介護職員の人材不足は年々深刻化し、2025年には約32万人、2040年には約69万人もの介護人材が不足すると予測されています。現在、介護事業所の64%が人手不足を実感しており、特に訪問介護では81.4%が深刻な状況です。
この記事では、最新データに基づく人材不足の現状分析から、現場で即実践できる7つの具体的対策まで、施設管理者が今日から取り組める解決策を優先順位とともに解説します。介護業界で15年以上の現場経験を持つ専門家の視点から、実際に効果が確認された方法のみを厳選してご紹介します。
記事を読み終える頃には、自施設に最適な人材確保・定着戦略が明確になり、明日から実行できる具体的なアクションプランが手に入ります。
介護職員の人材不足の現状|数字で見る深刻度
2025年問題が目前に迫る
厚生労働省の調査によると、2025年度には約243万人の介護職員が必要とされる一方、2022年度時点での介護職員数は約215万人。つまり約32万人の人材が不足する計算です。さらに2040年度には約280万人が必要となり、約69万人の不足が予測されています。
この数字は、毎年約5万人ずつ新たな介護人材を確保し続ける必要があることを意味します。しかし現実には、少子高齢化により生産年齢人口そのものが減少しており、人材獲得競争は激化の一途をたどっています。
地域別・職種別の深刻度
調査機関の令和5年度調査では、介護施設全体の64%が人手不足を実感していますが、職種別に見ると状況はさらに深刻です。
訪問介護員では81.4%、介護職員では65.9%が不足していると回答しています。地域別では、都市部の有効求人倍率が7.65倍と最も高く、関東圏では訪問介護職員の83%が不足している状況です。一方、地方都市でも介護職員の73.1%が不足しており、都市部・地方を問わず全国的な課題となっています。
有効求人倍率で見ると、介護関係職種は全国平均3.97倍で、全職業平均の1.16倍と比較して約3.4倍もの開きがあります。つまり、1人の求職者を約4つの事業所が奪い合っている状態です。
高齢化する介護職員
人材不足に追い打ちをかけるのが、介護職員自身の高齢化です。介護従事者の19.2%が60歳以上である一方、10〜20代はわずか6.2%にとどまっています。
今後、定年退職を迎える職員が増加する中、若手人材の確保が追いついていない現状は、人材不足をさらに加速させる要因となっています。
介護職員が不足する5つの根本原因
原因①:少子高齢化による労働力人口の減少
日本全体の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年以降減少し続けており、2025年には高齢者が総人口の約30%を占める超高齢社会に突入します。介護を必要とする人口は増える一方で、働き手となる若年層は減少するという構造的な問題が、人材不足の最大の要因です。
要介護・要支援認定者数は、2000年の約256万人から2023年には約708万人へと約2.8倍に増加。今後も都市部を中心に増加が見込まれており、介護サービスの需要はさらに高まっていきます。
原因②:給与水準の低さ
仕事の負担に対して給与が見合わないという認識が、人材確保を難しくしています。厚生労働省の調査では、介護福祉士の推定平均年収は約340万円。日本の給与所得者の平均給与460万円と比較すると、約120万円もの開きがあります。
医療・福祉産業全体の平均賃金は30.64万円で、全産業平均よりも低い水準です。夜勤や身体的負担の大きい業務を伴うにもかかわらず、この給与水準では他業種への人材流出を防ぐことが困難です。
原因③:職場の人間関係の問題
調査機関の調査によると、介護職を辞めた理由の第1位は「職場の人間関係に問題」で18.8%を占めています。これは「結婚・出産・妊娠・育児」や「法人・事業所の理念や運営のあり方への不満」を上回る結果です。
評価制度が整備されていない職場では、仕事の能力差や働きぶりが給与や昇格に反映されにくく、不公平感から人間関係が悪化するケースが多く見られます。特に若手とベテラン職員との間で摩擦が生じやすく、新人が定着しない要因となっています。
原因④:身体的・精神的負担の大きさ
介護従事者の29.3%が「身体的負担が大きい」と回答しており、約3割もの人が身体的負担に悩んでいます。入浴介助や移動介助では腰や膝を痛めやすく、慢性的な腰痛に悩む職員も少なくありません。
特に夜勤では少人数で多くの利用者に対応する必要があり、肉体的・精神的な負荷はさらに増します。こうした負担の蓄積が、離職や人材確保の難しさにつながっています。
原因⑤:社会的評価の低さ
社会的に価値ある仕事であるにもかかわらず、「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根強く、若者が介護職を敬遠する一因となっています。介護従事者の20.2%が「業務に対する社会的評価が低い」と感じており、専門性や資格が適切に評価されていないという認識があります。
しかし実際には、職場環境の改善や業務効率化、処遇改善に取り組む施設は増えており、一部の人が持つマイナスイメージと現実には乖離が生じています。
人材不足を解消する7つの実践的対策
対策①:処遇改善加算の活用で給与アップ【優先度:★★★】
実施難易度:中 効果:大 即効性:中
2024年6月に処遇改善加算が一本化され、取得しやすくなりました。介護職員等処遇改善加算を取得することで、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%(月額6,000円相当)のベースアップが可能です。
具体的な実施手順
- 加算要件の確認(昇給制度・賃金体系の整備、研修機会の確保など)
- 就業規則・給与規程の見直し
- 加算申請書類の準備と提出
- 職員への説明会実施
処遇改善加算を取得している事業所は、給与面だけでなく労働環境も一定水準をクリアしているため、求職者へのアピールポイントにもなります。
対策②:明確な評価制度の整備で定着率向上【優先度:★★★】
実施難易度:中 効果:大 即効性:中〜長
評価制度が整備されていない職場では、頑張っている職員が報われず、不公平感から人間関係が悪化します。明確な評価基準を設けることで、職員のモチベーション向上と離職率低下の両方が期待できます。
評価制度整備のポイント
- 業務スキル・知識・勤務態度など複数の観点から評価
- 評価基準を数値化・可視化して透明性を確保
- 評価結果を給与・賞与・昇格に明確に反映
- 定期的な面談でフィードバック
評価制度の導入により、キャリアパスが明確になることで、長期的な視点で働ける環境が整います。
対策③:ICT・介護ロボット導入で業務効率化【優先度:★★☆】
実施難易度:中 効果:中 即効性:中
人手不足の中でも質の高いケアを提供するには、業務効率化が不可欠です。ICTツールや介護ロボットの活用により、事務作業の時間を削減し、利用者と向き合う時間を増やすことができます。
導入効果が高いツール
- 勤怠管理・シフト作成アプリ:管理業務の時間を30〜40%削減
- 介護記録用タブレット:記録時間を50%削減
- 見守りセンサー:夜勤の負担軽減
- 移乗支援ロボット:腰痛リスク軽減
厚生労働省の調査では、ICTを導入した施設の多くがプラスの効果を実感しています。導入には補助金制度も活用できるため、初期投資の負担を抑えることが可能です。
対策④:外国人介護人材の受け入れ【優先度:★★☆】
実施難易度:高 効果:大 即効性:中〜長
国内での人材確保が困難な地域では、外国人介護人材の活用が有効な選択肢となります。特に特定技能「介護」は、訪問介護を含む幅広い業務に従事でき、一人夜勤も可能なため、即戦力として期待できます。
2024年6月末時点で特定技能外国人は36,719人まで増加しており、2025年4月からは訪問介護分野でも受け入れが解禁されました。
受け入れ時の注意点
- 日本語能力の確認と継続的な教育
- 住居・生活サポート体制の整備
- 文化の違いを理解した職場環境づくり
- ビザ取得などの労務手続きのサポート
外国人雇用には助成金や補助金制度も充実しており、教育費用や住居支援の補助を受けられる場合があります。
対策⑤:職場の人間関係改善施策【優先度:★★★】
実施難易度:低 効果:大 即効性:短〜中
離職理由の第1位である人間関係の問題に対処することは、定着率向上に直結します。コストをかけずに今日から実践できる施策も多くあります。
即実践できる改善策
- 相談窓口の設置(外部相談サービスの活用も可)
- 定期的な1on1面談の実施
- 感謝や良い行動を共有する仕組み(感謝カードなど)
- チームビルディング研修の実施
- 朝礼・終礼での気づき共有
調査機関の調査では、相談窓口がある事業所では42.1%が「人間関係に悩みがない」と回答したのに対し、窓口がない事業所では22.9%にとどまりました。相談窓口の設置だけで19.2%の改善効果が見込めます。
対策⑥:ワークライフバランスの確保【優先度:★★☆】
実施難易度:中 効果:中 即効性:中
特に若年層の採用には「プライベートも大切にできる職場」であることが重要です。働き方改革の推進により、長時間労働の是正や有給取得促進が求められています。
実施すべき施策
- 残業時間の可視化と削減目標の設定
- 有給休暇取得率の向上(年間5日以上の取得義務化対応)
- 育児・介護休暇制度の整備と取得推進
- 短時間勤務・フレックスタイム制度の導入
産休・育休後の職場復帰率がほぼ100%という施設では、女性が働きやすい制度を30年以上前から整備しており、長期勤続者が多いという実績があります。
対策⑦:資格取得支援制度の充実【優先度:★☆☆】
実施難易度:低 効果:中 即効性:長
職員のスキルアップを支援することで、業務効率化と職員のモチベーション向上の両方が実現できます。介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士などの資格取得を支援する制度を設けましょう。
支援制度の例
- 受験料・教材費の全額または一部負担
- 資格取得時の報奨金支給
- 勉強時間確保のための勤務調整
- 資格手当の新設・増額
資格取得により専門知識が身につくことで、業務の質が向上し、効率的な働き方が可能になります。また、キャリアアップの道筋が明確になることで、長期的に働きたいと考える職員が増えます。
よくある質問(FAQ)
Q1:介護職員は今後どれくらい不足しますか?
A:2025年に約32万人、2040年には約69万人の介護職員が不足すると予測されています。毎年約5万人ずつの人材確保が必要です。
Q2:人材不足の最大の原因は何ですか?
A:少子高齢化による生産年齢人口の減少が根本原因です。介護を必要とする高齢者は増える一方、働き手となる若年層が減少しています。
Q3:すぐに実践できる対策はありますか?
A:職場の人間関係改善施策は低コストで即実践可能です。相談窓口の設置や1on1面談、感謝カード制度などは今日から始められます。
Q4:外国人介護人材の受け入れは難しいですか?
A:特定技能制度を活用すれば比較的スムーズに受け入れ可能です。2025年4月からは訪問介護でも受け入れが解禁され、活用の幅が広がっています。
Q5:ICT導入の効果はどれくらいですか?
A:厚生労働省の調査では、ICT導入施設の多くがプラスの効果を実感しています。記録業務の時間が50%削減できた事例もあります。
まとめと次のアクション
介護職員の人材不足は、2025年に32万人、2040年には69万人に達する深刻な課題です。しかし、適切な対策を優先順位をつけて実行すれば、自施設の人材確保・定着は可能です。
今日から始める3つのアクション
- 処遇改善加算の取得状況を確認し、未取得なら要件を調べる
- 職員向けアンケートで人間関係の課題を把握する
- 相談窓口を設置し、職員が悩みを相談できる環境を整える
人材不足は一朝一夕には解決しませんが、小さな改善の積み重ねが大きな成果につながります。職員が長く安心して働ける職場づくりこそが、最も確実な人材確保策です。今日から一歩、踏み出してみませんか。

