介護ICT導入支援事業とは?補助金で業務負担を75%軽減できる制度
職員の業務負担を軽減し生産性を向上させるため、介護テクノロジーの導入経費を補助する制度が介護ICT導入支援事業です。記録業務や情報共有、請求作業をデジタル化することで、職員1人あたり月平均1〜3時間の業務時間削減を実現できます。
本記事では、申請経験のある施設管理者の視点から、補助金申請から機器選定、定着までの実践手順を具体的に解説します。制度の最新要件や都道府県ごとの違いも網羅しているため、初めて申請する方でも安心して取り組めます。
令和7年度から介護ロボット導入支援事業とICT導入支援事業が統合され「介護テクノロジー導入支援事業」として一本化されました。これにより、より幅広い機器が補助対象となり、活用しやすくなっています。
介護ICT導入支援事業の基礎知識|対象機器と補助額
補助対象となる機器・ソフトウェア
介護ソフト、タブレット端末、スマートフォン、インカム、クラウドサービス、Wi-Fi機器、バックオフィスソフトなど、業務で使用する幅広いICT機器が対象です。
付帯経費として、Wi-Fi環境整備の配線工事、モデム・ルーター、システム管理サーバー、導入時の工事費、保守経費、セキュリティ対策費用も補助対象に含まれます。ただし、通信費(月額料金)は対象外となるため注意が必要です。
介護ソフトを導入する場合、記録から請求まで一気通貫で処理できること、ケアプランデータ連携標準仕様に対応していることが条件となります。
補助額と補助率の仕組み
補助率は通常1/2ですが、文書量を半減できる計画を提出した場合は3/4に拡充されます。補助上限額は職員数に応じて設定され、小規模事業所でも十分活用できる制度設計です。
たとえば職員10人規模の施設で介護ソフトとタブレット5台を導入する場合、総額80万円の3/4である60万円が補助されるケースもあります。自己負担は20万円程度に抑えられるため、導入のハードルが大幅に下がります。
ただし、予算の範囲内での交付となるため、申請総額が予算額を超過した場合は抽選や優先順位による選定が行われます。
介護ICT導入で得られる5つのメリット
メリット1:記録業務の時間を60%削減
9割以上の施設で間接業務の時間が減少し、職員1人当たり月平均1時間以上、多い施設では3時間以上の削減を実現しています。手書き記録からタブレット入力への切り替えで、その場で音声入力や自動転送が可能になり、転記作業が不要になるためです。
記録時間が短縮されれば、利用者と直接関わるケア業務に充てる時間が増え、サービスの質も向上します。実際に、導入2年経過した施設の7割が支援の質が上がったと回答しています。
メリット2:情報共有がリアルタイム化
紙ベースでは申し送りや会議に時間がかかっていた情報共有が、システム上で即座に共有できるようになります。緊急時の対応速度が向上し、夜勤帯でも複数拠点の状況を把握できます。
インカムを導入した施設では、フロア間の連絡が瞬時に行えるようになり、職員の移動時間が1日あたり30分以上削減された事例もあります。
メリット3:ヒューマンエラーの防止
誤薬防止システムを導入すると、投薬予定を利用者と紐づけたり服薬忘れを防止できるため、投薬ミスが大幅に減少します。従来は目視確認に頼っていた作業がシステム化されることで、安全性が向上します。
バイタルデータも自動転送されるため、測定値の記入ミスや転記ミスがなくなり、正確な記録が残せるようになります。
メリット4:職員の心理的負担の軽減
記録作業が音声入力で済めば焦りから解放され、転記ミスを気にする必要もなくなるため、職員のメンタルケアにも効果があります。残業時間の削減にもつながり、働きやすい職場環境が実現します。
業務負担が減ることで離職率が低下し、人材確保にも好影響を及ぼします。
メリット5:他機関との連携が円滑化
医療機関や他の介護施設との情報連携が容易になり、印刷やFAX送信の手間が省けるようになります。利用者が入院する際も、メールでデータ添付すれば迅速に情報提供できます。
システムを共有していれば、リアルタイムでケア記録を確認し合えるため、サービスの継続性が高まります。
ICT導入支援事業の申請から導入までの実践手順
ステップ1:業務分析と導入計画の策定(1〜2ヶ月)
まず現場スタッフにヒアリングを行い、どの業務に最も時間がかかっているか、どこに課題があるかを洗い出します。記録業務、申し送り、シフト作成など、具体的な改善目標を設定しましょう。
導入計画の策定時に文書量を半減できる計画を作成すると、補助率が3/4に拡充されるため、この段階で綿密な計画を立てることが重要です。厚生労働省が提供する「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を参考にすると効果的です。
またセキュリティ対策として、SECURITY ACTIONの一つ星または二つ星の宣言が必須となります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のサイトから無料で宣言できるため、早めに手続きを済ませておきましょう。
ステップ2:補助金申請と機器選定(1〜2ヶ月)
都道府県のホームページで募集要項を確認し、申請書類を準備します。多くの自治体は6月から8月頃に募集を行うため、前年度から情報収集を始めることをおすすめします。
申請書類には導入計画書、見積書、SECURITY ACTIONの宣言証明が必要です。介護ソフトを申請する場合は、ケアプランデータ連携標準仕様への対応確認も求められます。
機器選定では、記録から請求まで一気通貫で処理できるシステムを選ぶことが重要です。複数のベンダーに相談し、デモ版で操作性を確認してから決定しましょう。現場スタッフの意見を取り入れることで、導入後の定着率が高まります。
ステップ3:導入と定着支援(3〜6ヶ月)
補助金は導入後の後払いで交付されるため、まず自己資金で機器を購入する必要があります。納品後は速やかに実績報告書を提出し、額の確定を待ちます。
導入初期は職員研修に十分な時間を確保しましょう。ICT化に対する意識統一やスキルが不十分だと、慣れるまで想定より時間がかかるという失敗事例が報告されています。
パソコンが苦手な職員には個別指導を行い、使いやすいマニュアルを作成することで、全員が活用できる環境を整えます。導入後2年間は都道府県への効果報告が義務付けられているため、利用状況を定期的に確認し、改善を続けることが成功の鍵です。
ICT導入時の3つの注意点と対策
注意点1:初期費用の準備と予算超過のリスク
初期費用が大幅にかかることを視野に入れる必要があります。タブレット、ネットワーク環境整備、ソフトウェアライセンスなどを合わせると、小規模施設でも数十万円の投資が必要です。
対策として、補助金の採択前に金融機関に相談し、つなぎ融資や分割払いの交渉をしておくと安心です。また、申請総額が予算を超えた場合は抽選になる可能性があるため、複数の資金調達手段を準備しておきましょう。
注意点2:職員教育の時間確保
どれだけ良いシステムを導入しても職員が使いこなせなければ意味がなく、かえって業務効率が落ちる可能性があります。
対策として、導入前に操作研修を複数回実施し、わからないことをすぐに質問できるサポート体制を整えます。若手職員をICTリーダーに任命し、日常的に他の職員をサポートする仕組みも効果的です。
段階的な導入も有効で、まず一部の記録業務から始め、慣れてから機能を拡大していく方法なら、職員の負担を抑えられます。
注意点3:情報セキュリティ対策の徹底
操作ミスや脆弱なセキュリティによってデータが流出する恐れがあるため、しっかりした対策が必要です。
対策として、タブレットに業務以外のアプリインストールを制限し、紛失時のリモートロック機能を設定します。パスワード管理ルールを明確にし、定期的な変更を徹底することも重要です。
クラウドサービスを利用する場合は、データの暗号化や多要素認証に対応したものを選び、バックアップ体制も確認しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1:小規模事業所でも申請できますか?
はい、職員数に関わらず全ての介護サービス事業所が対象です。訪問介護や居宅介護支援事業所も申請できます。職員数が少ない事業所には、それに応じた補助上限額が設定されているため、小規模でも活用しやすい制度です。
Q2:既にICTを一部導入していますが、追加導入でも申請できますか?
既存システムの更新や、新たな機器の追加導入も補助対象となります。ただし、都道府県によっては過去に補助を受けた事業所の再申請に制限を設けている場合があるため、事前に要項を確認してください。機能拡張や他システムとの連携強化なども対象になります。
Q3:補助金が不採択になった場合、費用は自己負担ですか?
はい、不採択の場合は全額自己負担となります。このリスクを避けるため、申請前に都道府県の担当部署に相談し、要件を満たしているか確認することをおすすめします。初めて申請する事業所は優先的に採択される傾向があるため、過去の実施状況も確認しましょう。
Q4:導入後にシステムが使いこなせない場合、補助金を返還する必要がありますか?
補助金の返還義務はありませんが、2年間の効果報告が求められます。報告内容が著しく不十分な場合、次回申請に影響する可能性があるため、ベンダーのサポート体制が充実したシステムを選ぶことが重要です。導入後の研修やヘルプデスクの有無も選定基準に含めましょう。
Q5:介護ロボットとICT機器を同時に申請できますか?
令和7年度から両事業が統合されたため、介護ロボットとICT機器を同一の申請で導入できるようになりました。見守りセンサーと記録システムを組み合わせるなど、相乗効果を狙った導入計画が可能です。総合的な生産性向上の観点から計画を立てると、より効果的な業務改善が実現します。
まとめ:補助金活用で介護現場の働き方改革を実現しよう
介護ICT導入支援事業は、業務負担の軽減と職場環境の改善を同時に実現できる貴重な制度です。記録業務の時間削減、情報共有の円滑化、ヒューマンエラーの防止という3つの効果により、職員も利用者も質の高いサービスを享受できます。
申請から導入までは3〜6ヶ月かかりますが、業務分析から始めて計画的に進めれば、初めての施設でも十分対応できます。都道府県の募集時期を逃さないよう、早めの情報収集と準備を心がけましょう。
まずは自施設の課題を明確にし、どの業務をICT化すれば最も効果が高いかを検討することから始めてください。職員全員を巻き込んだ取り組みが、導入成功の鍵となります。

