介護士減少、統計以来初|212.6万人で要介護720万人への対応が不可能に

福祉経営

介護職員数が統計開始以来初めて減少しました。2022年度の215.4万人から2023年度は212.6万人へと2.8万人減少し、2024年度も212.6万人のまま横ばいが続いています。

同時期、要介護認定者数は720万人へと過去最高を更新しており、「職員は減る、利用者は増える」という逆説的危機が顕在化しています。

本記事では、この初の減少が何を意味するのか、なぜ起きたのか、そして2026年度の必要数240万人に向けて何が起こるかを詳しく解説します。


統計開始以来「初の減少」という前代未聞の警告

2023年度:介護職員2.8万人の減少が報告

厚生労働省が2024年12月25日に公表した「介護サービス施設・事業所調査」(令和5年分)から、衝撃的な事実が明らかになりました。全国の介護職員数が2022年度の215.4万人から、2023年度には212.6万人へと減少したのです。これは統計制度創設以来、初めてのことです。

減少数は2.8万人という決して小さくない数字です。つまり、「毎年増加し続けた」という介護業界の常識が覆されたのです。

2024年度も改善されず:212.6万人のまま横ばい

さらに深刻なのは、2024年度も改善されていないことです。最新統計(2024年10月1日時点)でも212.6万人のままで、前年度と変わらない数値が報告されています。つまり、「一時的な減少」ではなく「構造的な減少状態の継続」を意味します。

要介護認定者は同時に過去最高:720万人

対照的に、2023年度の要介護認定者数は705万人から、2024年度には720万人へと15万人増加し、過去最高を更新しました。つまり、「職員は減り、利用者は増える」という逆転現象が起きているのです。

この矛盾は、2026年度に必要とされる240万人の確保と、2040年度の272万人確保が「物理的に不可能に近い」ことを示唆しています。


なぜ介護職員数が減少したのか:採用困難と離職の同時進行

原因1:生産年齢人口の急速な減少

日本の総人口は減少局面に入り、特に働き手となる20~64歳の生産年齢人口は毎年減少しています。2070年には、総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39%に達すると推計されています。

介護業界も例外ではなく、採用できる人材層そのものが減少しているのです。採用活動を強化しても「採用すべき人材がいない」という構造的問題に直面しています。

原因2:他産業との賃金競争の激化

処遇改善加算による給与上昇が進みましたが、同時に他産業も賃金引き上げを実施しており、相対的な競争優位が失われています。特に2024年度の介護報酬改定で処遇改善加算が一本化されたため、全事業所がほぼ同じ待遇となり、採用競争での差別化が困難になりました。

介護職員の平均給与は全産業平均より依然として低く、給与だけで採用を勝ち取ることはできない状況です。

原因3:採用困難性の極限化

有効求人倍率が依然として3~4倍超で推移する中で、求職者は「選び放題」の立場です。採用候補者は「少しでも良い条件の事業所」を選びますが、ほぼすべての事業所の待遇が同じであれば、「採用される側の自由度」が生まれ、採用に落ちた事業所は永遠に採用できない構造が完成しました。

結果として「採用できる事業所と採用できない事業所の二極化」が生じ、全体としては職員数が減少するという現象が起きているのです。

原因4:離職の継続と新規採用の停止

採用困難性が極限に達した事業所では「採用基準を上げて質を確保する」という選択をした可能性があります。つまり、「採用数を減らす代わりに、配置した人材の質を維持する」という戦略です。これが職員数の減少につながっているのです。

同時に、人手不足による職場環境悪化が離職を加速させ、採用減+離職増の同時進行により、結果として職員数減少が起きているのです。


職員減少が意味する2026年度への危機

要介護720万人に対して212.6万人:1人当たり負担の極限化

現在、介護職員212.6万人が要介護認定者720万人に対応しています。これは1職員当たり約3.4人の要介護者を支えている計算です。

2026年度に必要な240万人に対して、現在212.6万人のままでは、必要と現状のギャップは27.4万人に拡大しており、年間6.3万人の採用が必須という計算は完全に破綻しています。

2026年度までに「年間6.3万人採用」は不可能

厚生労働省は2026年度までに年間6.3万人ペースの採用が必要と試算していますが、統計開始以来初の減少が起きている現状でそれが可能とは考えられません。

むしろ、現在の減少傾向が続けば、2026年度の職員数は「200万人を割る可能性」さえ出ています。

利用者サービスの質的低下が不可逆的に進む

職員数が減少する一方で、利用者数が増加するという逆転現象は、職員一人当たりの負担の無限増加を意味します。結果として、食事介助・排泄介助・入浴介助といった基本的なサービスの質的低下、安全リスクの増加、職員の過重労働による離職加速が起きます。

この悪循環は「自己増幅的」であり、一度始まると止まりません。


よくある質問(FAQ)

Q1:職員数が減少しても、報酬改定で賃金が上がるなら対応できるのでは?

A:賃金改善は定着促進には役立ちますが、採用困難性を解決しません。職員が減少している原因の大部分は「採用できない」ことであり、「待遇を上げても、そもそも応募者がいない」という状況では無効です。

Q2:職員減少が今後も続くのか?

A:続く可能性が高いです。生産年齢人口の減少が構造的であり、短期的な政策では対応できない課題だからです。2026年まで3年弱のうちに、採用を大幅に回復させることは統計的に困難です。

Q3:事業所経営への直接的な影響は何か?

A:訪問介護の場合、対応できないサービス時間帯が増え、売上が減少します。施設の場合、空床が増えるか、既存職員の過重労働により離職が加速します。いずれも経営危機につながります。

Q4:2026年度の「必要な240万人」は達成できるのか?

A:現状では極めて困難です。統計開始以来初の減少が起きており、採用困難性も解決していないため、逆方向の圧力が強いです。政府も2026年度の期中介護報酬改定で強力な処遇改善を検討していますが、抜本解決には至らないと見られています。

Q5:事業所は今から何をすべきか?

A:「採用」と「定着」の両立ではなく、「定着」を最優先にすることが現実的です。既存職員の離職防止により、職員数を維持するというディフェンス重視の戦略が必要です。同時に、業務効率化(ICT導入など)で相対的な人員不足を補うことが急務です。


まとめ

介護職員数の統計開始以来初の減少は、介護業界が「新段階」に突入したことを示しています。2023年度2.8万人の減少、2024年度の横ばい状態は「一時的な現象」ではなく、生産年齢人口減少と採用困難性の構造化を反映した「新しい現実」です。

同時に要介護認定者は720万人と過去最高を更新しており、「職員減る、利用者増える」という逆転現象が定着しつつあります。

2026年度に必要な240万人確保は、現在の減少トレンドでは不可能に近く、事業所単位での「採用に頼らない対策」—定着促進と業務効率化—がいよいよ生存戦略になりました。

2026年までの限定された時間の中で、事業所は現実を受け入れ、長期的な経営体質改善に着手することが最後の機会です。

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