介護職員不足|厚生労働省データで読み解く2026年・2040年の必要数と5つの対策

福祉経営

厚生労働省が示す介護職員不足の実態

介護職員は何人不足しているのでしょうか。厚生労働省の第9期介護保険事業計画によると、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要です。

2022年度時点の介護職員数は約215万人のため、2026年度までに約25万人(年間6.3万人)、2040年度までに約57万人(年間3.2万人)の増員が必要とされています。この記事では、厚労省が公表した最新データを徹底分析し、国が進める5つの対策と施設が実践すべき具体的アクションを解説します。

厚生労働省が発表した介護職員必要数の詳細データ

第9期介護保険事業計画における推計値

厚生労働省は2024年7月12日、第9期介護保険事業計画に基づく都道府県の推計を集計し、介護職員の必要数を公表しました。

【必要な介護職員数の推移】

  • 2022年度(実績): 約215万人
  • 2026年度(推計): 約240万人(+約25万人)
  • 2040年度(推計): 約272万人(+約57万人)

年間の必要増加数は、2026年度までが6.3万人/年、その後2040年度までは3.2万人/年と、2020年代後半がピークとなります。この数字は各都道府県が介護サービス見込み量を基に算出したもので、地域の高齢化率や介護需要を反映しています。

初めて減少に転じた介護職員数

厚労省の調査では、2023年10月時点の介護職員数は約212.6万人で、前年度比2.9万人の減少となりました。これは2000年度の介護保険制度開始以来、初めての減少です。

人口減少による働き手不足と、他産業との賃金格差が主な要因とされています。採用難が続く中で離職も進み、介護現場の人材確保はさらに厳しさを増しています。

都道府県別の必要数と地域差

介護職員の必要数は都道府県によって大きく異なります。大都市圏の有効求人倍率は7.65倍と全国平均3.97倍の約2倍で、都市部での人材確保が特に困難です。

一方、地方では求人倍率は比較的低いものの、若年人口の流出により絶対的な働き手が不足しています。厚労省は地域医療介護総合確保基金を通じて、各都道府県の実情に応じた支援を実施しています。

厚生労働省が推進する介護人材確保の5つの柱

厚労省は「参入促進」「資質の向上」「労働環境・処遇の改善」を軸に、総合的な介護人材確保対策を展開しています。具体的には5つの柱で施策を進めています。

対策1: 介護職員の処遇改善

2024年6月、処遇改善加算が一本化され「介護職員等処遇改善加算」に統合されました。これにより2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップ(月額6,000円相当)を目指しています。

従来の処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ加算の3つを統合することで、事業所の事務負担を軽減し、上位加算の取得を促進する狙いがあります。厚労省は2019年10月から総額2,000億円を投じ、経験・技能のある職員への重点的な処遇改善を実施してきました。

対策2: 多様な人材の確保・育成

厚労省は「介護に関する入門的研修」を全国で展開し、介護未経験者の参入を促進しています。この研修は21時間(基礎講座6時間+入門講座15時間)で構成され、介護の基本を学べます。

また、介護福祉士を目指す学生への修学資金貸付制度(最大168万円、条件付き返済免除)や、他業種からの転職者向け職業訓練の拡充も行っています。福祉系高校生への返済免除付き修学資金も整備され、若年層の参入を後押ししています。

対策3: 離職防止・定着促進・生産性向上

ICT導入支援事業により、介護記録のデジタル化や勤怠管理システムの導入を支援しています。令和3年度の導入効果報告では、多くの施設がプラスの効果を実感したと回答しました。

また、介護ロボットや福祉用具の導入支援も実施。腰痛予防のための移乗支援機器や、見守りセンサーなどの導入により、職員の身体的負担軽減と業務効率化を図っています。職場環境改善のガイドラインを活用した相談体制の整備や、メンタルヘルス対策も推進されています。

対策4: 介護職の魅力向上

11月11日を「介護の日」、11月4日〜17日を「福祉人材確保重点実施期間」と定め、介護の仕事の魅力を発信しています。全国の福祉人材センターでは学生向け面接会や介護施設見学バスツアーを開催し、若年層への認知度向上を図っています。

小・中・高校生向けのパンフレットも全都道府県で作成し、写真や漫画を活用して視覚的に介護職の魅力を伝えています。SNSや動画配信を通じた情報発信も強化され、トークライブや介護関連映画の紹介など、若者に馴染みのあるコンテンツで啓発活動を展開しています。

対策5: 外国人材の受入れ環境整備

厚労省は特定技能1号、EPA(経済連携協定)、育成就労制度(旧技能実習)、在留資格「介護」の4つのルートで外国人介護人材の受入れを推進しています。

特定技能1号は2025年4月から訪問介護も解禁され、最大5年間の就労が可能です。送出し国での日本の介護制度に関する情報発信を強化し、マッチング支援や受入れ施設への巡回訪問・相談対応も実施。外国人材が安心して働ける環境整備を進めています。

厚労省データから見る地域別の人材確保状況

都市部vs地方の人材不足の違い

厚労省の令和4年版厚生労働白書によると、都市部の有効求人倍率は地方の約2倍です。大都市圏7.65倍、都市部4.09倍に対し、地方は2.5倍前後にとどまります。

都市部では高齢化率の上昇と人口集中により介護需要が急増していますが、地方では若年人口の流出により採用の絶対数が不足しています。厚労省は地域の実情に応じた支援策として、都市部への家賃補助や地方での定住促進策を検討しています。

訪問介護の人手不足が特に深刻

厚労省の調査では、サービス種別で訪問介護の人手不足感が最も強くなっています。訪問介護は移動時間が多く効率が悪い、一人で対応する精神的負担が大きいなどの理由から、職員確保が困難です。

2025年4月からは特定技能外国人も訪問介護に従事可能となり、人材確保の選択肢が広がりました。しかし言語や文化の違いをどう乗り越えるかが今後の課題です。

地域医療介護総合確保基金の活用状況

厚労省は都道府県に地域医療介護総合確保基金を交付し、各地域の実情に応じた人材確保策を支援しています。基金は介護人材の参入促進、資質向上、労働環境改善に活用されます。

2024年度からは「地域における介護人材確保促進のための伴走支援事業」を実施し、自治体向け手引きを作成。PDCAサイクルを活用した効果的な施策立案を支援しています。

施設が今すぐできる厚労省施策の活用法

処遇改善加算の上位取得を目指す

2024年の制度改正で処遇改善加算が一本化され、上位加算の取得がしやすくなりました。まだ新加算Ⅰ〜Ⅱを取得していない施設は、社会保険労務士に相談し、要件を満たす体制を整えましょう。

昇給制度の明確化と研修計画の文書化が主な要件です。加算取得により職員の給与が月額6,000円アップすれば、採用力と定着率の向上が期待できます。

ICT導入支援事業の補助金を活用

厚労省はICT導入支援事業で、1事業所あたり最大260万円(ネットワーク環境整備含む)の補助を行っています。介護記録ソフト、勤怠管理システム、シフト作成アプリなどが対象です。

申請は都道府県を通じて行い、導入により業務効率が30%向上した事例も報告されています。手書き記録をタブレット化するだけで、職員1人あたり年間180時間の削減が可能です。

入門的研修の実施で未経験者を採用

厚労省の「介護に関する入門的研修」を活用し、未経験者の採用と育成を進めましょう。研修は都道府県が実施主体となり、受講料は無料または低額です。

基礎講座(6時間)のみ修了した人材も補助業務として活用でき、人手不足の緩和につながります。入門講座(15時間)まで修了すれば、初任者研修の一部科目免除も受けられます。

よくある質問(FAQ)

Q1: 厚労省の介護職員必要数はどのように算出されていますか?

A: 各都道府県が第9期介護保険事業計画で推計した介護サービス見込み量を基に、必要な職員数を算出し、厚労省が全国集計しています。地域の高齢化率と介護需要を反映した数値です。

Q2: 処遇改善加算の一本化で何が変わりましたか?

A: 2024年6月から3つの加算が「介護職員等処遇改善加算」に統合され、事務負担が軽減されました。加算率も引き上げられ、月額6,000円のベースアップを目指しています。

Q3: 外国人介護人材の受入れに必要な準備は?

A: 特定技能の場合、受入れ支援計画の作成と登録支援機関への委託(または自社で支援)が必要です。住居確保、日本語研修、生活支援の体制整備が求められます。

Q4: ICT導入支援の補助金はどこに申請しますか?

A: 都道府県の介護保険担当課に申請します。地域医療介護総合確保基金を活用した事業のため、自治体によって募集時期や要件が異なります。早めに確認しましょう。

Q5: 2040年までに57万人の増員は実現可能ですか?

A: 厚労省は5つの対策を総合的に実施することで達成を目指していますが、少子化の進行により非常に困難な目標です。生産性向上とICT活用が鍵となります。

まとめ: 厚労省データを活用した人材確保の次のステップ

厚生労働省のデータが示すように、介護職員不足は2026年に25万人、2040年に57万人と深刻化します。国は処遇改善、多様な人材確保、離職防止、魅力向上、外国人材受入れの5つの柱で対策を進めています。

今日から始める3つのアクション:

  • 処遇改善加算の上位取得を検討し、来月までに方針を決定する
  • ICT導入支援の補助金情報を都道府県に確認する(今月中)
  • 入門的研修の活用で未経験者採用ルートを開拓する(3ヶ月以内)

厚労省の施策を最大限活用し、データに基づいた計画的な人材確保を進めることが、持続可能な介護現場への道です。自施設の状況を分析し、今日から行動を起こしましょう。

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