「また欠員が出た…このままでは現場が回らない」
介護職員不足は、2040年には57万人の不足が予測される深刻な社会課題です。しかし、諦める必要はありません。処遇改善加算の活用、ICT導入による業務効率化、職場環境の見直しなど、今すぐ始められる対策があります。
この記事では、厚生労働省のデータと成功事例をもとに、予算規模別・時間軸別に整理した10の実践的対策を解説します。大規模な投資をしなくても、職員定着率を高め、新規採用を成功させる方法を、介護現場で10年以上の実務経験を持つ筆者の視点から具体的にお伝えします。
人手不足に悩む施設管理者の方、採用担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
介護職員不足の現状|データで見る深刻度
厚生労働省の推計によると、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされる一方、現状のままでは約57万人が不足します。これは必要数の約21%に相当し、10名体制の現場に8名しか配置できない計算です。
さらに深刻なのが有効求人倍率です。介護関係職種の全国平均は3.97倍で、全職業平均1.16倍の3倍以上。都市部では7.65倍と、1人の求職者を8施設が奪い合う状況が続いています。
離職率にも課題があります。令和5年度の調査では介護職員の離職率は13.6%で、約7人に1人が1年以内に職場を離れています。採用しても定着しない悪循環が、人手不足をさらに加速させています。
介護職員不足の3大原因|なぜ人が集まらないのか
原因1:需要と供給のギャップ拡大
2025年問題により団塊世代が75歳以上となり、要介護認定者は2023年度末で約708万人に達しました。2000年の約256万人から2.8倍に増加する一方、生産年齢人口は減少を続けています。高齢者は増え、働き手は減る構造的な問題が根底にあります。
原因2:処遇面の課題
介護福祉士の平均年収は約330万円で、全産業平均440万円を大きく下回ります。体力的・精神的負担の大きさに対して賃金が見合わないと感じる職員が多く、特に若年層の離職につながっています。
原因3:職場環境と人間関係
離職理由の上位に常に挙がるのが「職場の人間関係」です。介護現場は利用者・家族・医療スタッフなど多様な人々と関わるため、コミュニケーションストレスが蓄積しやすい環境にあります。相談体制の不備や管理者の関わり方が不十分だと、優秀な人材も流出してしまいます。
【予算ゼロ】今すぐできる職員定着対策3選
対策1:感謝の言葉を習慣化する
ある地域のデイサービスでは「感謝カード」制度を導入し、離職率を半減させました。職員同士が日々の業務で感謝したことを紙に書いて渡すシンプルな取り組みですが、職場の雰囲気が劇的に改善。人間関係を理由に転職を考える職員がゼロになりました。
コストゼロで始められ、朝礼や終礼で実施するだけで効果が出ます。「ありがとう」の一言が、職員のモチベーションを支える力になります。
対策2:業務の棚卸しと役割分担の見直し
記録作成、会議、申し送りなど間接業務を洗い出し、重複や無駄を削減します。例えば「同じ内容を3つの書類に記入している」「30分の会議が毎日ある」といった非効率を見つけ、統合や削減を検討しましょう。
ある特別養護老人ホームでは、会議時間を半分にし、記録様式を統一したことで、1人あたり月10時間の業務削減に成功しています。
対策3:1on1ミーティングの導入
月1回15分でも、上司と部下が1対1で話す時間を設けることが重要です。業務の悩み、人間関係、キャリア相談など、職員が本音を話せる場を作ることで、問題が深刻化する前に対処できます。管理者向けの傾聴スキル研修も併せて実施すると、より効果的です。
【低予算】5万円以内でできる採用・育成対策3選
対策4:SNSでの職場風景発信
SNSで、職員の笑顔や日常業務の様子を投稿します。求人サイトに載せるだけでは伝わらない「リアルな職場の雰囲気」が若年層に響きます。スマホ撮影で十分なので、コストはほぼゼロ。採用広報として効果的です。
対策5:職場見学会の定期開催
月1回でも見学会を開催し、仕事内容を直接見てもらうことで、入職後のミスマッチを防げます。実際に利用者さんと触れ合う体験を組み込むと、介護の魅力が伝わりやすくなります。
対策6:チューター制度の導入
新人1人に対して経験者1人をマンツーマンで配置する制度です。教育マニュアルは必要なく、まずは「困ったら○○さんに聞く」という関係性を作るだけでOK。新人の不安が軽減され、早期離職を防げます。
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対策7:ICT・介護ソフトの導入
タブレット端末と介護記録ソフトを導入すれば、記録業務が劇的に効率化します。手書き記録の転記作業がなくなり、職員1人あたり月15〜20時間の業務削減が可能です。IT導入補助金を活用すれば、実質負担は大幅に軽減されます。
ある社会福祉法人では、ICT導入と併せて「週休3日制」を実現し、残業時間を大幅削減。職員のワークライフバランスが改善し、定着率が向上しました。
対策8:処遇改善加算の上位取得
2024年6月に一本化された「介護職員等処遇改善加算」の上位加算を取得すれば、職員の給与アップが実現します。加算率が引き上げられたことで、月額6,000円相当のベースアップが可能になりました。申請には昇給制度の明確化や研修機会の確保が必要ですが、これ自体が職場環境改善につながります。
対策9:ユニットケアの導入
10名程度を1ユニットとし、決まったスタッフがケアにあたる方式です。集団ケアに比べ職員同士の関係がフラットになり、人間関係のストレスが軽減されます。小規模施設でも段階的に導入できます。
対策10:外国人材受け入れの検討
特定技能、技能実習、EPA(経済連携協定)など、外国人材を受け入れる制度が整備されています。2025年4月からは訪問介護でも受け入れが可能になり、選択肢が広がりました。受け入れには日本語教育や文化理解のサポート体制が必要ですが、意欲の高い若い人材を確保でき、職場全体の活性化にもつながります。
【成功事例】人手不足を克服した施設の実践
ある介護老人保健施設では、キャリアアップ制度を整備し、入職3〜7年で「バイスリーダー」、その後「副主任」へと明確な昇格ルートを設定しました。プリセプター制度も導入し、新人教育を丁寧に実施。
結果、職員は自身の成長と将来像を具体的に描けるようになり、離職率が大幅に低下。資格取得助成金制度も設けたことで、職員のスキルアップ意欲が高まり、定着率向上により安定したサービス提供が可能になっています。
よくある質問(FAQ)
Q1:小規模施設でもできる対策はありますか?
A:予算ゼロの「感謝カード」や「1on1ミーティング」は規模に関わらず実践できます。小規模だからこそ、顔の見える関係性を活かした対策が効果的です。
Q2:処遇改善加算の申請は難しいですか?
A:2024年6月の制度改正で加算が一本化され申請が簡素化されました。社会保険労務士に相談しながら進めれば、多くの施設が取得可能です。
Q3:ICT導入の費用はどれくらいかかりますか?
A:タブレット端末と介護ソフトで初期費用30〜50万円程度。IT導入補助金を活用すれば実質負担は半額以下になります。
Q4:外国人材の受け入れは大変ですか?
A:日本語教育や生活サポートが必要ですが、監理団体や登録支援機関のサポートを受けられます。受け入れ実績のある施設に相談するとノウハウを学べます。
Q5:職員定着率を上げる一番の方法は何ですか?
A:「職場の人間関係改善」が最も重要です。感謝の言葉、1on1ミーティング、相談しやすい雰囲気づくりなど、コミュニケーションを重視した取り組みが効果的です。
まとめと次のアクション
介護職員不足は、複数の要因が絡み合う構造的課題ですが、今日から始められる対策は数多くあります。
重要な3つのポイント:
- 予算ゼロでも職員定着対策は可能(感謝カード、1on1、業務見直し)
- 処遇改善加算とICT導入で給与・環境を改善(国の制度を最大活用)
- 外国人材・多様な働き方で採用の幅を広げる(潜在人材の掘り起こし)
今日から始める3ステップ:
- 予算ゼロ対策を1つ選んで明日から実践
- 処遇改善加算の取得状況を確認し、上位加算への道筋を検討
- 3ヶ月以内にICT導入または職場見学会の開催を計画
人手不足は一朝一夕には解決しませんが、小さな改善の積み重ねが、職員が長く働きたいと思える職場を作ります。まずは一歩、今日から行動を起こしましょう。

