高齢者介護の人手不足はなぜ深刻?2040年57万人不足と今できる対策

福祉経営
  1. はじめに
  2. 高齢者介護の人手不足はどれほど深刻?【2025年・2040年問題】
    1. 数字で見る深刻度
    2. 2025年問題と2040年問題とは
      1. 2025年問題
      2. 2040年問題
    3. 高齢者介護の需給ギャップの推移
  3. 高齢者介護の人手不足が起きる「3つの深層要因」
    1. ①少子高齢化による「支える側」と「支えられる側」のアンバランス
      1. 要介護者の急増
      2. 介護人材の減少
    2. ②仕事内容に対する社会的評価・賃金の低さ
      1. 「3K」イメージ
      2. 賃金の低さ
      3. 社会的評価の低さ
    3. ③人間関係の問題と厳しい労働環境
      1. 離職理由の上位
      2. 厳しい労働環境
  4. 高齢者介護の人手不足が及ぼす3つの影響
    1. ①介護事業所への影響:経営難とサービス縮小
      1. 採用コスト高騰
      2. 人件費の上昇
      3. サービスの縮小・廃業
    2. ②介護職員への影響:負担増と離職の悪循環
      1. 一人当たりの業務量増加
      2. 心身の疲弊
      3. 離職の悪循環
    3. ③利用者・家族への影響:サービス利用困難と介護離職
      1. サービスが受けられない
      2. 家族の介護負担増加
      3. 利用者の尊厳とQOL(生活の質)の低下
  5. 今すぐできる7つの実践対策【国・事業所レベル】
    1. 【国レベル】政府が進める5つの取り組み
      1. ①介護職員の処遇改善
      2. ②多様な人材の確保・育成
      3. ③介護職員の定着支援と労働環境改善
      4. ④介護職のイメージ向上
      5. ⑤外国人材の受け入れ環境整備
    2. 【事業所レベル】今すぐ実践できる7つの対策
      1. ①処遇改善加算の最大活用
      2. ②ICT・介護ロボット導入による業務効率化
      3. ③柔軟な働き方の導入
      4. ④職場環境改善と人間関係の良好化
      5. ⑤キャリアパスの明確化
      6. ⑥未経験者・他業種からの転職者支援
      7. ⑦事業所の魅力発信(採用マーケティング)
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1: 高齢者介護の人手不足の最大の原因は何ですか?
    2. Q2: 2040年にはどれだけ介護職員が不足しますか?
    3. Q3: 介護職の給与は他業種と比べてどれくらい低いですか?
    4. Q4: 介護事業所が今すぐできる人手不足対策は?
    5. Q5: 外国人介護人材の受け入れ方法は?
  7. まとめ

はじめに

高齢者介護の人手不足は、少子高齢化による要介護者の急増と、低賃金・厳しい労働環境による離職率の高さが主因です。

日本では2040年に介護職員272万人が必要とされる中、約57万人(21%)が不足すると厚生労働省が試算しています。令和5年度の介護職員離職率は13.6%に達し、特に都心部では有効求人倍率が4.91倍と深刻な人材難が続いています。

この記事では、高齢者介護の人手不足の現状、3つの深層要因、事業所・職員・利用者への影響、そして今すぐ実践できる7つの対策を、最新データとともに解説します。


高齢者介護の人手不足はどれほど深刻?【2025年・2040年問題】

数字で見る深刻度

高齢者介護の人手不足は、以下のデータから明らかです。

  • 2040年:介護職員272万人必要 → 約57万人不足(21%)
  • 令和5年度介護職員離職率:13.6%(訪問介護員11.8%)
  • 大都市部の介護職有効求人倍率:4.91倍(全職種平均の約4倍)
  • 65歳以上人口:2025年に約3,677万人(総人口の約30%)
  • 75歳以上人口:2040年にピーク到達

出典:厚生労働省「介護人材確保の現状について」、介護労働安定センター「介護労働実態調査」

2025年問題と2040年問題とは

2025年問題

団塊世代(1947~1949年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護需要が爆発的に増加する社会課題です。

  • 75歳以上人口:約2,180万人(2025年)
  • 要介護認定者:約690万人(2025年予測)
  • 必要な介護職員:約243万人(2023年比で約28万人増)

2040年問題

2040年頃に65歳以上の高齢者人口がさらに増加し、2025年以上に深刻な人材不足が顕在化します。

  • 65歳以上人口:全人口の約35%(2040年)
  • 85歳以上人口:中心的に増加
  • 生産年齢人口(15~64歳):大幅減少
  • 社会全体の労働力不足、国力低下が懸念される

出典:政府「高齢社会白書」

高齢者介護の需給ギャップの推移

実際に要介護認定者数は急増しています。

  • 2018年10月:655.8万人
  • 2040年:988万人(ピーク予測)
  • 3年間(2015~2018年)で36万人増加

一方、介護職員数の増加は需要に追いついていません。

  • 2000年:54.9万人
  • 2016年:183.3万人
  • 2016年時点で約7万人不足
  • 2020年までに26万人、2025年までに55万人の追加確保が必要

出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告」


高齢者介護の人手不足が起きる「3つの深層要因」

高齢者介護の人手不足には、表層的な原因だけでなく、構造的・本質的な要因が重なっています。

①少子高齢化による「支える側」と「支えられる側」のアンバランス

要介護者の急増

  • 2018年:655.8万人 → 2040年:988万人(約1.5倍)
  • 特に85歳以上人口が中心的に増加
  • 医療の高度化により、重度要介護者も増加

介護人材の減少

  • 生産年齢人口(15~64歳)の減少:ほぼ全ての地域で減少
  • 少子化の加速:出生数80万人割れ(2022年)
  • 介護職を担う若年層の絶対数が減少

結果として、支える側(働き手)が減少し、支えられる側(高齢者)が増加するアンバランスが深刻化しています。

②仕事内容に対する社会的評価・賃金の低さ

「3K」イメージ

高齢者介護は「きつい、汚い、危険」の「3K」イメージが根強く、若年層の就職先として敬遠されがちです。

賃金の低さ

介護職の平均月収は、他業種と比較して著しく低い水準です。

  • 社会保険・社会福祉・介護サービス:249,800円
  • 医療業:349,300円(約10万円高い)
  • サービス業:420,600円(約17万円高い)

出典:総務省統計局「賃金構造基本統計調査」

この賃金格差が、介護職への就職・転職の大きな障壁となっています。

社会的評価の低さ

「誰にでもできる仕事」という誤った認識が社会に根強く、専門職としての評価が不十分です。

③人間関係の問題と厳しい労働環境

離職理由の上位

介護職の離職理由(複数回答)は以下の通りです。

  1. 人間関係の問題:20.0%
  2. 結婚・出産・育児:18.3%
  3. 法人・事業所の理念や運営への不満:17.8%
  4. 収入が少ない:15.0%

出典:公益財団法人 介護労働安定センター調査

人間関係の問題が最多であり、職場環境の改善が急務です。

厳しい労働環境

  • 身体的負担:移乗介助、入浴介助など体力を要する作業
  • 精神的負担:認知症ケア、利用者・家族とのコミュニケーション、夜勤・オンコール対応
  • 長時間労働:人手不足により一人当たりの業務量増加
  • ワークライフバランスの困難:シフト勤務、休暇取得の難しさ

これらの要因が重なり、高い採用難と高い離職率という悪循環を生んでいます。


高齢者介護の人手不足が及ぼす3つの影響

①介護事業所への影響:経営難とサービス縮小

採用コスト高騰

有効求人倍率4.91倍(大都市部)の環境下、採用には多大なコストがかかります。

  • 求人広告費の増加
  • 紹介会社への手数料(年収の20~30%)
  • 採用活動の長期化

人件費の上昇

人材確保のため、給与水準を引き上げる必要がありますが、介護報酬は固定されているため、経営を圧迫します。

サービスの縮小・廃業

人手不足により、以下の事態が発生しています。

  • 新規利用者の受け入れ停止
  • 提供サービスの縮小
  • 事業所の廃業(特に小規模事業所)

実例:訪問介護事業所の倒産は2024年に67件と過去最多を記録。

②介護職員への影響:負担増と離職の悪循環

一人当たりの業務量増加

人手不足により、既存職員の負担が増大します。

  • 利用者数増加に対応できず、一人当たりのケア時間が短縮
  • 残業時間の増加
  • 休暇取得の困難

心身の疲弊

過重労働により、心身の健康を損なう職員が増加します。

  • 腰痛、膝痛などの身体的疾患
  • うつ病、適応障害などの精神疾患
  • バーンアウト(燃え尽き症候群)

離職の悪循環

職員の離職 → 残った職員の負担増 → さらなる離職 → 人手不足の深刻化

この悪循環を断ち切るには、新規採用と定着支援の両輪が必要です。

③利用者・家族への影響:サービス利用困難と介護離職

サービスが受けられない

人手不足により、以下の事態が発生しています。

  • 待機者の増加:特別養護老人ホームの待機者は全国で約29万人(2021年)
  • 退院後の受け入れ先なし:病院から退院を促されても、在宅サービスが確保できない
  • 緊急時対応の困難:急変時の訪問、ショートステイの緊急利用ができない

家族の介護負担増加

介護サービスが利用できないため、家族が介護を担う必要があります。

  • 介護離職:年間約10万人が介護のために離職(総務省「就業構造基本調査」)
  • 介護うつ、介護疲れ:家族の心身の健康悪化
  • 介護殺人・心中:極端なケースも報道される

利用者の尊厳とQOL(生活の質)の低下

人手不足により、十分なケアが提供できず、利用者の尊厳や生活の質が低下します。

  • 個別ケアの不足(画一的な対応)
  • コミュニケーション時間の減少
  • 事故・トラブルのリスク増加

今すぐできる7つの実践対策【国・事業所レベル】

高齢者介護の人手不足対策を、国レベル事業所レベルに分けて解説します。

【国レベル】政府が進める5つの取り組み

①介護職員の処遇改善

処遇改善加算制度により、給与水準の引き上げを推進しています。

  • 2019年10月~:総額2,000億円を投じた処遇改善
  • 平成21年度~令和元年度:月額平均5.7万円改善
  • 令和3年度介護報酬改定:+0.70%の処遇改善

ベースアップ等支援加算:令和4年10月から、介護職員の収入を3%程度(月額平均9,000円)引き上げる新たな加算を創設。

出典:厚生労働省「介護職員の処遇改善について」

②多様な人材の確保・育成

幅広い層からの人材確保を支援しています。

  • 修学資金貸付制度:介護福祉士養成施設の学生への貸付(卒業後一定期間勤務で返済免除)
  • 未経験者向け研修:介護職員初任者研修の受講支援
  • 他業種からの転職支援:職業訓練の拡充
  • 中高年の活用:定年後のシニア人材、主婦層の再就職支援

③介護職員の定着支援と労働環境改善

離職率を下げるため、働きやすい環境整備を支援しています。

  • 介護ロボット・ICT導入支援:記録業務の効率化、移乗介助の負担軽減
  • 腰痛予防対策:福祉用具(リフト、スライディングシート等)の導入支援
  • メンタルヘルス対策:相談窓口の設置、カウンセリング支援
  • 多様な働き方の推進:短時間正社員、週3日勤務など柔軟な勤務形態

④介護職のイメージ向上

社会的認知度を高め、若年層の就職先として魅力を発信しています。

  • 介護職魅力発信事業:全国でのPRイベント、SNS発信
  • 学校教育での介護理解促進:中学・高校での職場体験、キャリア教育
  • メディアでの好事例紹介:やりがいやキャリアパスを持つ介護職員の特集

⑤外国人材の受け入れ環境整備

外国人介護人材の受け入れを推進しています。

  • 特定技能ビザ:介護分野での外国人労働者受け入れ
  • EPA(経済連携協定):インドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者受け入れ
  • 技能実習制度:介護職種の追加
  • 日本語教育・生活支援:外国人材の定着支援

【事業所レベル】今すぐ実践できる7つの対策

①処遇改善加算の最大活用

国の処遇改善制度を最大限活用し、給与をアップします。

未取得の事業所は今すぐ申請を検討しましょう。

  • 処遇改善加算Ⅰ~Ⅴ
  • 特定処遇改善加算
  • ベースアップ等支援加算

②ICT・介護ロボット導入による業務効率化

記録業務、情報共有、移乗介助の負担を大幅に軽減します。

導入例
・クラウド型介護記録ソフト:手書き記録からタブレット入力へ(記録時間1/3に短縮)
・見守りセンサー:夜間巡回の負担軽減
・移乗支援ロボット:腰痛予防、介助者の身体負担軽減
・チャットツール:スタッフ間の迅速な情報共有

助成金
・ICT導入支援事業:都道府県により最大100万円補助
・介護ロボット導入支援事業:1台当たり最大30万円補助

③柔軟な働き方の導入

多様な働き方を提供し、幅広い人材を確保します。

  • 短時間正社員制度:週20~30時間勤務
  • 曜日固定勤務:「月・水・金のみ」など
  • 夜勤専従:高時給の夜勤専門職員
  • 在宅勤務(リモートワーク):記録作業、ケアプラン作成等を自宅で実施

④職場環境改善と人間関係の良好化

離職理由第1位の「人間関係」を改善します。

  • 定期的な1on1面談:管理者と職員の個別面談(月1回)
  • チームビルディング研修:職員間の信頼関係構築
  • ハラスメント防止:相談窓口の設置、研修実施
  • 評価制度の透明化:昇給・昇格基準の明確化

⑤キャリアパスの明確化

将来像を見せることで、長期的なモチベーションを維持します。

キャリアパス例
・1~3年目:介護職員初任者研修 → 実務者研修
・4~5年目:介護福祉士取得 → リーダー職
・6~10年目:ケアマネジャー、サービス提供責任者、管理者

資格取得支援
受験料・受講料の補助
勤務時間中の研修受講許可
合格報奨金制度

⑥未経験者・他業種からの転職者支援

門戸を広げ、多様な人材を受け入れます。

  • プリセプター制度:経験豊富な職員が新人をマンツーマン指導
  • 段階的な独り立ち支援:最初は見学・補助、徐々に単独業務へ
  • 介護職員初任者研修の受講支援:費用負担、勤務時間調整
  • 入職後フォロー面談:1週間、1ヶ月、3ヶ月後に実施

⑦事業所の魅力発信(採用マーケティング)

知名度を上げ、応募者を増やします。

  • ホームページの充実:職員インタビュー、1日の流れ、職場環境紹介
  • SNS活用:SNS各種でての日常発信
  • 求人サイトの工夫:写真・動画を多用、待遇を明確に記載
  • 地域イベント参加:介護の日イベント、就職フェア出展
  • リファラル採用(紹介採用):職員からの紹介に報奨金

よくある質問(FAQ)

Q1: 高齢者介護の人手不足の最大の原因は何ですか?

A: 少子高齢化による要介護者の急増(2018年656万人→2040年988万人)と、低賃金・厳しい労働環境による離職率の高さ(13.6%)が主因です。支える側(働き手)が減少し、支えられる側(高齢者)が増加するアンバランスが深刻化しています。

Q2: 2040年にはどれだけ介護職員が不足しますか?

A: 2040年には介護職員272万人が必要とされる中、約57万人(21%)が不足すると厚生労働省が試算しています。生産年齢人口の減少と85歳以上人口の増加により、社会全体の労働力不足が加速します。

Q3: 介護職の給与は他業種と比べてどれくらい低いですか?

A: 介護職の平均月収は約249,800円で、医療業(349,300円)より約10万円、サービス業(420,600円)より約17万円低い水準です。ただし、処遇改善加算により、平成21年度から令和元年度で月額平均5.7万円改善されています。

Q4: 介護事業所が今すぐできる人手不足対策は?

A: ①処遇改善加算の最大活用(給与アップ)、②ICT・介護ロボット導入(業務効率化、助成金活用)、③柔軟な働き方導入(短時間正社員、曜日固定)、④職場環境改善(1on1面談、ハラスメント防止)が有効です。特にICT導入は記録時間を1/3に短縮できます。

Q5: 外国人介護人材の受け入れ方法は?

A: ①特定技能ビザ(介護分野)、②EPA(経済連携協定、インドネシア・フィリピン・ベトナム)、③技能実習制度の3つのルートがあります。日本語教育や生活支援が重要で、厚生労働省の支援制度を活用できます。


まとめ

高齢者介護の人手不足は、2040年に約57万人(21%)規模に達すると予測され、少子高齢化、低賃金・厳しい労働環境、人間関係の問題という3つの深層要因が絡み合っています。

この課題は、介護事業所の経営難、職員の負担増と離職、利用者・家族のサービス利用困難という3つの悪影響を及ぼしています。

今すぐできる対策
処遇改善加算の最大活用(給与アップ)
ICT・介護ロボット導入(業務効率化、助成金活用)
柔軟な働き方導入(短時間正社員、曜日固定)
職場環境改善(1on1面談、キャリアパス明確化)

介護事業所の経営者・管理者の皆様は、国の支援制度を最大限活用しながら、「今すぐできる対策」から着手し、2025年・2040年問題に備えましょう。

参考資料
厚生労働省「介護人材確保の現状について」
介護労働安定センター「介護労働実態調査」
厚生労働省「介護職員の処遇改善について」
政府「高齢社会白書」

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