ケアマネのICTとは何か
ケアマネ業務におけるICTとは、ケアプラン作成や多職種連携、記録管理などを電子化・自動化する情報通信技術のことです。
具体的には介護ソフトやチャット連絡、クラウドストレージなどを活用し、紙の書類作成や電話連絡に費やしていた時間を大幅に削減します。月間3日かかっていた実績入力作業が数分で完了する、電話連絡が1対1から1対多数に変わるなど、劇的な業務改善が可能になります。
厚生労働省は2021年度の介護報酬改定で、ICT活用を条件とした担当件数の上限緩和(40件→45件)を導入しました。これは国がケアマネ業務の効率化を推進している証拠です。ICTは単なる便利ツールではなく、今後のケアマネジメントに不可欠な基盤となっています。
2040年には約69万人の介護人材不足が予測される中、限られた人員で質の高いケアを提供するためにICT活用は必須の選択肢といえます。ケアマネジャー1人あたりの担当件数が増加傾向にある現状において、業務効率化は生き残り戦略でもあります。
ケアマネがICTを導入する5つのメリット
記録作業時間が月5〜8時間削減される
クラウド型介護ソフトの導入により、訪問先から直接記録入力が可能になります。従来は事務所に戻ってから記録を転記していた作業が不要となり、移動時間のスキマ時間を活用できます。
月間換算で5〜8時間の削減効果があったという報告が複数の事業所から寄せられています。この時間を利用者との面談や多職種連携に充てることで、ケアマネジメントの質向上につながります。また、記録のリアルタイム性が高まることで情報の鮮度が保たれ、より正確な状況把握が実現します。
多職種連携のスピードが2倍以上になる
チャット機能を活用することで、電話では実現できなかった複数の関係者への同時連絡が可能になります。サービス担当者会議の日程調整が従来の半分以下の時間で完了する事例も報告されています。
グループチャットでは、サービス事業所同士が直接やり取りできるため、ケアマネジャーを経由しない情報共有も実現します。
メッセージは履歴として残るため「言った言わない」のトラブルも防止できます。また、画像添付機能により、言葉では伝えにくい利用者の状態を正確に共有できる点も大きなメリットです。
実績管理の誤りが大幅に減少する
ケアプランデータ連携システムを導入すると、サービス事業所からの実績報告が自動的に取り込まれます。手入力による転記ミスがなくなり、返戻のリスクが劇的に低下します。
毎月3日間を要していた実績入力作業がほぼゼロになった事例もあります。数字の不一致があった場合も、その場で確認しながら即座に対応できるため、月末の業務集中を緩和できます。給付管理業務の精神的負担が軽減されることで、本来のケアマネジメント業務に集中できる環境が整います。
ペーパーレス化でコストと保管スペースが削減
書類の電子化により、印刷用紙やトナー代などのランニングコストが削減されます。年間数万枚の記録用紙を管理していた事業所では、保管スペースの問題も解消されました。
電子データは検索性に優れており、必要な情報をすぐに見つけられます。紙の書類は経年劣化しますが、電子データはメンテナンス不要で長期保管が可能です。特に小規模事業所では、保管スペースの確保が課題となるケースが多いため、ペーパーレス化の恩恵は大きいといえます。
場所を選ばない働き方が実現する
クラウドシステムの活用により、事務所にいなくても業務が遂行できるようになります。利用者宅訪問の合間や自宅から書類作成が可能となり、ワークライフバランスの改善につながります。
テレビ電話でのモニタリングが可能な利用者については、移動時間そのものを削減できます。兼業ケアマネジャーや子育て中の職員にとって、柔軟な働き方が選択できることは大きなメリットです。これにより、多様な人材がケアマネジャーとして活躍できる環境が整います。
ケアマネのICT導入を成功させる5ステップ
ステップ1: 現状の業務を洗い出す(所要時間1週間)
まず、日々の業務のどこに時間がかかっているかを可視化します。記録作成、連絡調整、移動、給付管理など、項目ごとに実際の所要時間を計測しましょう。
Excel等で1週間の業務時間を記録すると、改善すべき課題が明確になります。多くの事業所では、連絡調整と記録作業に全体の40〜50%の時間を費やしている実態が見えてきます。この段階で職員全員の意見を聞き、共通の課題認識を持つことが重要です。
つまずきポイント: 業務時間の計測を面倒がって飛ばしてしまうケースがあります。しかし、この工程を省略すると導入効果の測定ができなくなります。1週間だけでも正確に記録する価値があります。
ステップ2: 導入するツールを選定する(所要時間2週間)
現状分析の結果をもとに、解決すべき課題に合わせたツールを選びます。すべてを一度に導入するのではなく、優先順位をつけることが成功の鍵です。
小規模事業所であれば、まず介護ソフトとチャットツールの2つから始めるのが現実的です。デモ期間を活用し、実際の業務フローで試用してから判断しましょう。操作性、サポート体制、既存システムとの連携可能性を確認します。
つまずきポイント: 多機能なシステムを選んでしまい、使いこなせないケースが多発しています。最初は必要最小限の機能から始め、慣れてから段階的に機能を拡張する方が成功率が高まります。
ステップ3: 段階的に導入を開始する(所要時間1ヶ月)
いきなり全業務を電子化するのではなく、まず一部の業務やケアマネジャーから試験導入します。成功体験を積み重ねることで、抵抗感を減らせます。
例えば、新規利用者のみICTで管理する、特定のサービス事業所とのみチャットを使うなど、範囲を限定してスタートします。この期間中に操作マニュアルを整備し、よくある質問への回答を準備しておきましょう。
つまずきポイント: 試験導入中に問題が発生すると、すぐに諦めてしまう傾向があります。むしろこの段階で問題を洗い出し、本格導入前に解決策を見つけることが目的だと認識しましょう。
ステップ4: 職員研修と操作サポートを実施する(所要時間2週間)
ICTに不慣れな職員向けに、丁寧な研修を実施します。年齢や経験に関わらず、全員が基本操作をマスターできるまでサポートします。
集合研修だけでなく、個別のフォローアップも重要です。最初は操作が得意な職員をメンター役として配置し、気軽に質問できる体制を整えます。導入初期は一時的に業務負担が増えることを事前に説明し、理解を得ておきましょう。
つまずきポイント: 「操作は簡単だから大丈夫」と軽視してしまうケースです。特にIT機器に不慣れな職員にとっては、些細な操作でもハードルとなります。誰一人取り残さない姿勢が重要です。
ステップ5: 効果検証と改善を繰り返す(所要時間継続)
導入から3ヶ月後、6ヶ月後に効果測定を実施します。ステップ1で計測した業務時間と比較し、どれだけ削減できたかを数値で確認しましょう。
職員アンケートで満足度や改善要望を収集します。使われていない機能があれば、なぜ使われないのかを分析し、操作方法の再教育や業務フローの見直しを行います。PDCAサイクルを回すことで、さらなる業務改善が実現します。
つまずきポイント: 導入して満足してしまい、効果検証を怠るケースです。データに基づいた改善活動を継続することで、ICTの真価が発揮されます。
ケアマネのICT導入で失敗しない3つのコツ
完璧を求めず小さく始める
最初から完璧なシステムを構築しようとすると、計画段階で挫折します。まずは最も時間がかかっている業務1つに絞ってICTを導入し、成功体験を積むことが重要です。
チャットツールだけ、記録のタブレット入力だけなど、範囲を限定することで職員の心理的ハードルが下がります。小さな成功を重ねることで、ICT活用への前向きな姿勢が組織に根付いていきます。全体最適より部分最適を優先し、段階的に拡大する戦略が有効です。
職員の声を聞き続ける仕組みを作る
ICT導入の主役は、実際に使う職員です。トップダウンで押し付けるのではなく、現場の意見を吸い上げながら進めることが成功の鍵となります。
定期的な意見交換会や匿名アンケートを実施し、使いにくい点や改善要望を収集します。可能な限り現場の声を反映させることで、職員のモチベーションが維持されます。「自分たちで作り上げている」という当事者意識が、ICT活用の定着を促進します。
補助金を積極的に活用する
ICT導入には初期費用がかかりますが、厚生労働省のICT導入支援事業やIT導入補助金など、複数の支援制度が用意されています。導入費用の最大75%が補助される場合もあります。
各自治体でも独自の補助金制度を設けているケースがあるため、事前に確認しましょう。補助金の申請には期限や要件があるため、計画段階から情報収集を始めることが重要です。費用面の不安が解消されることで、導入への決断がしやすくなります。
ケアマネのICT導入でよくある質問(FAQ)
Q1: ICT導入に最適な事業所の規模はありますか?
A: 規模に関わらず導入メリットはあります。むしろ小規模事業所ほど、限られた人員での業務効率化が重要になります。1人ケアマネでもクラウド型ソフトやチャットツールの導入で大きな効果が得られます。
Q2: 高齢の職員でもICTを使いこなせますか?
A: 直感的に操作できる介護ソフトが増えており、年齢は問題ではありません。丁寧な研修とサポート体制があれば、誰でも習得可能です。実際に60代の職員がICT化を推進している事例も多数報告されています。
Q3: セキュリティ面は大丈夫でしょうか?
A: 個人情報保護は最優先事項です。SSL暗号化、アクセスログ記録、外部アクセス制限などのセキュリティ機能を備えたサービスを選びましょう。ISO27001取得済みの事業者を選ぶとより安心です。
Q4: 既存の紙の記録はどうすればいいですか?
A: 一度にすべてを電子化する必要はありません。新規利用者から電子化を開始し、既存利用者は更新時に移行する方法が現実的です。過去の記録は法定保存期間が終了するまで紙で保管します。
Q5: 導入後のサポート体制はどうなりますか?
A: 電話やメールでのサポート体制が整っている事業者を選ぶことが重要です。24時間対応や操作動画マニュアルの有無も確認ポイントです。導入後の定期訪問やオンライン研修を提供している事業者もあります。
まとめ
ケアマネ業務のICT化は、記録作業時間の削減、多職種連携のスピードアップ、実績管理の正確性向上という3つの大きなメリットをもたらします。
成功の鍵は、現状分析から始める段階的な導入、職員全員を巻き込んだ取り組み、そして継続的な改善活動です。完璧を求めず、できることから始めましょう。
まずは自分の事業所の業務時間を1週間記録することから始めてください。その結果をもとに、最も改善効果の高い分野からICT導入を検討しましょう。あなたのケアマネジメントの質を高める第一歩を、今日から踏み出してください。

