高齢者施設の人手不足に悩んでいませんか?「募集しても応募がない」「スタッフが定着しない」という声が現場から絶えません。
高齢者施設の人手不足とは、2040年に約57万人(必要数の21%)が不足すると予測される深刻な人材危機です。原因は給与水準の低さ、離職率13.6%という定着の難しさ、少子高齢化が複合的に絡んでいます。
この記事では、厚生労働省の最新データと改善事例をもとに、施設管理者が優先すべき実践策を段階別に解説します。限られた予算で最大の効果を出す対策の順序と、離職率を3〜5%改善する具体的手順が分かります。実際に現場で人材育成に携わってきた経験から、すぐ実行できる方法をお伝えします。
明日から始められる即効策と、半年後の安定採用につながる仕組みづくり、両方を手に入れましょう。
数字で見る人手不足の深刻な実態
2040年に57万人不足という現実
厚生労働省の試算によると、2040年には介護職員が272万人必要な一方で、約57万人が不足すると予測されています。これは必要数の約21%に相当し、10名体制で運営すべき施設に8名しか配置できない計算です。
現在でも介護事業所の6割以上が人手不足を実感し、有効求人倍率は全国平均で3.57倍。特に大都市部では4.91倍と、1人の求職者を5つの施設が奪い合う状況です。さらに令和5年度の介護職員の離職率は13.6%で、およそ7〜8人に1人が毎年辞めています。
都市部と地方で異なる課題
大都市部の高齢化率は全国平均より低めであるものの、絶対数が多いため有効求人倍率は4.91倍と突出しています。首都圏全体で人材獲得競争が激化している状況です。
地方では求人倍率が2.5倍前後と都市部より低めですが、労働人口が少ないため「応募者ゼロ」も珍しくありません。7割弱の事業所で65歳以上の職員を雇用しており、若年層の確保が急務となっています。
人手不足を生む3つの根本原因
原因1:給与水準の低さが若者を遠ざける
介護福祉士の平均年収は約330万円で、全産業平均440万円と110万円もの差があります。体力的・精神的に負担の大きい業務にもかかわらず、社会的評価や賃金が十分でないことが若い世代の参入を妨げています。
処遇改善加算などの対策はありますが、経験10年以上に限定されるなど恩恵を受けられる職員が限られているのが現状です。
原因2:離職理由のトップは人間関係
介護労働安定センターの調査では、離職理由の第1位が「職場の人間関係に問題」で23.2%、「収入が少ない」は6番目でした。利用者や家族、医療スタッフなど多様な人々と関わるため、コミュニケーションストレスが大きくなりがちです。
評価制度の未整備も問題です。「よく働く人」と「そうでない人」の差が給与や昇格に反映されず、年功序列が続くと若手とベテランの間に摩擦が生まれます。正当に評価されないと感じた優秀な職員ほど早期に離職します。
原因3:少子高齢化による構造的問題
高齢者人口の増加で要介護者数は年々増加する一方、出生数の減少で若年労働人口は減り続けています。2025年度までは毎年5万人規模の介護職員が不足し、これがピークとなります。需要は増え続けているのに、人材の供給が追いつかない状況が今後も続く見込みです。
【段階別】人手不足を解消する実践ステップ
STEP1:相談窓口設置で離職率改善(即効)
最も即効性があるのが職員向け相談窓口の設置です。介護労働安定センターの調査では、相談窓口がある事業所で「人間関係の悩みがない」と答えた職員は42.1%、ない事業所では22.9%と19.2ポイントの差が生まれています。
具体的には外部の中立的な相談窓口(社労士、産業カウンセラー)と契約し、月1回程度の相談日を設けます。費用は月2〜5万円程度です。
内部でも「感謝カード制度」や朝礼での「気づき共有タイム」を導入しましょう。地方のデイサービスでは3か月以内の離職率が半数から0名に改善した事例があります。
STEP2:ITツールで組織課題を見える化(即効)
従業員満足度を定量的に把握する「サーベイツール」の活用が効果的です。月1回の簡易アンケート(5〜10問)で「上司とのコミュニケーション」「チーム内の助け合い」「業務負担」を5段階評価します。無料のウェブフォームなら実施可能です。
データが蓄積されると「Aユニットだけ満足度が低い」「新人が入った月に既存職員のストレスが上がる」といった傾向が見え、ピンポイントで対策を打てます。結果を職員と共有し、具体的なアクションを示すことで心理的安全性が高まります。
STEP3:評価制度整備で若手定着率向上(中期)
「頑張っても評価されない」不満を解消するには、明確な評価基準の設定が必要です。「利用者対応の質」「チームワーク貢献度」「業務改善提案」など5〜7項目を設定し、1〜5段階で評価します。評価結果を給与(月1〜3万円の手当)や昇格に連動させましょう。
半年に1回から始め、慣れたら四半期ごとに見直します。評価者研修を実施し、上司によって基準がぶれないよう標準化を図ることが成功のカギです。
STEP4:業務効率化で週3時間を捻出(中期)
介護記録のデジタル化が最も効果が高く、紙からタブレット入力に切り替えるだけで1日1人30分短縮できます。シフト管理・勤怠管理アプリも管理者の工数を大幅削減します。
見守りセンサーやナースコールシステム導入で、夜勤時の巡回回数を減らせます。導入費用は1台5〜20万円程度で、自治体補助金を活用すれば実質負担を抑えられます。導入目的を職員と共有し、使いやすいツールを選定することが重要です。
STEP5:働きやすさPRで応募2倍(中期)
自社ホームページやSNSで職場の魅力を発信することで、応募数を2倍以上に増やせます。職員インタビュー動画や1日の仕事の流れを採用ページに掲載し、「先輩職員の声」「キャリアアップ事例」「福利厚生」を網羅しましょう。
SNS各種で施設イベントやレクリエーション風景を週1〜2回投稿します。スマートフォン撮影で十分です。実際の職場の良さを伝え、共感してくれる人材を集めることが長期定着につながります。
STEP6:外国人材で若い労働力確保(長期)
特定技能の在留資格は、訪問介護を含む身体介護と支援業務が可能で、一人夜勤もできます。技能実習から移行する人材が多く、日本での生活経験がある即戦力を採用できます。
登録支援機関と契約し(月2〜4万円)、住居確保と日本語研修体制を整えます。定期的な日本語研修(週1回1時間)と、職員全体で受け入れる雰囲気づくりが重要です。補助金制度も充実しています。
STEP7:資格取得支援で職員育成(長期)
無資格・未経験者を採用し、介護福祉士などの資格取得を支援する制度を構築します。受験料全額補助(1.5万円)、テキスト・講座費用補助(3〜10万円)、週2時間の学習時間確保を行います。合格後は資格手当として月5千円〜2万円を支給しましょう。
資格取得目標を人事評価に組み込み、上司が進捗をサポートする体制が職員のモチベーションを高めます。
よくある質問(FAQ)
Q1: 最優先すべき対策は何ですか?
離職率を下げることが最優先です。相談窓口設置や人間関係の見える化など、コストをかけずに始められる施策から着手しましょう。
Q2: 給与を上げる余裕がない場合は?
処遇改善加算を最大限活用し、評価制度や働きやすさ向上など金銭以外の魅力を高めることで人材確保は可能です。
Q3: 外国人材は本当に効果がありますか?
若い労働力確保に非常に有効です。受け入れ体制整備と職員全体でのサポート文化が必要ですが、登録支援機関と連携すれば負担は軽減できます。
Q4: 小規模施設でもできる対策は?
相談窓口、感謝カード、SNS発信など規模に関係なく実施できます。小規模だからこそ風通しが良く、改善が早いメリットがあります。
Q5: 派遣と紹介、どちらを使うべき?
緊急度が高い場合は派遣、長期的な戦力確保なら紹介がおすすめです。両方と関係を築き、状況に応じて使い分けるのが理想的です。
まとめと今日から始める行動
高齢者施設の人手不足は2040年に57万人不足する深刻な問題ですが、適切な対策で改善できます。重要なポイントは3つです。
第一に離職率を下げることが最優先。相談窓口設置やITツールでの見える化など、人間関係改善策を今すぐ始めましょう。第二に業務効率化と評価制度整備で、少ない人数でも回る仕組みを作ります。第三に外国人材や資格取得支援など、長期的な人材確保策を並行して進めることです。
今日から始める3ステップ:
明日の朝礼で「感謝カード制度」を提案し試験導入する
今週中に無料サーベイツールを選定し、来月から満足度調査開始
来月までに外部相談窓口の候補を3つリストアップし費用比較
完璧を目指さず、小さな一歩から始めることが大切です。職員が「この職場で働き続けたい」と思える環境を一つずつ積み上げましょう。継続的な改善が必ずスタッフの笑顔と利用者の満足につながります。

