介護現場のICT導入完全ガイド|3ステップで始める業務効率化と成功事例

AI/DX関連

「記録業務だけで1日2時間も取られる」「夜勤の見回りが不安で眠れない」そんな悩みを抱えていませんか。

介護現場のICT導入により、記録業務の時間短縮や職員の負担軽減が実現します。この記事では、規模や予算に応じた段階的な導入方法と、実際に月105時間の省力化を達成した施設の事例を紹介します。

筆者は福祉施設でのICT導入支援を3年間担当し、20以上の事業所の改善を支援してきました。現場で本当に使える実践的な情報だけを厳選してお伝えします。

3ステップの導入手順に沿って進めれば、初めての方でも無理なくICT化を実現できます。

ICT導入で介護現場はどう変わるのか

介護現場におけるICTとは

ICTとは情報通信技術のことで、インターネットを中心とした各種通信技術を活用してコミュニケーションをとることを指します。介護現場では、タブレット端末での記録作成、見守りセンサーによる利用者の状態把握、クラウドでの情報共有などが代表的な活用例です。

単なるデジタル化ではなく、職員同士や事業所間での円滑な情報のやり取りを実現する点が特徴です。紙の記録をパソコンに入力するだけでなく、その情報を複数の職員がリアルタイムで共有できる環境を作ることがICTの本質といえます。

なぜ今ICT導入が急務なのか

厚生労働省の試算では、2040年度には約69万人もの介護人材不足が生じると予測されています。限られた人員で質の高いケアを提供するには、業務の効率化が不可欠です。

政府は介護ロボットやICT等の導入後の継続的なテクノロジー活用を支援するための加算制度を設けています。制度面からも後押しされており、導入しやすい環境が整っています。

人材不足に加えて、職員の高齢化も進んでいます。若い世代の採用には、働きやすい環境づくりが重要であり、ICT導入はその有力な手段となります。

介護現場がICT導入で得られる5つのメリット

メリット1:記録業務の時間を50%削減

手書き記録を転記する作業が不要になり、タブレットで記録を作成すると1日約9時間の省力化を達成した事例があります。記録したデータはクラウド上で自動保存され、複数の職員が同時に閲覧できます。

転記ミスもなくなるため、正確性も向上します。記録時間が削減された分、利用者との対話時間を増やせる点も大きなメリットです。

メリット2:夜勤の負担と不安を軽減

見守りセンサーを導入すると、居室を巡回しなくても利用者の状態を把握できます。起き上がりや転倒のリスクを検知してスマートフォンに通知が届くため、必要なときだけ訪室すれば良くなります。

夜勤職員の歩行距離が減り、体力的な負担も軽減されます。緊急時の対応が早くなることで、事故防止にもつながります。

メリット3:情報共有がリアルタイムで可能に

チャット機能を使えば、日常の業務連絡や打ち合わせも場所を選ばなくなり、施設全体で情報を一斉連絡できます。申し送りの時間が短縮され、伝達漏れも防げます。

画像や動画も共有できるため、言葉では伝えにくい利用者の状態も正確に伝わります。訪問先からでも記録を確認できるため、事業所に戻る手間が省けます。

メリット4:シフト作成の時間を80%カット

シフト管理システムを使うと、最小の労力で公平なシフトが作成でき、作業時間が大幅に短縮できます。職員の希望や資格、勤務時間の制約を考慮しながら、自動で最適なシフトを提案してくれます。

変更があっても即座に調整でき、職員への通知も自動化できます。シフト作成業務の属人化も解消され、担当者の負担が軽減されます。

メリット5:ケアの質が向上する

バイタルデータや介護記録の推移を可視化することで、体調変化の早期発見や、より適切なケアプランの立案が可能です。データに基づいた科学的介護が実現します。

過去の記録を簡単に検索でき、利用者ごとの傾向やパターンが把握しやすくなります。家族への説明もデータを示しながら行えるため、信頼関係の構築にも役立ちます。

【実践編】規模別・3ステップのICT導入方法

ステップ1:小規模導入(初期投資30万円〜/所要期間1〜2ヶ月)

まずは勤怠管理やシフト作成など、事務系業務から始めましょう。現場の介護業務に影響が少なく、効果も実感しやすいため、職員の抵抗感が少ないです。

具体的には、タイムカード代わりのスマートフォンアプリ導入や、クラウド型のシフト作成ツールから着手します。初期費用は1事業所あたり30〜50万円程度で、補助金を活用すれば自己負担は10〜20万円に抑えられます。

導入時のつまずきポイントは、職員の操作習熟です。まずは管理者層5〜10名で1週間試験運用し、操作マニュアルを作成してから全体展開すると失敗を防げます。

ステップ2:中規模導入(初期投資100万円〜/所要期間3〜4ヶ月)

介護記録のデジタル化とタブレット導入を進めます。現場の介護職員が直接使うツールになるため、使いやすさを重視した製品選びが重要です。

記録項目のカスタマイズに2週間、職員研修に2週間、並行運用期間を1ヶ月設けるのが標準的なスケジュールです。この段階では紙の記録も併用し、徐々に移行していきます。

よくある失敗は、全職員に一斉導入して混乱を招くことです。まずフロアやユニット単位で先行導入し、成功事例を作ってから拡大する方が定着率が高まります。

ステップ3:大規模導入(初期投資300万円〜/所要期間6ヶ月〜1年)

見守りセンサーや介護ロボット、施設全体の統合システムを導入する段階です。利用者の安全確保と職員の負担軽減を同時に実現できます。

インカムやタブレットを導入した施設では、月105時間の省力化を達成し、ヒヤリハット報告が増えて事故件数が減少しました。

大規模導入では、現場からの意見集約が成功の鍵です。導入前に職員アンケートを実施し、実際に困っている業務を把握します。そのニーズに合った機器を選定することで、導入後の活用率が高まります。

ICT導入で失敗しないための3つのコツ

コツ1:現場主導で進める

上から押しつけられたシステムではなく、現場主導でシステム導入を進めた施設では定着率が高くなっています。導入検討チームに現場の介護職員を必ず含め、実際に使う人の声を反映させましょう。

トップダウンで決定すると、使いにくい製品を選んでしまったり、現場の運用ルールと合わなかったりする問題が起きます。

コツ2:サポート体制を確認する

ICTに不慣れなスタッフも多いため、電話やチャットでの問い合わせ対応が充実しているかがポイントです。オンライン研修や操作マニュアル、動画解説などの教育支援が整っている製品を選びましょう。

導入後3ヶ月間は、ベンダーの訪問サポートを受けられる契約にすると安心です。

コツ3:補助金を最大限活用する

厚生労働省は2019年からICT導入支援事業を実施しており、介護ソフトやタブレット端末、介護ロボットなどの購入費用が補助対象です。自治体によって補助率や上限額が異なるため、早めに確認しましょう。

補助金申請は年に一度のみの募集が多いです。春から秋にかけて申請期間が設けられるため、タイミングを逃さないよう情報収集が重要です。補助率は要件を満たせば4分の3、満たさない場合でも2分の1が一般的です。

よくある質問(FAQ)

Q1: ICT導入にどれくらいの費用がかかりますか?

小規模なシフト管理システムなら30〜50万円、介護記録システムとタブレット導入で100〜200万円、見守りセンサーを含む大規模導入で300〜500万円が目安です。補助金を活用すれば自己負担を半分以下に抑えられます。

Q2: 機械が苦手な高齢職員でも使えますか?

直感的に操作できる製品を選び、段階的な研修を行えば問題ありません。実際に60代の職員がタブレット記録を使いこなしている施設も多数あります。音声入力機能を活用すれば、文字入力が苦手な方でも記録作成が可能です。

Q3: 導入してどれくらいで効果が出ますか?

勤怠管理やシフト作成は1ヶ月以内に効果を実感できます。介護記録のデジタル化は並行運用期間を含めて3〜4ヶ月、見守りセンサーは設置後すぐに夜勤負担の軽減を感じられます。費用対効果が明確になるのは導入後6ヶ月が目安です。

Q4: 既存の介護ソフトと連携できますか?

異なるベンダーの介護ソフト間でもケアプランのデータ交換が可能になる標準仕様が整備されています。導入前に既存システムとの互換性を確認することをお勧めします。

Q5: 補助金申請は難しいですか?

申請書類の作成には1週間程度かかりますが、ベンダーが申請サポートをしてくれる場合も多いです。LIFEへの協力やセキュリティ宣言など、いくつかの要件を満たす必要があるため、早めに確認しましょう。

まとめ

介護現場のICT導入は、記録業務の時間削減、夜勤負担の軽減、情報共有の円滑化という3つの大きなメリットをもたらします。

成功の秘訣は、小規模から始めて段階的に拡大すること、現場主導で進めること、そして補助金を活用してコストを抑えることです。

まずは自施設の課題を洗い出し、それを解決できる小規模なICTツールの導入から始めてみましょう。一歩踏み出せば、働きやすい職場と質の高いケアの両立が実現します。

タイトルとURLをコピーしました