 手法4: 多職種連携とチーム力の強化(着手期間: 1〜3ヶ月)
  7. よくある質問(FAQ)
    1. Q1: 介護士人材不足で今すぐできる対策は?
    2. Q2: 処遇改善加算の取得は難しいですか?
    3. Q3: 外国人材受け入れの成功ポイントは?
    4. Q4: ICT導入の費用対効果はありますか?
    5. Q5: 人間関係の問題を防ぐには?
  8. まとめ│3軸で介護士人材不足を解消

介護施設の84%が実感する人材不足、どう解決する?

「求人を出しても応募がない」「採用してもすぐ辞めてしまう」と悩む施設が増えています。調査によると介護事業所の84%が人材不足を実感しており、2026年度には約25万人、2040年度には約57万人の介護士が不足すると推計されています。

本記事では、介護施設の人材確保コンサルタントとして50施設以上を支援した経験から、介護士人材不足の根本原因と3軸による解決策を提示します。定着促進・採用強化・業務効率化という視点から、実行可能な具体策と優先順位を明確にし、持続可能な運営体制構築の道筋を示します。

介護士人材不足の深刻な現状│データが示す実態

2026年・2040年問題と必要人数

厚生労働省の第9期介護保険事業計画によると、2026年度には約240万人の介護職員が必要です。しかし2022年度の実績は約215万人で、約25万人が不足する計算になります。

さらに2040年度には約272万人が必要となり、約57万人の不足が見込まれています。これは必要人数の約21%に相当し、10人体制が必要な現場に8人しか配置できない状況を意味します。団塊ジュニア世代が高齢化する2040年問題により、介護士人材不足は長期化する見通しです。

実際、2023年度は前年比2.8万人減と、介護保険制度創設以来初めて介護職員数が減少に転じました。需要は増え続けているにもかかわらず、供給が減少しているという深刻な状況です。

有効求人倍率と採用困難の実態

介護関係職種の有効求人倍率は3.65倍から3.97倍で推移し、全職種平均1.15倍の約3倍以上です。これは求職者1人に対して3〜4件の求人がある状態で、施設間の人材獲得競争が極めて激化しています。

東京都では有効求人倍率が5倍を超える地域もあり、1人の求職者を5つの施設が奪い合う状況です。地方でも高齢化率が高い地域では絶対数の確保が困難で、全国的に介護士人材不足が深刻化しています。

訪問介護分野では特に深刻で、約8割の事業所が人材不足を実感しています。不足の理由として採用困難を挙げる事業所が約9割に達し、構造的な人材不足が明らかです。

事業所の不足感と経営への影響

令和5年度の調査では、約6割の事業所が介護士人材不足を実感しています。特に訪問介護では約8割が深刻な不足感を抱えており、サービス提供体制の維持が困難な施設も出始めています。

人材を確保できない状況が続くと、新規利用者の受け入れができず収益が減少します。職員の過重労働により離職が増えれば、さらに人手不足が深刻化し、最悪の場合は事業所の倒産につながります。サービスの質も低下し、利用者や家族の信頼を失う恐れがあります。

介護士人材不足の5大原因│なぜ確保も定着も困難なのか

原因1: 少子高齢化による構造的ミスマッチ

2026年には団塊世代が全員78歳以上となり、要介護認定者数は増加を続けています。2020年度の要介護認定者数は682万人で、今後も増え続ける見込みです。

一方で出生数は2023年に72万人と過去最少を更新し、生産年齢人口は減少を続けています。介護を必要とする高齢者は増え、支える側の若者は減るという構図が、介護士人材不足を構造的に生み出しています。2070年には高齢化率が38%を超え、問題は長期化する見通しです。

生産年齢人口が減る中で多くの分野で人手不足が顕在化しており、賃上げが進む他産業との人材獲得競争も激化しています。介護分野だけが人材確保に苦労しているわけではなく、日本全体の労働力不足という大きな課題の一部です。

原因2: 賃金水準と処遇への不満

令和3年度の介護職員平均月給は約32万円で、全産業平均39万円より約7万円低い状況です。社会福祉・介護事業の平均賃金は月24万9,800円と、全産業平均33万3,800円と大きな開きがあります。

仕事の重要性や負担に対して賃金が不十分という声が多く、若年層や家族を養う立場の職員の参入・定着を阻んでいます。国は処遇改善加算などで賃金引き上げを進めていますが、十分な水準には至っていません。

介護保険制度で報酬単価が決まっているため、自由な価格設定が難しい構造的課題があります。3年に1度の報酬改定でマイナス改定になると、同じ仕事をしていても事業所の利益が減少し、給与を上げにくい状況が続いています。

原因3: 人間関係とハラスメント問題

令和5年度の調査で、離職理由の第1位は「職場の人間関係に問題があった」(20.0%)でした。具体的には、上司の思いやりのない言動やパワハラ(49.3%)、上司の管理能力の低さ(43.2%)、同僚の言動によるストレス(38.8%)が挙げられています。

感情労働の側面が強い介護職では、精神的負担が蓄積しやすい特性があります。職員同士の関係だけでなく、利用者や家族とのコミュニケーション、上司との意見の食い違いなど、多様な人間関係のストレスが存在します。

相談窓口がない施設では、問題が放置され深刻化するケースもあります。心理的安全性の低さが早期離職を招き、介護士人材不足をさらに加速させています。

原因4: 身体的・精神的負担の大きさ

介護職は移乗介助や入浴介助など身体的負担が大きく、腰痛などの職業病リスクが高い仕事です。夜勤や早朝勤務などの不規則なシフトにより、十分な休息が取れない職員も存在します。

記録業務や会議など間接業務の負担も大きく、ケア以外の作業に時間を取られます。人手不足により一人当たりの業務量が増加し、過重労働が常態化している職場も見られます。休暇が取りにくい環境も、心身の疲労を蓄積させる要因です。

業務の重要性に対して社会的評価が低いと感じている職員が20.4%に達し、働きがいを感じにくい環境が介護士人材不足につながっています。

原因5: ネガティブイメージと社会的評価の低さ

「きつい・汚い・危険」の3Kイメージに加え、「給料が安い・帰れない・厳しい」という新3Kイメージも定着しています。こうしたネガティブな情報が先行し、未経験者や若者の参入を阻んでいます。

夜勤があり体力的にきつい仕事、給与水準が低い仕事、将来に不安がある仕事というネガティブな情報が流布し、介護職への社会的評価が十分に高まっていません。実際には専門性が高くやりがいのある仕事ですが、ポジティブな情報発信が不足しています。

このイメージが先行することで、若者や他業種からの転職希望者が介護業界から距離を置き、慢性的な介護士人材不足につながる一因となっています。

解決軸1: 職員定着率の向上│辞めない職場づくりの3施策

施策1: 処遇改善加算の最大活用(準備期間: 2〜4ヶ月)

国の処遇改善加算制度を最大限活用し、職員の賃金を引き上げます。2024年度報酬改定で3種類の処遇改善加算が一本化され、多くの事業所での活用が進んでいます。

最も高いⅠを取得すれば、職員一人当たり月2〜3万円の給与増が実現できます。さらに2024年度に2.5%、2025年度に2%のベースアップにつながるよう、加算率が引き上げられています。処遇改善により給与水準が上がれば、求人への応募が増え、介護士人材不足の緩和につながります。

要件を満たすためのキャリアパス制度設計、評価基準の明確化、研修計画の策定を計画的に進めましょう。つまずきポイントは「書類作成の煩雑さ」です。社会保険労務士や行政の相談窓口に相談し、他施設の事例を参考にすれば負担を軽減できます。

施策2: 人間関係の改善とハラスメント対策(着手期間: 継続的)

離職理由の第1位は職場の人間関係です。定期的な1on1面談を実施し、職員の悩みや要望を聞き取ります。小さな問題でも放置せず、迅速に対応する姿勢を示せば、信頼関係が構築されます。

ハラスメント相談窓口を設置し、匿名で相談できる仕組みを整えます。上司のパワハラ、同僚の言動によるストレスなど、人間関係の問題に真摯に対応しましょう。チームミーティングで感謝を伝え合う文化を育て、お互いを尊重する雰囲気を作ります。

採用がうまくいっている理由として、最も多いのは「職場の人間関係がよいこと」(62.7%)でした。次いで「残業が少ない、有給休暇をとりやすい、シフトがきつくないこと」(57.3%)が挙げられています。良好な人間関係が維持できれば、職員が長く働き続け、介護士人材不足の解消につながります。

施策3: 柔軟な働き方の導入(着手期間: 1〜3ヶ月)

時短勤務、パート・アルバイトの活用、シフトの多様化により、育児や介護と両立できる環境を整えます。フルタイムで働けない人材も活用すれば、介護士人材不足の緩和が可能です。

週2〜3日勤務、午前のみ・午後のみの勤務など、個人の事情に合わせた選択肢を用意します。採用がうまくいっている理由として「仕事と家庭(育児・介護)の両立の支援を充実させていること」(47.9%)が挙げられており、柔軟な働き方が人材確保の鍵です。

労働時間や労働日を本人の希望で調整できることが、定着促進に最も効果的です。離職率が下がれば、新規採用の負担が減り、介護士人材不足の悪循環を断ち切れます。

解決軸2: 多様な人材確保│3つの採用戦略

戦略1: 外国人材の積極的受け入れ(準備期間: 6〜12ヶ月)

国内の働き手だけでは人材を確保しきれない今、外国人材の受け入れは非常に有効な解決策です。介護分野では、特定技能、技能実習、EPAなどの在留資格で外国人材を受け入れることができます。

特定技能1号は、介護技能評価試験と日本語試験の合格が必要ですが、即戦力として活躍できます。介護福祉士資格を取得すれば在留資格「介護」に移行し、永続的就労が可能となります。技能実習制度では最大10年間の雇用が可能で、その間に介護福祉士資格を取得すれば永続的な在留が見込めます。

外国人材は若く、給与と住居があれば地方でも採用しやすい傾向があります。日本語教育、生活サポート、文化理解の支援など、受け入れ体制を整備すれば、長期的な戦力となり介護士人材不足の解消に貢献します。

戦略2: 潜在介護士の掘り起こし(着手期間: 2〜4ヶ月)

資格はあるが働いていない潜在介護福祉士は全国に約12万人存在します。結婚・出産で離職した元職員、他業界に転職した有資格者などにアプローチし、復職を支援します。

ブランク研修、短時間勤務、週2〜3日勤務など、復職のハードルを下げる施策を用意します。育児と両立できる勤務時間帯、フレキシブルなシフトなど、個人の事情に配慮した働き方を提示しましょう。

再就職準備金貸付制度を活用すれば、離職した介護職員の復職を経済的に支援できます。修学資金貸付制度や就職支援金など、国の支援制度も積極的に活用し、介護士人材不足の解消を図ります。

戦略3: 未経験者・異業種からの転職者(着手期間: 継続的)

介護に関する入門的研修を実施し、未経験者が介護を知る機会を提供します。職場体験やマッチング支援を組み合わせ、研修から入職までつなげる一体的支援が効果的です。

他業種で培ったスキルを活かせる点をアピールします。接客業での対人スキル、営業職でのコミュニケーション能力、事務職での管理能力など、異業種経験が介護現場で活きる場面は多数あります。

年齢に関係なく無資格・業界未経験からスタートできる点が介護職の魅力です。高齢化により介護サービスの需要が高まり、年代を問わず働き手が求められており、介護士人材不足の解消には多様な人材の活用が不可欠です。

解決軸3: 業務効率化とテクノロジー活用│4つの手法

手法1: ICT・介護ロボットの導入(導入期間: 3〜6ヶ月)

ケア記録のデジタル化により、手書き作業を大幅に短縮します。タブレット端末で記録すれば、リアルタイムで情報共有が可能となり、申し送りの負担も減ります。少ない介護士人材でも質の高いサービスを提供できる体制を構築します。

見守りセンサーを活用すれば、夜勤の巡回業務負担が軽減されます。移乗支援ロボットの導入で腰痛リスクも軽減でき、職員の健康維持につながります。AIを活用し業務スケジュールを最適化すれば、効率的な人員配置が可能です。

国や自治体の補助金制度を活用すれば、導入コストを3〜5割削減できます。介護テクノロジー導入支援事業などの補助金を積極的に活用しましょう。業務効率化により職員の負担が減れば、離職率が下がり、介護士人材不足の緩和につながります。

手法2: 業務の標準化と役割分担(着手期間: 1〜2ヶ月)

専門職でなくても可能な業務を洗い出し、補助職員や事務員に振り分けます。清掃、配膳、リネン交換、受付対応などを分業すれば、介護士は専門性の高い業務に集中できます。

マニュアルを整備し、誰が実施しても同じ品質を保てる体制を構築します。業務フローを可視化し、無駄な作業を削減することで、残業時間の短縮につながります。

限られた介護士人材を最大限活用するため、業務の優先順位を明確にします。本当に必要な業務に人員を配置すれば、現在の介護士人材でもサービスの質を維持できます。

手法3: 記録・報告業務の簡素化(着手期間: 1〜2ヶ月)

記録様式を見直し、必要最小限の項目に絞ります。定型文やテンプレートを用意し、入力時間を短縮します。

音声入力機能を活用すれば、移動中や介助直後にも記録でき、後回しによる記憶の曖昧化を防げます。クラウド管理により、どこからでもアクセス可能となり、情報の一元化が実現します。

記録業務の簡素化により、介護士がケアに集中できる時間が増えます。残業時間の削減にもつながり、介護士人材の負担軽減と定着促進が期待できます。

手法4: 多職種連携とチーム力の強化(着手期間: 1〜3ヶ月)

看護師、リハビリスタッフ、栄養士などとの情報共有を円滑にすれば、重複作業が減ります。チーム全体で利用者を支える体制を作り、介護士の負担を分散します。

定期的なカンファレンスで情報を共有し、それぞれの専門性を活かした支援計画を立てます。LIFE(科学的介護情報システム)を活用し、データに基づいたケアを実践しましょう。

チーム力が高まれば、少ない介護士人材でも効果的なサービス提供が可能となり、職員の負担も軽減されます。介護士人材不足の状況下でも、質の高いケアを維持できます。

よくある質問(FAQ)

Q1: 介護士人材不足で今すぐできる対策は?

A: 既存職員の定着に注力しましょう。定期面談の実施、小さな不満への迅速な対応、柔軟なシフト調整など、今いる職員が辞めない環境を作ることが最優先です。並行して処遇改善加算の検討、多様な採用チャネルの確保を進め、中長期的な介護士人材確保戦略を構築しましょう。

Q2: 処遇改善加算の取得は難しいですか?

A: 要件を満たすための準備は必要ですが、計画的に進めれば取得可能です。キャリアパス制度の整備、職場環境改善の取り組み、賃金改善の計画書作成などが求められます。社会保険労務士や行政に相談し、他施設の事例を参考にすれば、スムーズに進められます。

Q3: 外国人材受け入れの成功ポイントは?

A: 日本語教育と生活サポートが不可欠です。定期的な日本語研修、生活相談窓口、メンター制度を整備しましょう。既存職員への事前説明と理解促進も重要で、「共に働く仲間」として受け入れる文化を作れば、チーム全体が活性化し、介護士人材不足の解消に貢献します。

Q4: ICT導入の費用対効果はありますか?

A: 初期費用はかかりますが、記録時間の短縮により残業代が減少し、1〜2年で回収できるケースが多いです。国や自治体の補助金制度を活用すれば導入コストを3〜5割削減できます。まずは効果が出やすい記録システムから小規模で始め、段階的に拡大するのが賢明です。

Q5: 人間関係の問題を防ぐには?

A: 定期的な1on1面談、ハラスメント相談窓口の設置、チームビルディング研修が効果的です。管理者が職員の声に真摯に耳を傾け、小さな問題でも放置せず対応する姿勢が、信頼関係構築の鍵となります。感謝を伝え合う文化を育て、心理的安全性を高めましょう。

まとめ│3軸で介護士人材不足を解消

介護士人材不足は、職員定着率の向上、多様な人材確保、業務効率化という3つの軸で解決に近づきます。国の支援制度を最大限活用しながら、施設独自の魅力を高める取り組みを並行して進めることが重要です。

すべてを一度に実行する必要はありません。まず職員との対話、処遇改善加算の検討、業務の洗い出しなど、できることから始めましょう。小さな改善を積み重ねることで、職員が「この職場で働き続けたい」と感じる環境が生まれ、介護士人材不足の悪循環を断ち切れます。

2026年・2040年問題が迫る中、今日からできる一歩を踏み出してください。あなたの施設の未来は、今この瞬間の決断と行動で変わります。

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