介護職の人材不足が止まらない現状
介護職の人材不足はいつになったら解消されるのでしょうか。答えは「このままでは解消されない」です。
行政機関の推計によると、2040年には約272万人の介護職員が必要ですが、約57万人が不足する見込みです。これは現場の約21%にあたり、10人体制の施設で常に2人欠員という深刻な状況を意味します。
さらに最新の調査では、介護職員の離職率は13.6%。採用難と離職が同時進行し、人材確保の難しさが増しています。この記事では、介護現場が直面する人材不足の本質的な原因を最新データから分析し、事業所がすぐに実践できる解決策を5つのステップで解説します。
数字で見る介護人材不足の実態
2025年問題から2040年危機へ
介護業界では2025年問題が話題になりましたが、真の危機は2040年です。行政機関の試算では、2025年度に約243万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされています。
現在の介護職員数は約215万人のため、今後15年間で毎年約3万8千人ずつ増やし続けなければなりません。しかし少子化で若年労働人口は減少しており、他産業との人材獲得競争は激化する一方です。
都市部で極端に高い有効求人倍率
全国平均の有効求人倍率が1.16倍に対し、介護職は3.97倍と約3.4倍の開きがあります。特に都市部では深刻で、大都市では7.65倍、その周辺自治体では3.45倍~4.09倍と、1人の求職者を複数の事業所が奪い合う状態です。
都市部では今後も高齢化率が上昇し続けるため、この傾向はさらに強まると予測されています。地方では求人倍率が2.5倍前後と比較的低いものの、若年人口の流出により絶対的な働き手が不足しています。
6割以上の事業所が人材不足を実感
業界調査機関の調査では、86.6%の事業所が「採用が困難」と回答し、その理由として「他産業に比べて労働条件が良くない」が53.7%、「同業他社との人材獲得競争が激しい」が53.1%を占めています。
採用難に加え、離職率も13.6%と決して低くありません。1年間で100人の職員がいる事業所では約14人が退職する計算になり、常に採用活動を続けなければ人員を維持できない状況です。
介護職の人材不足を引き起こす5つの根本原因
原因1:全産業平均より月6万円低い賃金水準
行政統計調査によると、医療・福祉産業の平均賃金は月30.64万円で、全産業平均を下回っています。特に介護職は身体介護や夜勤など負担の大きい業務を担うにもかかわらず、仕事の対価として十分な評価を得られていません。
処遇改善加算などの施策により徐々に改善されていますが、他産業との格差は依然として大きく、若年層が介護職を選ばない要因となっています。
原因2:離職理由の第1位は「人間関係」
業界調査機関の調査で、退職理由のトップは「職場の人間関係に問題」で23.2%を占めました。これは「収入が少ない」よりも高い数値です。
介護現場では、仕事ができる人とそうでない人の業務負担に差が生じやすく、評価制度が整っていないと不公平感が募ります。特に小規模事業所では職員同士の距離が近く、一度こじれた人間関係の修復が難しい傾向があります。
原因3:身体的・精神的負担の大きさ
介護業務の24.6%の職員が「身体的負担が大きい」と回答しています。入浴介助や移乗介助など腰に負担のかかる作業が多く、加齢とともに続けることが困難になるケースも少なくありません。
また夜勤シフトでは生活リズムが不規則になり、慢性的な疲労を抱える職員もいます。こうした負担が蓄積すると、若いうちは頑張れても長期的なキャリアとして選びにくくなります。
原因4:社会的評価の低さとネガティブイメージ
20.2%の介護職員が「業務に対する社会的評価が低い」と感じています。「きつい・汚い・危険」という3Kイメージが根強く、専門性や社会的意義が正しく理解されていません。
実際には高度なコミュニケーション能力や観察力、判断力が求められる仕事ですが、「誰でもできる仕事」と誤解されることも多く、職業としての魅力が伝わりにくい状況です。
原因5:評価制度の未整備による不公平感
多くの介護施設では、明確な評価基準がなく、昇給や昇格が年功序列になりがちです。頑張って働く若手職員が正当に評価されないと、モチベーションが低下し早期離職につながります。
また管理職も現場業務に追われ、組織マネジメントや職員育成に時間を割けないことが、人材定着を阻む要因となっています。
人材不足を解消する5つの実践的ステップ
ステップ1:職場環境の「見える化」から始める
まず取り組むべきは、組織の問題点を正確に把握することです。調査ツールやアセスメントツールを活用し、職員満足度や人間関係の状態を可視化しましょう。
具体的には、3ヶ月に1回程度の匿名アンケートで「業務負担」「人間関係」「評価への満足度」などを数値化します。データで課題を特定できれば、感覚ではなく根拠に基づいた改善策を立てられます。
多くの調査ツールは月額数千円から利用でき、導入のハードルは高くありません。問題を放置せず、まず現状を知ることが解決の第一歩です。
ステップ2:相談窓口の設置で離職を防ぐ
調査によると、相談窓口がある事業所では42.1%の職員が「人間関係の悩みがない」と回答したのに対し、窓口がない事業所では22.9%にとどまりました。
相談窓口は外部の第三者機関に委託することで、より率直な意見を集められます。月1回の定期面談と合わせて、問題の早期発見・早期対応を実現しましょう。
小さな不満も蓄積すると離職につながります。「言える環境」を整えることが、人材定着の鍵です。
ステップ3:処遇改善加算を最大限活用する
2024年6月の制度改正で処遇改善加算が一本化され、上位加算の取得がしやすくなりました。月額6,000円相当のベースアップを目指し、まだ上位加算を取得していない事業所は早急に検討すべきです。
加算を取得するには、昇給制度の明確化や研修機会の確保が必要ですが、これらは人材定着にも直結します。給与アップと職場環境改善の両方を実現できる制度を、使わない手はありません。
社会保険労務士や介護経営コンサルタントに相談し、自事業所で取得可能な加算を確認しましょう。
ステップ4:ICT導入で業務負担を30%削減
介護記録のタブレット化、勤怠管理システム、シフト作成アプリなどのICTツールは、導入事業所の多くがプラスの効果を実感しています。
たとえば手書き記録をタブレット入力に変えるだけで、記録時間が1日30分短縮されたという事例もあります。年間では約180時間、職員1人あたり22日分の労働時間に相当します。
初期投資は必要ですが、国や自治体の補助金を活用できるケースも多く、長期的には人件費削減と職員満足度向上の両立が可能です。
ステップ5:「待ち」の採用から「攻め」の採用へ
ハローワークに求人を出すだけでは、人材は集まりません。自事業所のウェブサイトを充実させ、働く職員の声や職場の雰囲気を写真・動画で発信しましょう。
また人材紹介会社を利用する際は、定期的なWeb面談で自事業所の魅力を伝え、求人の優先順位を上げてもらう工夫が必要です。紹介会社は数千件の求人を扱っているため、「待ち」の姿勢では埋もれてしまいます。
SNSでの情報発信も効果的です。費用をかけずに若年層にリーチでき、「介護はかっこいい仕事」というイメージづくりに貢献します。
よくある質問(FAQ)
Q1: 外国人材の受け入れは人材不足解消に有効ですか?
A: はい、有効な選択肢の一つです。特定技能制度では最大5年間就労でき、訪問介護も可能になりました。ただし受け入れ体制の整備や言語サポートが必要で、計画的な導入が重要です。
Q2: 小規模事業所でもICT導入は可能ですか?
A: 可能です。小規模事業所向けの低価格プランや、タブレット1台から始められるシステムもあります。自治体の補助金を活用すれば、初期費用を大幅に抑えられるケースも多いです。
Q3: 人間関係の改善に即効性のある方法はありますか?
A: 月1回の1on1面談と、外部相談窓口の設置が効果的です。管理者が職員の声を定期的に聞く姿勢を示すことで、不満の蓄積を防げます。
Q4: 処遇改善加算の取得は難しいですか?
A: 2024年の制度改正で取得しやすくなりました。昇給制度の文書化と研修実施が主な要件で、専門家のサポートを受ければ数ヶ月で取得可能です。
Q5: 離職率を下げる最も効果的な方法は何ですか?
A: 職員の声を聞き、小さな改善を積み重ねることです。給与だけでなく、働きやすさや人間関係の改善が離職防止には重要で、データに基づいた課題解決が効果的です。
まとめ:今日から始める人材確保アクション
介護職の人材不足は、賃金・人間関係・身体的負担など複合的な要因で深刻化しています。しかし適切な対策を講じれば、人材確保と定着は十分可能です。
すぐに実践できる3つのアクション:
- 職員満足度調査で課題を可視化する(今月中に実施)
- 処遇改善加算の上位取得を検討する(来月までに方針決定)
- 相談窓口を設置し、離職の予兆を早期発見する(3ヶ月以内に導入)
介護人材の確保は、待っていても解決しません。小さな一歩から始め、働きやすい職場づくりを進めることが、持続可能な介護現場への道です。今日から行動を起こしましょう。

