介護職員の不足はなぜ深刻化?2040年に57万人不足する現状と5つの解決策

福祉経営

「介護施設で働きたいけど、人手不足でブラックなのでは?」と不安を感じていませんか。介護職員の不足は、2025年に約32万人、2040年には約57万人に達すると予測されており、日本の超高齢社会における最重要課題となっています。

しかし実態として、すべての施設が過酷な労働環境というわけではありません。国や自治体は処遇改善加算の引き上げ(月額6,000円相当)、ICT導入支援、外国人材の受け入れ体制整備など、具体的な対策を進めています。

この記事では、厚生労働省の最新データをもとに、介護職員不足の現状・原因・施設種別の違い、そして個人でも選べる働きやすい職場の見極め方まで解説します。実際に10年間介護現場で働いた経験から、データだけでは見えない現場のリアルもお伝えします。

介護業界への就職・転職を考えている方、現場の人手不足に悩む施設関係者の方は、ぜひ最後までお読みください。

  1. 介護職員の不足は本当に深刻なのか?最新データで見る現状
    1. 2025年・2040年に必要な介護職員数と不足人数
    2. 都市部ほど深刻な人手不足の実態
    3. 有効求人倍率が示す介護業界の現実
  2. 介護職員が不足する5つの根本原因
    1. 少子高齢化による「支える側」と「支えられる側」の逆転
    2. 仕事の負担に見合わない賃金水準
    3. 「3K(きつい・汚い・危険)」のマイナスイメージ
    4. 離職につながる職場の人間関係問題
    5. デジタル化の遅れによる業務の非効率性
  3. 施設種別で異なる人手不足の深刻度
    1. 最も深刻な「訪問介護」の人材難
    2. 夜勤負担が大きい「特別養護老人ホーム」
    3. 比較的人材が集まりやすい「デイサービス」
  4. 国と自治体が進める5つの解決策
    1. ①処遇改善加算の拡充(月額6,000円相当のベースアップ)
    2. ②ICT・介護ロボット導入による業務効率化
    3. ③外国人介護人材の受け入れ拡大
    4. ④多様な働き方の推進(短時間・兼業OK)
    5. ⑤介護の魅力発信(11月11日「介護の日」など)
  5. 働きやすい介護施設を見極める5つのポイント
    1. ①処遇改善加算の取得状況を確認
    2. ②ICT・介護ロボットの導入実績
    3. ③離職率と平均勤続年数を尋ねる
    4. ④研修・資格取得支援制度の有無
    5. ⑤施設見学で職員の表情をチェック
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1: 介護職は本当に給料が低いの?
    2. Q2: 未経験でも介護職になれる?
    3. Q3: 介護職の離職率は本当に高い?
    4. Q4: 人手不足の施設は激務?
    5. Q5: 介護職に将来性はある?
  7. まとめ:介護職員不足は課題だが、改善の動きも確実に進んでいる

介護職員の不足は本当に深刻なのか?最新データで見る現状

2025年・2040年に必要な介護職員数と不足人数

厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によると、介護職員の不足は今後さらに深刻化します。

年度必要な介護職員数現状推移の職員数不足数
2023年約233万人約212万人約21万人
2025年約243万人約215万人約32万人
2040年約280万人約223万人約57万人

2040年には全体の約21%に相当する57万人が不足し、10名体制が必要な現場に8名しか配置できない計算になります。団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年以降、要介護者は現在の1.5倍に増加する一方、労働人口は減少するため、この数字はさらに厳しくなる可能性があります。

都市部ほど深刻な人手不足の実態

介護職員の不足は地域差が大きく、特に都市部で深刻です。

都道府県別の人材不足状況(2026年予測)

地域必要人数見込み人数不足数
大都市圏21.3万人18.4万人2.8万人
都市部(中規模都市)15.2万人13.1万人2.1万人
都市部(大規模都市)17.8万人15.9万人1.9万人
地方都市3.5万人2.7万人0.8万人

大都市圏では2026年に約2.8万人、2040年には7.3万人の不足が予測されています。地方の約3倍の不足数であり、首都圏での介護人材確保はより緊急性が高い状況です。

有効求人倍率が示す介護業界の現実

2023年の介護関係職種の有効求人倍率は3.97倍(全職種平均1.16倍)。求職者1人に対して約4件の求人がある計算で、介護職は全職種の中で最も人手不足の業種の一つです。

特に都市部は7.65倍と突出しており、他業種から転職を考える人にとっては選び放題の状況ともいえます。しかし逆に、施設側は「求人を出しても応募が来ない」「面接まで進んでも辞退される」という採用難に直面しています。

介護職員が不足する5つの根本原因

少子高齢化による「支える側」と「支えられる側」の逆転

2023年時点で65歳以上の高齢者は3,623万人(総人口の29.1%)、2040年には34.8%(約3人に1人)まで上昇します。一方、15〜64歳の生産年齢人口は2023年の7,395万人から2040年には6,213万人へ約1,182万人減少します。

つまり、介護が必要な高齢者は増え続けるのに、働き手となる若年層は減り続けるという構造的な問題があります。これは介護業界だけでなく日本社会全体の課題ですが、介護は高齢化の影響を最も直接的に受ける業界です。

仕事の負担に見合わない賃金水準

令和6年賃金構造基本統計調査によると、介護職員の平均月収は約27.7万円。全産業平均の約34.6万円と比較して月6.9万円、年間約83万円低い水準です。

身体介護(入浴・排泄介助など)の肉体的負担、夜勤を含む不規則な勤務体系、認知症対応などの精神的ストレスを考えると、「責任の重さに対して給与が低い」と感じる職員が多いのが実態です。

処遇改善加算により10年前(平成27年)の約24.6万円から3.1万円改善されたものの、全産業との差は依然として大きく、若者が介護職を選ばない大きな理由となっています。

「3K(きつい・汚い・危険)」のマイナスイメージ

調査機関の調査では、介護職の悩みとして「身体的負担が大きい(24.6%)」「業務に対する社会的評価が低い(20.2%)」が上位に挙がっています。

実際の介護現場では:

  • 入浴介助で腰を痛める職員が多い
  • 排泄介助に抵抗感を持つ未経験者が多い
  • 夜勤明けの疲労が蓄積する
  • 利用者や家族からのクレーム対応がストレス

こうした「大変そう」というイメージが先行し、「誰でもできる仕事」と誤解されたり、「将来性がない」と敬遠されたりすることが、新規参入者を減らす要因となっています。

離職につながる職場の人間関係問題

令和5年度介護労働実態調査によると、介護関係の仕事を辞めた理由の第1位は「職場の人間関係に問題があったため(34.3%)」です。

具体的には:

  • 上司のパワハラ・きつい指導(49.3%)
  • 上司の管理能力不足・指示不明確(43.2%)
  • 同僚からの悪口・嫌がらせ(38.8%)

介護は チームワークが不可欠な仕事です。小規模施設では職員同士の距離が近く、人間関係のトラブルが表面化しやすい傾向があります。また、感情労働(利用者の気持ちに寄り添う)の側面が強く、ストレスが蓄積しやすい環境です。

デジタル化の遅れによる業務の非効率性

多くの介護現場では、ケア記録を手書きで記入し、申し送りは口頭や紙ベースで行われています。記録作業に1日1〜2時間かかるケースも珍しくなく、利用者と向き合う時間よりも事務作業に追われるという本末転倒な状況が生じています。

ICTを導入した施設では業務効率が向上したとの報告がありますが、導入コストや職員の抵抗感から、まだ全国的には普及していません。この非効率性が職員の負担を増やし、離職の一因となっています。

施設種別で異なる人手不足の深刻度

最も深刻な「訪問介護」の人材難

訪問介護は介護職員の減少が最も顕著です。ヘルパーの高齢化が進み、60歳以上が約半数を占める一方、若手の新規参入はほとんどありません。

訪問介護が敬遠される理由:

  • 1人で利用者宅を訪問するため相談相手がいない
  • 移動時間が多く効率が悪い
  • 収入が不安定(時給制が多い)
  • 身体介護の負担が大きい

2024年には訪問介護事業所の倒産が過去最多を記録し、地域によってはサービス提供自体が困難になるケースも出ています。

夜勤負担が大きい「特別養護老人ホーム」

特養は24時間365日体制のため、夜勤シフトが必須です。夜勤は1人で20〜30名の利用者を見守るため、緊急時の対応負担や生活リズムの乱れから、若手職員が定着しにくい傾向があります。

比較的人材が集まりやすい「デイサービス」

日勤のみ、土日休みの施設も多く、子育て中の職員や介護未経験者でも働きやすいデイサービスは、比較的求人への応募が多い傾向です。ただし、パート・アルバイトが中心で、正社員の確保には苦労している施設もあります。

国と自治体が進める5つの解決策

①処遇改善加算の拡充(月額6,000円相当のベースアップ)

2024年6月に処遇改善加算が一本化され、加算率が引き上げられました。2024年度に2.5%、2025年度に2.0%(月額約6,000円相当)のベースアップを目指しています。

上位の加算を取得すれば、年収ベースで7〜10万円の改善が見込まれます。求職者は、面接時に「処遇改善加算を取得しているか」を確認することで、給与水準の高い施設を選ぶ目安になります。

②ICT・介護ロボット導入による業務効率化

タブレット端末でのケア記録、見守りセンサーによる夜勤負担軽減、AIによるシフト自動作成など、テクノロジー活用が進んでいます。

厚労省の調査では、ICT導入施設の約80%が「業務効率が向上した」と回答しています。記録作業が30分短縮されれば、その分利用者とのコミュニケーション時間に充てられ、仕事の満足度も向上します。

③外国人介護人材の受け入れ拡大

特定技能、技能実習(2024年から育成就労制度へ移行)、EPA、在留資格「介護」の4つのルートで外国人材を受け入れています。

令和6年度調査では、外国人労働者を受け入れている介護事業所は21.2%(前年度17.5%)に増加。言語や文化の違いへの対応は必要ですが、若い労働力として期待されています。

④多様な働き方の推進(短時間・兼業OK)

「週3日だけ」「午前中のみ」「夜勤専従」など、柔軟な働き方を認める施設が増えています。子育て中の主婦層、定年退職後のシニア層、副業希望者など、これまで介護業界に参入しにくかった人材を取り込む狙いです。

⑤介護の魅力発信(11月11日「介護の日」など)

SNS、動画、漫画などを活用し、若者に介護職の魅力を伝える取り組みが強化されています。「利用者の笑顔が見られる」「人生経験が積める」「資格でキャリアアップできる」といったポジティブな側面を前面に出しています。

働きやすい介護施設を見極める5つのポイント

①処遇改善加算の取得状況を確認

面接時に「処遇改善加算を取得していますか?」と質問しましょう。取得していれば給与水準が高く、職場環境改善にも取り組んでいる証拠です。

②ICT・介護ロボットの導入実績

タブレット端末、見守りセンサー、電動リフトなどを導入している施設は、職員の負担軽減に投資している証拠です。見学時に確認しましょう。

③離職率と平均勤続年数を尋ねる

離職率15%以上、平均勤続年数3年未満の施設は要注意です。逆に、10年以上働くベテラン職員が多い施設は、働きやすい環境が整っています。

④研修・資格取得支援制度の有無

初任者研修、実務者研修、介護福祉士の資格取得費用を補助している施設は、職員の成長を応援する姿勢があります。キャリアアップを目指す人には重要なポイントです。

⑤施設見学で職員の表情をチェック

見学時に職員同士の雰囲気、利用者への接し方を観察しましょう。職員が笑顔で働いている、利用者が穏やかに過ごしている施設は、良好な職場環境の可能性が高いです。

よくある質問(FAQ)

Q1: 介護職は本当に給料が低いの?

A: 平均月収27.7万円で全産業より約7万円低いですが、処遇改善加算により年々改善傾向です。夜勤手当や資格手当を含めれば月30万円超も可能です。

Q2: 未経験でも介護職になれる?

A: 可能です。無資格・未経験OKの求人は多く、働きながら初任者研修を取得するケースが一般的です。60代から始める人もいます。

Q3: 介護職の離職率は本当に高い?

A: 介護業界の離職率13.8%は全産業平均14.2%とほぼ同じです。「離職率が高い」は誤解で、施設によって大きく異なります。

Q4: 人手不足の施設は激務?

A: 施設により差があります。ICT導入、適正な人員配置、処遇改善加算取得の施設は働きやすい環境です。面接・見学で確認しましょう。

Q5: 介護職に将来性はある?

A: 2040年まで需要は拡大し続けます。資格を取得すればキャリアアップ・給与アップが可能で、全国どこでも働ける強みがあります。

まとめ:介護職員不足は課題だが、改善の動きも確実に進んでいる

介護職員の不足は、2040年に57万人という深刻な状況ですが、国や自治体、民間事業者による処遇改善、ICT導入、外国人材受け入れなど、多角的な対策が進んでいます。

この記事の3つのポイント:

  • 介護職員は2040年に57万人不足するが、都市部ほど深刻
  • 低賃金・身体的負担・人間関係が不足の主な原因
  • 処遇改善加算・ICT導入施設を選べば働きやすい環境を得られる

介護業界への就職・転職を考えている方は、施設選びが重要です。処遇改善加算の取得状況、ICT導入実績、離職率を確認し、見学で職員の表情をチェックすることで、働きやすい施設を見極められます。

人手不足は事実ですが、それは「需要がある=仕事に困らない」という安定性の裏返しでもあります。介護職は、人の人生に深く関わり、感謝される、社会的意義の大きい仕事です。あなたも介護の世界で、新たなキャリアをスタートしてみませんか?

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