毎月の給付管理や記録業務に追われ、利用者様と向き合う時間が取れないと悩んでいませんか。
ケアマネのICT化とは、介護ソフトやタブレット端末などの情報通信技術を活用し、ケアプラン作成・記録業務・多職種連携を電子化することです。
本記事では、ICT化によって月平均5.9時間の給付管理業務を削減し、担当件数を40件から45件に増やせる具体的な方法を解説します。実際の導入事例では、残業時間が5分の1に減少した事業所も報告されています。
筆者は居宅介護支援事業所での実務経験をもとに、導入時のつまずきポイントと対処法まで網羅的にお伝えします。
ICT化は今後の介護報酬改定でも必須となる流れです。この記事を読めば、明日から始められる第一歩が見つかります。
ケアマネのICT化とは?基礎知識を30秒で理解
ケアマネのICT化とは、Information Communication Technology(情報通信技術)を活用して、ケアマネジメント業務をデジタル化・効率化することを指します。具体的には、紙とペンで行っていた業務を、パソコンやタブレットなどの電子機器で処理する仕組みです。
従来は電話・FAX・郵送でやり取りしていた情報を、クラウドシステムやチャットツールで即座に共有できるようになります。厚生労働省も2040年には69万人の介護職員が不足すると予測しており、ICT化による業務効率化は喫緊の課題となっています。
現場では介護ソフト・タブレット端末・オンライン会議システム・チャットツールなどが活用されています。これらを組み合わせることで、アセスメントからモニタリングまでの一連の流れをスムーズに処理できる環境が整います。
ICT化の最大の特徴は「記録と共有の同時進行」です。訪問先でタブレットに入力した情報が、事務所に戻らずとも関係者全員と共有される仕組みは、従来の働き方を根本から変える力を持っています。
ケアマネICT化で得られる5つのメリット
メリット1:月5.9時間の業務削減で残業が激減
給付管理業務だけで月平均5.9時間削減できるというデータがあります。ケアプランのデータ連携システムを使えば、サービス提供票の印刷・FAX送信・郵送作業がワンクリックで完了するためです。
ある事業所では、従来夜間にFAX送信していた作業から解放され、月末月初の残業時間が5分の1に減少しました。削減できた時間を利用者訪問や突発的な対応に充てられるようになり、ケアの質も向上しています。
記録業務の効率化により、事務所に戻ってからの入力作業が不要になる点も大きなメリットです。訪問先でタブレット入力すれば、支援経過記録が自動的に蓄積されます。
メリット2:多職種連携がリアルタイムで実現
チャットツールによるグループ連携で、電話が繋がらないストレスが解消されます。一つのメッセージで関係者全員に情報共有でき、事業所同士の直接連携も可能になります。
働いているご家族との連絡も、チャットなら時間を気にせず送信できます。相手の都合の良い時に確認してもらえるため、コミュニケーションの質が向上します。
サービス担当者会議もオンライン開催が可能になり、日程調整の負担が大幅に軽減されます。参加者全員が一堂に会する必要がなくなり、短時間での情報共有が実現します。
メリット3:ペーパーレス化でコストとスペース削減
紙媒体の書類作成にかかっていたトナー代・用紙代・郵送費が削減できます。特に1人ケアマネのような小規模事業所では、保管スペースの確保も課題でした。
電子化すれば保管場所は不要になり、経年劣化の心配もありません。過去のケアプランや記録を検索する際も、キーワード検索で瞬時に見つかります。
書類の紛失リスクも低減できます。クラウド上に保存されたデータは、適切なセキュリティ対策を施せば、紙よりも安全に管理できる場合が多いです。
メリット4:担当件数増加で事業所の経営安定化
令和6年度介護報酬改定で、ICT活用または事務職員配置により、担当件数の上限が40件から45件に引き上げられました。これにより事業所の収益性が向上します。
逓減制の緩和によって、1人のケアマネが効率的に多くの利用者を担当できるようになります。ただし、ケアの質を維持することが前提条件です。
経営の安定化は、ケアマネ自身の雇用の安定にも繋がります。事業所として持続可能な運営ができれば、働きやすい環境づくりへの投資も可能になります。
メリット5:利用者に向き合う時間が大幅に増加
煩雑な事務作業から解放されることで、本来注力すべきケアマネジメント業務に時間を割けます。利用者の自立支援や重度化防止に向けた質の高いプラン作成が可能になります。
ある実践者は「利用者との面談時間が1.5倍に増えた」と報告しています。丁寧なアセスメントができることで、真のニーズを引き出しやすくなります。
突発的な事態への対応余裕も生まれます。緊急時に迅速に動ける体制は、利用者とその家族の安心感に直結します。
ケアマネICT化の実践5ステップ
ステップ1:現状の業務課題を洗い出す(所要時間:1〜2週間)
まず「どの業務に時間がかかっているか」を具体的に特定します。記録作業・日程調整・書類作成・情報共有など、業務を細分化してリストアップしてください。
例えば「サービス担当者会議の日程調整に半日かかる」「各事業所からの書類がFAX・郵送とバラバラで確認に時間がかかる」といった具体的な課題を書き出します。
課題の洗い出しには、日常業務の時間を1週間記録する方法が効果的です。何にどれだけ時間を使っているか、データで把握することが改善の第一歩になります。
つまずきポイントは「課題が漠然としすぎること」です。「忙しい」ではなく「給付管理に毎月8時間かかる」のように数値化することで、解決策が見えてきます。
ステップ2:解決できるツールを比較検討する(所要時間:2〜3週間)
洗い出した課題に対して、どのICTツールが解決できるか情報収集します。介護ソフト・チャットツール・オンライン会議システムなど、複数のツールを比較検討してください。
介護ソフトを選ぶ際は、ケアプランデータ連携システムに対応しているか確認が必須です。2023年4月から本格稼働したこのシステムは、今後の業務効率化の要になります。
他事業所との情報共有機能の有無、操作性、サポート体制、費用(初期費用とランニングコスト)を総合的に評価します。可能であれば無料体験版やデモンストレーションを活用してください。
注意点は「すぐに決めない」ことです。最低3社以上を比較し、自事業所の規模や課題に最適なものを選びましょう。高機能でも使いこなせなければ意味がありません。
ステップ3:運用ルールを事前に決める(所要時間:1週間)
導入するツールが決まったら、運用ルールを明確にします。「誰が」「いつ」「何を」入力するか、具体的に定めておかないと現場が混乱します。
例えば「訪問後24時間以内にタブレットで支援経過記録を入力する」「チャットでの連絡は営業時間内に返信する」といった具体的なルールを設定します。
情報セキュリティに関するルールも必須です。個人情報を含むデータの取り扱い、端末の持ち出し基準、パスワード管理方法などを文書化してください。
運用ルールは導入後も柔軟に見直すことが重要です。最初から完璧を目指さず、実際に使いながら改善していく姿勢が成功の鍵になります。
ステップ4:段階的に導入して慣れる(所要時間:1〜3ヶ月)
一度にすべてを変えようとすると失敗します。まずは記録業務のデジタル化など、影響範囲の小さい部分から始めてください。
導入初期は作業効率が一時的に下がることを想定しておきます。新しいシステムに慣れるまでの期間として、1〜2ヶ月は見込んでおきましょう。
この期間は受け入れ人数を減らすなど、業務量の調整も検討してください。地域包括支援センターにも事前に伝えておくと、理解を得やすくなります。
定期的に職員全員で振り返りの時間を設けます。「使いにくい点」「改善してほしい機能」など、現場の声を吸い上げて運用方法を修正していきます。
ステップ5:効果測定とPDCAサイクルを回す(継続的に実施)
導入3ヶ月後に効果測定を行います。業務時間の削減量、残業時間の変化、利用者との面談時間の増加など、数値で効果を確認してください。
うまくいかない部分があれば、原因を分析して改善策を立てます。「職員がツールを使いこなせていない」なら追加研修、「機能が不足している」なら別ツールの検討が必要です。
補助金の活用状況も確認します。厚生労働省のICT導入支援事業や、都道府県・市区町村の助成制度を最大限活用することで、費用負担を軽減できます。
ICT化は「導入がゴールではなくスタート」です。継続的に改善を重ねることで、真の業務効率化とケアの質向上が実現します。
ケアマネICT化の注意点とよくある失敗3例
注意点1:職員のスキル差への対応が必須
介護現場は年齢層が幅広く、デジタル機器に苦手意識を持つ職員も少なくありません。研修や個別サポートの体制を整えないと、一部の職員だけが使いこなせない状況になります。
対処法は、操作マニュアルを作成し、定期的な研修を実施することです。サポート体制が充実しているベンダーを選ぶことも重要になります。
ベテラン職員の意見も積極的に取り入れましょう。「使いにくい」という声を無視せず、一緒に改善方法を考える姿勢が定着の鍵です。
注意点2:セキュリティ対策を万全にする
個人情報を含むデータを扱うため、セキュリティ対策は最重要課題です。医療・介護関係事業者向けのガイダンスや、医療情報システムの安全管理ガイドラインを遵守してください。
端末紛失時の対応手順、パスワードの定期変更、アクセス権限の管理など、具体的なルールを定めます。クラウドサービスを利用する場合は、提供元のセキュリティ対策も確認が必要です。
定期的にセキュリティ研修を実施し、職員の意識を高めることも欠かせません。一人の不注意が情報漏洩に繋がる可能性があります。
注意点3:初期費用とランニングコストの見積もり
ICT導入には初期費用だけでなく、月額利用料や保守費用などのランニングコストがかかります。長期的な費用を見積もって、事業所の経営計画に組み込んでください。
ただし、厚生労働省のICT導入支援事業を活用すれば、導入費用の一部を補助してもらえます。都道府県や市区町村の助成制度も確認し、活用できるものは最大限利用しましょう。
補助金は年度ごとに予算が決まっており、早めに締め切られることも多いです。自治体のホームページをこまめにチェックすることをお勧めします。
よくある失敗例と対策
失敗例1:機能が多すぎて使いこなせない
高機能な介護ソフトを導入したものの、複雑すぎて現場が混乱するケースです。対策として、まず必要最低限の機能から使い始め、慣れてきたら段階的に機能を拡張していきます。
失敗例2:職員の意見を聞かずトップダウンで導入
管理者だけで決めて現場に押し付けると、職員の反発を招きます。導入前に現場の課題を丁寧にヒアリングし、職員を巻き込んで進めることが成功の秘訣です。
失敗例3:導入後のフォロー体制がない
導入したら終わりではありません。定期的な振り返りミーティングや、困ったときに相談できる体制がないと、次第に使われなくなります。継続的なサポート体制を構築してください。
よくある質問(FAQ)
Q1:ICT化にどれくらいの費用がかかりますか?
介護ソフトの場合、初期費用は10万円〜50万円、月額利用料は5千円〜3万円程度が相場です。ただし、厚生労働省のICT導入支援事業を活用すれば、導入費用の最大50%程度の補助を受けられる場合があります。
都道府県や市区町村の助成制度も併せて確認することで、実質的な負担を大幅に軽減できます。タブレット端末やインカムなどの機器費用も含めた総合的な見積もりを取ることをお勧めします。
Q2:パソコンが苦手な職員でも使えますか?
使えます。最近の介護ソフトは操作性が大幅に向上しており、直感的に使えるものが増えています。導入時に丁寧な研修を実施し、操作マニュアルを用意すれば、デジタル機器に不慣れな方でも問題なく使いこなせるようになります。
サポート体制が充実しているベンダーを選ぶことで、困ったときにすぐ相談できる環境を整えることが重要です。焦らず時間をかけて慣れていく姿勢が大切です。
Q3:小規模事業所でもICT化は必要ですか?
必要です。特に1人ケアマネの事業所こそ、ICT化のメリットが大きいです。紙媒体の書類作成や保管の手間が大幅に削減でき、固定電話ではなくIP電話アプリを使えば通信費も節約できます。
小規模だからこそ、限られた人員で最大の効果を出すためにICT活用が欠かせません。まずはチャットツールや介護ソフトの基本機能など、小さく始めて段階的に拡張していく方法がお勧めです。
Q4:既存のシステムからの移行は大変ですか?
システム移行時は一時的に作業効率が下がりやすいため、計画的に進めることが重要です。繁忙期を避け、比較的余裕のある時期に移行することで、影響を最小化できます。
新旧システムを並行稼働させる期間を設けたり、データ移行をベンダーにサポートしてもらったりすることで、スムーズな移行が可能になります。移行期間中は受け入れ人数を調整するなど、無理のない計画を立てましょう。
Q5:ケアプランデータ連携システムとは何ですか?
2023年4月から本格稼働した、国が整備した情報連携システムです。居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で、ケアプランやサービス提供票をデータで安全にやり取りできます。
従来のFAXや郵送が不要になり、印刷・送信・確認の手間が大幅に削減されます。標準化された仕様で連携するため、異なる介護ソフトを使っている事業所間でもスムーズにデータ交換が可能です。今後の業務効率化の基盤となる重要なシステムといえます。
まとめ
ケアマネのICT化は、業務効率化と利用者ケアの質向上を同時に実現する有効な手段です。重要なポイントは以下の3つです。
第一に、現状の業務課題を具体的に洗い出し、解決できるツールを慎重に選ぶこと。第二に、職員全員が使いこなせるよう段階的に導入し、継続的な研修とサポート体制を整えること。第三に、セキュリティ対策と補助金活用を含めた総合的な導入計画を立てることです。
ICT化は「導入がゴールではなくスタート」です。PDCAサイクルを回しながら、自事業所に最適な運用方法を見つけていくことが成功の鍵になります。
明日からできる第一歩として、まずは自事業所の業務課題を1週間記録することから始めてみてください。数値で課題を把握することで、最適なICTツールが見えてきます。利用者様により良いケアを提供するため、そしてあなた自身が働きやすい環境を作るため、ICT化への一歩を踏み出しましょう。

