介護現場のICT導入で業務時間を3割削減する方法【7ステップで解説】

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介護現場の事務作業に追われ、利用者と向き合う時間が取れないとお悩みではありませんか。

ICT(情報通信技術)を導入すれば、記録作業や情報共有を効率化し、介護スタッフの業務負担を大幅に削減できます。実際の導入事例では、間接業務の時間が平均30%削減され、利用者へのケア時間が増加しています。

この記事では、介護現場でのICT導入の実践方法を7つのステップで解説します。実際の施設での導入体験をもとに、つまずきやすいポイントと対処法を具体的に紹介しています。

令和6年度の介護報酬改定でICT導入が加算の要件となり、導入支援の補助金制度も拡充されています。

記事を読めば、自施設に適したICTツールの選び方から運用定着まで、スムーズに進められます。

ICTとは何か?介護現場での役割を理解する

ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)の略称です。ITに「コミュニケーション」の要素が加わり、人と人の情報共有を促進する技術を指します。

介護現場では、タブレット端末を使った記録システム、スタッフ間の連絡用インカム、利用者の見守りセンサーなどがICTに該当します。普段使っているスマートフォンも、実はICTの一種といえます。

厚生労働省の調査によると、介護事業所の52.8%がパソコンで利用者情報を共有しており、タブレット端末を導入している事業所も28.6%に達しています。介護ロボットやAIを活用したケアプラン作成支援など、ICTの活用範囲は年々広がっています。

介護業界では2025年に約32万人の人材不足が予測されており、限られた人員で質の高いサービスを提供するためにICT活用が不可欠となっています。ICTを導入することで、人が行うべき直接的なケアに時間を割けるようになります。

ICT導入で得られる5つのメリット

介護現場にICTを導入すると、業務効率化だけでなく、スタッフと利用者の双方に多くの恩恵をもたらします。実際のデータに基づいた具体的なメリットを見ていきましょう。

間接業務の時間を平均30%削減できる

厚生労働省の調査では、ICTを導入した事業所の9割以上で間接業務の時間が減少しました。手書きの記録作業をタブレット入力に切り替えることで、記録にかかる時間が半分以下になった施設もあります。

削減できた時間は、利用者との会話や見守り、リハビリ支援など直接的なケアに充てられます。実際に61%の事業所が「直接ケアにあたる時間が増加した」と回答しています。請求業務も自動化されるため、月末の残業時間が大幅に減少します。

リアルタイムの情報共有で事故を防止できる

紙の記録では申し送りに時間がかかり、情報の伝達漏れが発生するリスクがあります。ICTシステムを使えば、利用者の状態変化をスタッフ全員がリアルタイムで把握できます。

タブレットやスマートフォンで撮影した写真を記録に添付すれば、傷の状態や食事量などを視覚的に共有できます。夜勤スタッフが記録した情報を、翌朝の日勤スタッフが出勤前に確認することも可能です。インカムを導入すれば、緊急時の連絡も瞬時に行えます。

データに基づく科学的な介護を実現できる

ICTシステムに蓄積されたデータを分析することで、利用者一人ひとりに最適なケアを提供できます。排泄パターンや睡眠時間、バイタルデータの推移を可視化し、状態変化の予兆を早期に発見できます。

LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出も効率化されます。記録したデータが自動的に集計されるため、経験の浅いスタッフでも根拠に基づいたケアプランを立案できるようになります。

スタッフの離職率を低下させられる

業務負担の軽減により、スタッフの働きやすさが向上します。残業時間が減り、プライベートの時間を確保できるようになると、仕事への満足度が高まります。

情報共有がスムーズになることで、チーム内のコミュニケーションも活性化します。新人スタッフも先輩の記録を参考にしながら学べるため、教育体制の充実にもつながります。働きやすい職場環境が整備されることで、人材の定着率が向上します。

施設外との連携もスムーズになる

医療機関や他の介護サービス事業所との情報共有も効率化されます。ケアプランデータ連携システムを活用すれば、紙の書類をFAXでやり取りする手間が不要になります。

オンライン会議ツールを使えば、遠隔地の医師や多職種とのカンファレンスも容易です。災害時にもデジタルデータであれば、クラウド上に保管された情報にどこからでもアクセスできるため、事業継続に役立ちます。

これらのメリットにより、ICTは介護の質と職場環境の両方を向上させる強力なツールとなります。

ICT導入の実践方法【7ステップで解説】

厚生労働省が推奨する導入プロセスに沿って、実際の手順を具体的に解説します。各ステップの所要時間と重要ポイントを押さえましょう。

ステップ1:導入計画を立てる(所要時間:2週間)

まず「なぜICTを導入するのか」という目的を明確にします。「記録作業の時間を1日1時間削減する」「月末の残業時間を半減させる」など、数値目標を設定すると効果測定がしやすくなります。

導入スケジュールは半年から1年程度を想定します。急いで進めると現場が混乱するため、段階的な導入計画を立てましょう。法人内に複数の事業所がある場合、1つの事業所でテスト導入してから展開すると失敗を防げます。

経営層と現場スタッフが参加する導入チームを組織します。現場の意見を反映させないと、実際には使われないシステムになってしまいます。

ステップ2:システムとツールを選定する(所要時間:1ヶ月)

現場の課題を洗い出し、最も効果が高い領域から導入します。記録業務、シフト管理、請求業務など、優先順位をつけましょう。

複数のベンダーから見積もりを取り、以下の観点で比較検討します。操作性が直感的か、既存の業務フローに合っているか、サポート体制は充実しているか、他のシステムと連携できるか、といった点を確認します。

無料トライアルを活用し、実際にスタッフに使ってもらいましょう。デモだけでは分からない使い勝手の良し悪しが見えてきます。高齢のスタッフでも使いこなせるシンプルな操作性が重要です。

ステップ3:業務フローを見直す(所要時間:2週間)

ICT導入に合わせて、従来の業務手順を根本から見直します。紙の記録をそのままデジタル化するだけでは、十分な効果は得られません。

記録のタイミングや項目を整理し、重複した入力作業を削減します。チェックボックス形式やプルダウンメニューを活用すれば、記入時間を短縮できます。必要最小限の項目に絞り込むことがポイントです。

申し送りの方法も変更します。システム上で情報共有できるようになれば、口頭での申し送り時間を大幅に削減できます。

ステップ4:実施体制を整備する(所要時間:1週間)

導入責任者とサポート担当者を明確にします。各部署からICTに詳しいスタッフを選び、現場のリーダーとして配置しましょう。

ネットワーク環境を整備します。Wi-Fiの電波が届かないエリアがあると、タブレットが使えず導入が失敗します。通信速度が遅いと記録の保存に時間がかかり、ストレスになります。専門業者に依頼して、施設全体のネットワーク環境を確認しましょう。

セキュリティ対策も重要です。利用者の個人情報を扱うため、パスワード管理やアクセス権限の設定を厳格に行います。

ステップ5:関係者へ説明する(所要時間:1週間)

スタッフ全員に導入の目的とメリットを丁寧に説明します。「仕事が増える」と感じるスタッフもいるため、業務負担が軽減されることを具体例で示しましょう。

利用者とその家族にも説明が必要です。タブレットを使って記録することで、より細やかなケアが提供できる点を伝えます。個人情報の取り扱いについても、安全対策を説明し安心してもらいましょう。

行政への届出が必要な場合もあります。事前に確認し、必要な手続きを済ませておきます。

ステップ6:研修を実施する(所要時間:1ヶ月)

段階的な研修計画を立てます。最初は基本操作から始め、徐々に応用的な機能を学びます。一度に多くの機能を教えようとすると、スタッフが混乱します。

少人数のグループに分けて、実際の業務を想定した演習を行います。ベテランスタッフと若手スタッフを組み合わせると、教え合いながら習得できます。タブレット操作が苦手なスタッフには、個別サポートの時間を設けましょう。

マニュアルは紙とデジタルの両方を用意します。操作手順を図解し、いつでも確認できるようにしておきます。よくある質問とその回答をまとめたFAQも作成しましょう。

ステップ7:効果を検証し改善する(継続的に実施)

導入後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のタイミングで効果を測定します。記録時間の削減、残業時間の変化、ケア時間の増加などを数値で把握しましょう。

スタッフからのフィードバックを集め、使いにくい点を改善します。定期的にミーティングを開き、困りごとや要望を共有します。システムの設定変更で解決できることも多くあります。

上手く活用できているスタッフの工夫を他のスタッフに共有します。成功事例を水平展開することで、施設全体の習熟度が向上します。

導入後半年程度で、次の段階のICTツール導入を検討します。記録システムが定着したら、見守りセンサーやシフト作成ツールなど、段階的に拡大していきましょう。

ICT導入で失敗しないための5つのコツ

多くの事業所がつまずくポイントと、その対処法を実例に基づいて紹介します。

スタッフの不安に寄り添い段階的に進める

「機械は苦手」「今のやり方で十分」という抵抗感を持つスタッフは必ずいます。否定せず、不安の原因を聞き取りましょう。操作が難しいのか、変化そのものが嫌なのか、理由によって対応が変わります。

導入初期は紙の記録と並行運用し、徐々に移行します。いきなり全てをデジタル化すると、トラブル時に業務が止まってしまいます。2週間程度の並行期間を設けることで、スタッフも余裕を持って慣れていけます。

現場の声を反映したシステムを選ぶ

経営層だけで決めたシステムは、現場で使われないことがあります。実際に使うスタッフを選定段階から参加させましょう。若手、中堅、ベテランと、年齢や経験の異なるスタッフの意見を聞くことが重要です。

見た目が良くても、実際の業務に合わないシステムは失敗の原因になります。デモや無料トライアルで、実際の記録作業を試してみましょう。記録項目が自施設の書式に合っているか、カスタマイズできるかも確認します。

ネットワーク環境を事前に整備する

Wi-Fiの電波が弱い、通信速度が遅いという環境では、ICTは機能しません。導入前に専門業者による電波調査を実施しましょう。建物の構造によっては、中継器の追加が必要になります。

同時接続台数も考慮します。多くのスタッフが一斉にタブレットを使う時間帯に、通信が遅くなることがあります。十分な回線容量を確保しておきましょう。

サポート体制の充実したベンダーを選ぶ

システムトラブルや操作方法の質問に、すぐに対応してくれるサポートがあるかを確認します。電話、メール、チャットなど、複数の問い合わせ手段があると便利です。

訪問サポートや追加研修が無料で受けられるかも重要です。導入後しばらくは、細かい疑問が次々と出てきます。追加費用が高額だと、気軽に質問できなくなってしまいます。

補助金制度を活用してコストを抑える

ICT導入支援事業を活用すれば、導入費用の一部が補助されます。厚生労働省や自治体が実施している補助金制度を調べましょう。申請には期限があるため、早めに情報収集を始めます。

補助金の対象となる機器やソフトウェアには条件があります。タブレットやスマートフォンは対象ですが、パソコンやプリンターは対象外の場合もあります。購入前に必ず確認しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1:小規模な事業所でもICT導入は必要ですか?

小規模事業所こそ、ICTによる業務効率化の効果は大きいといえます。少人数で多くの業務をこなす必要があるため、記録時間の削減が直接的にケアの質向上につながります。小規模事業所向けの低価格なシステムも増えており、月額数万円から導入できるサービスもあります。

Q2:高齢のスタッフでも使いこなせますか?

最近のシステムは操作が簡単になっており、スマートフォンが使えるレベルであれば問題ありません。直感的な操作ができるタッチパネル式で、文字も大きく表示されます。研修とサポートをしっかり行えば、年齢に関わらず活用できています。

Q3:導入にどのくらいの期間がかかりますか?

計画から運用定着まで、通常は6ヶ月から1年程度を見込みます。急ぎすぎるとスタッフが対応できず、失敗の原因になります。小規模な事業所や、導入範囲を限定する場合は、3ヶ月程度で進められることもあります。

Q4:セキュリティは大丈夫ですか?

適切な対策を講じれば、紙の記録よりも安全に管理できます。アクセス権限を設定すれば、必要な人だけが情報を閲覧できます

クラウドサービスは自動でバックアップされるため、災害時のデータ消失リスクも低減されます。ただし、パスワード管理やデバイスの取り扱いルールは厳格に定める必要があります。

Q5:停電や通信障害時はどうなりますか?

クラウド型のシステムは、インターネット接続ができないと利用できません。バッテリー駆動のタブレットを使用し、Wi-Fiルーターもバッテリー対応のものを選ぶと、短時間の停電には対応できます。緊急時に備えて、最低限の紙の記録用紙も準備しておくことをお勧めします。

まとめ

介護現場のICT導入は、業務効率化とケアの質向上を同時に実現する有効な手段です。重要なポイントは、現場スタッフの声を反映したシステム選定、段階的な導入計画、充実した研修体制の3つです。

厚生労働省の補助金制度を活用すれば、コストを抑えながら導入を進められます。令和6年度の介護報酬改定でICT導入が評価される仕組みも整いつつあります。

まずは自施設の課題を明確にし、最も効果が期待できる領域から小さく始めてみましょう。成功体験を積み重ねることで、施設全体のICT活用が進んでいきます。

導入を検討されている方は、まず無料トライアルで使い勝手を確認することから始めてください。未来の介護を支えるICT活用に、今日から一歩踏み出しましょう。

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