ICTの活用で介護現場が変わる!導入手順と成功の3つのポイント

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介護現場の記録業務や情報共有に時間がかかりすぎていませんか。

ICTの活用により、情報通信技術を使った記録作成・情報共有・業務効率化が実現します。本記事では、実際の導入プロセスから失敗事例まで、現場で使える実践的なICT活用法をお伝えします。

筆者は複数の事業所でICT導入支援に携わり、小規模から大規模まで様々な施設の導入過程を見てきました。この経験から、規模別の最適な進め方と注意点を具体的に解説します。

最後まで読めば、あなたの施設に合ったICT活用の第一歩が踏み出せるようになります。

ICTとは何か?介護現場での基本的な意味

ICTとはInformation and Communication Technologyの略で、情報通信技術と訳されます。介護分野では、記録業務の効率化や職員間の情報共有を円滑にするために活用されています。

ITとの違いは、コミュニケーションの要素が含まれる点です。単なるパソコンやスマートフォンという機器そのものではなく、それらを使って人と人がつながり、情報を共有する方法やサービスを指します。

介護現場で使われる主なICT機器

具体的には以下のようなシステムが該当します。タブレット端末による記録入力、クラウド型の介護記録管理システム、スタッフ間のチャットツール、見守りセンサーとの連携システム、勤怠管理や給与計算の自動化ソフトなどです。

入所型施設では7割以上が介護ソフトを導入しており、記録業務のデジタル化が進んでいます。

ICT活用で得られる5つのメリット

介護現場でICTを導入することで、複数の効果が期待できます。

記録業務の時間が最大70%削減できる

手書きの記録からタブレット入力に切り替えることで、記録作成にかかる時間が大幅に短縮されます。ある事業所では、1件あたりの記録時間が30分から10分に減少しました。

情報を探す手間も削減されます。紙の記録では利用者ごとにファイルを探す必要がありましたが、デジタル化により検索機能で瞬時にアクセス可能になります。

情報共有がリアルタイムで可能になる

チーム全体での連携やケアの質が高まります。夜勤から日勤への申し送りも、システム上で確認できるため、口頭での伝達ミスを防げます。

訪問先から事業所に戻らずとも、移動中にスマートフォンで記録を確認できるようになります。これにより、緊急時の対応判断が早くなりました。

利用者と向き合う時間が増加する

事務作業が軽減され、スタッフと利用者が関わる時間を増やせます。記録や申し送りに費やしていた時間を、直接的なケアやコミュニケーションに充てられるようになります。

あるデイサービスでは、記録時間の削減により1日あたり職員1人につき平均40分の余裕が生まれ、レクリエーション時間の拡充につながりました。

職員の身体的負担が軽減される

見守りシステムと連携することで、夜間の巡回回数を減らせます。離床や在室状況をチェックできる仕組みにより、24時間ずっと利用者のそばで観察する必要がなくなります。

また、勤怠管理の自動化により、訪問先で出退勤の打刻ができ、事業所への往復移動が不要になります。

データに基づいたケアの質向上が実現する

食事量、睡眠の質、トイレの回数などのデータを記録し続けると、小さな変化にいち早く気づけます。利用者ごとの傾向を可視化することで、予防的なケアが可能になります。

例えば、睡眠パターンの変化から体調不良の兆候を早期に発見し、重症化を防いだケースもあります。

ICT導入を成功させる5つのステップ

介護現場でICTを効果的に導入するには、計画的な進め方が重要です。ここでは実践的な手順を解説します。

ステップ1:課題の明確化と目的設定(所要時間:1〜2週間)

まず現場の困りごとを具体的に洗い出します。「記録に時間がかかる」だけでなく、「何の記録にどれくらい時間がかかるか」まで数値化しましょう。

職員アンケートや業務時間の計測を行い、優先的に解決すべき課題を3つに絞ります。すべてを一度に解決しようとすると失敗しやすいため、段階的な導入が効果的です。

つまずきポイントは、現場の意見を聞かずに管理者だけで決めてしまうことです。実際に使う職員の声を反映させないと、導入後に使われなくなります。

ステップ2:規模に応じたツール選定(所要時間:2〜4週間)

小規模事業所(職員10名以下)では、シンプルで操作が簡単なツールから始めます。多機能より使いやすさを優先し、無料体験期間で実際の操作感を確認しましょう。

中規模事業所(職員11〜30名)は、記録・請求・シフト管理が連携できる統合型システムが効率的です。ベンダーのサポート体制も重視します。

大規模事業所(職員31名以上)では、複数拠点での情報共有やデータ分析機能が充実したシステムを選びます。初期費用の問題に対して、ICT導入補助金を活用することで負担を軽減できます。

ステップ3:段階的な試験導入(所要時間:1〜3ヶ月)

いきなり全職員・全業務で導入せず、1フロアまたは1つの業務から開始します。例えば、まず介護記録だけをタブレット入力に切り替え、慣れてから請求業務も追加するといった進め方です。

試験期間中は毎週ミーティングを開き、使いにくい点や改善要望を集めます。この声を反映させながら運用ルールを調整していきます。

よくある失敗は、紙の記録と並行運用を長期間続けてしまうことです。二重入力は職員の負担を増やすため、1〜2ヶ月で完全移行のスケジュールを組みましょう。

ステップ4:職員研修と習熟支援(所要時間:継続的に2〜3ヶ月)

高齢化が進むスタッフでも使いこなせるよう、定着までサポートする体制が重要です。年代別・スキル別に研修グループを分け、それぞれのペースで学べる環境を作ります。

操作マニュアルは動画とテキストの両方を用意します。文字だけでなく、実際の画面操作を録画した短い動画があると理解が早まります。

困ったときにすぐ聞ける相談窓口(社内担当者やベンダーサポート)を明確にしておくことも大切です。初期段階では毎日のように質問が出るため、対応体制を整えます。

ステップ5:効果測定と継続的改善(所要時間:3ヶ月後〜)

導入前後で業務時間を比較測定します。記録作成時間、申し送り時間、情報検索時間などを数値化し、効果を可視化しましょう。

都道府県へ導入計画と導入効果報告を提出する必要があり、2年間の報告が求められます。この報告を活用して、自施設の改善ポイントを見つけられます。

運用開始後も定期的に職員の意見を聞き、使いにくい機能の見直しや新機能の追加を検討します。ICTは導入がゴールではなく、継続的な改善が成功の鍵です。

ICT導入時の3つの注意点と対処法

介護現場でのICT活用には、いくつかの落とし穴があります。事前に知っておくことで失敗を防げます。

導入コストを補助金で賄う

ICT化のデメリットのひとつは、導入コストが高いことです。タブレット端末やシステムの初期費用に加え、インターネット環境の整備も必要になります。

対処法として、厚生労働省のICT導入支援事業を活用しましょう。記録・情報共有・請求業務を1つにまとめるシステム導入に対して補助が受けられます。申請にはLIFEへの協力、セキュリティアクションの宣言、2年間の効果報告などの要件があります。

自治体独自の補助制度もあるため、都道府県の介護保険担当課に確認することをおすすめします。

デジタル操作に不慣れな職員への配慮

パソコンやタブレットの操作に慣れていない職員にとっては、スムーズに利用できるようになるまで時間がかかります。特に60代以上の職員が多い施設では、抵抗感を示すケースもあります。

対処法は3つです。まず、操作が直感的でシンプルなシステムを選びます。次に、若手職員をサポート担当に任命し、困ったときにすぐ聞ける体制を作ります。最後に、成功体験を早めに積ませることです。簡単な操作から始め、「便利だ」と実感してもらえれば、その後の習得が早くなります。

焦らず段階的に進めることが、全職員の定着につながります。

個人情報保護とセキュリティ対策

利用者の個人情報をデジタル化する以上、情報漏洩のリスクが高まります。IPAが実施するセキュリティアクションの宣言が求められます。

対処法として、アクセス権限の設定を適切に行います。職員ごとに閲覧・編集できる範囲を制限し、退職者のアカウントは即座に削除します。

パスワード管理のルール化も重要です。定期的な変更、他人との共有禁止、メモを残さないなどの基本を徹底します。また、タブレットの紛失・盗難対策として、遠隔ロック機能やデータ暗号化を設定しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1:小規模事業所でもICT導入は必要ですか?

A:職員数が少なくても導入メリットはあります。むしろ少人数だからこそ、シンプルなシステムで早期に効果を実感しやすいです。無料体験から始めて、現場に合うか確認することをおすすめします。

Q2:紙の記録に戻ることはできますか?

A:システム障害時のバックアップとして紙も併用する施設はありますが、完全に戻すのは非効率です。ただし、導入初期の並行運用期間は必要です。1〜2ヶ月を目安に完全移行を目指しましょう。

Q3:既存の介護ソフトとの連携は可能ですか?

A:異なるベンダーの介護ソフト間でも、標準仕様に沿った改修によりデータ交換が可能です。事前にベンダーに連携可能性を確認することが大切です。

Q4:ICT導入で介護報酬は加算されますか?

A:ICT導入自体に直接の加算はありませんが、収支状況の改善が図られた場合は職員の賃金に還元することが求められます。業務効率化により人員配置基準の緩和を受けられるケースもあります。

Q5:導入後のサポートはどこまで受けられますか?

A:ベンダーによって異なります。契約前に、電話サポートの時間帯、訪問対応の有無、システム更新の頻度などを確認しましょう。長期的な運用を考えると、サポート体制の充実度は重要な選定基準です。

まとめ

ICTの活用により、記録業務の削減・情報共有の円滑化・ケアの質向上という3つの効果が得られます。

成功のポイントは、現場の課題を明確にし、規模に応じたツールを選び、段階的に導入することです。補助金を活用すればコスト負担も軽減できます。

まずは無料体験や見学会に参加して、自施設に合うシステムを探してみてください。小さな一歩が、現場の大きな変化につながります。

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