「介護」と「障がい」の壁を越える――江戸川区に誕生した共生型ケア施設の挑戦

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在宅医療を専門とする医療法人社団しろひげファミリー(東京都江戸川区)が、2026年3月1日、区内初となる「共生型」看護小規模多機能型居宅介護施設「おうちがいいけど…しろひげステイ」を開所した。

高齢者だけでなく、障がいのある方や難病患者、就労困難な状態にある方まで、多様な利用者を一つの施設で受け入れる全国的にも珍しい取り組みとして注目を集めている。

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「自宅で最期を」――願いと現実の大きなギャップ

人生の終末期をどこで過ごしたいか。厚生労働省が2018年に実施した意識調査では、約7割の人が「自宅」と答えたという。しかし実態は大きく異なり、2023年の統計では在宅での死亡は全体のわずか17%にとどまっている。

「家族に迷惑をかけたくない」という思いが、在宅療養を断念させる大きな要因となっているのが現状だ。

こうした課題への対応策として期待されているのが、「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」と呼ばれるサービスだ。通い・泊まり・訪問看護・訪問介護を一体的に提供できるこの仕組みは、在宅で療養する患者とその家族を幅広く支援できる。

にもかかわらず、全国でも1,074施設(2025年7月時点)、東京都内では72施設、江戸川区内に至っては新施設を除くと2施設しか存在しない。社会の需要に対して、サービス供給が追いついていない現状がある。

「共生型」という新発想――高齢者と障がい者が同じ場所で

今回オープンした「おうちがいいけど…しろひげステイ」が他施設と一線を画すのは、「共生型サービス」の形態をとっている点だ。共生型サービスとは、高齢者と障がいのある人が同一の事業所でともにサービスを受けられる制度で、2018年に国が創設した。

障がいのある人が65歳になっても、慣れ親しんだ施設を継続して利用できるほか、「介護保険」と「障害福祉」という縦割りの制度の壁を越えた支援が実現しやすくなる。

しろひげ在宅診療所を運営する山中光茂理事長は、在宅診療の現場を通じて、重症高齢者だけでなく、身体・精神に障がいを抱える方や難病患者、引きこもり状態で就労が困難な方々と多く関わってきた。

そうした多様な人々を分け隔てなく受け入れられる場所をつくりたいという思いが、この施設の出発点にある。

さらに、同施設では隣接する障がい者就労支援施設「ひげぞ~のおいもとコーヒーファクトリー」と連携し、生活支援から就労支援まで一連のプロセスを切れ目なくつなぐ仕組みを構築している。

看護小規模多機能型居宅介護と障がい者就労施設をこのような形で連動させる取り組みは、全国でもほとんど例がない。

在宅医療のノウハウを施設ケアへ

しろひげ在宅診療所は、年間約1,700名の患者を診る国内最大級規模の在宅診療所だ。点滴管理や人工呼吸器管理、ストーマケアなど高度な医療処置から、数百件規模の看取りで積み重ねてきた経験まで、在宅医療の豊富な実績を新施設に直接活かす。

また、病院から退院した患者が自宅に安心して戻れるよう、急性期・回復期・慢性期いずれの段階からでも受け入れ可能な体制を整えており、病状の変化に応じてサービスの内容や頻度をその日のうちに柔軟に調整できる点も特徴のひとつだ。

常勤スタッフが24時間365日対応する体制を維持し、患者と家族が抱える不安を継続的に支える。

2026年5月には、同施設内での生活介護および短期入所サービスの開始も予定されており、提供できる支援の幅はさらに広がる。

制度の枠を超え、「途切れない支援」を目指して

山中理事長は、「専門職の連携による人生の各プロセスにおける『途切れない支援』がどのような方々にも届く施設」を目指すと語っている。

介護か障がい福祉か、高齢者か現役世代か――そうした区別によって必要な支援が届かないことがないよう、多様な主体を包括的に受け止める場所をつくることがこの施設の核心にある。

人口の高齢化と福祉ニーズの複雑化が進む中で、「共生型」サービスの普及は日本の社会保障の大きな課題のひとつだ。江戸川区という地域から生まれたこの試みが、全国的なモデルケースとなっていくか、今後の展開が注目される。

【施設概要】
施設名:おうちがいいけど…しろひげステイ
所在地:東京都江戸川区江戸川6-32-7
開所日:2026年3月1日
問合せ:03-6808-0529(受付時間 10:00〜16:00)
運営法人:医療法人社団しろひげファミリー

参照元:
PR TIMES「江戸川区初の『共生型』看護小規模多機能型居宅介護『おうちがいいけど…しろひげステイ』オープン」(医療法人社団しろひげファミリー、2026年2月20日配信) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000121368.html

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