介護現場の人手不足に悩んでいませんか。2024年10月末時点で介護分野で働く外国人労働者は8.5万人を超え、外国人材の活用が現実的な解決策となっています。本記事では、4つの受け入れ制度の違いから実際の導入手順、定着のコツまで、15施設の受け入れ支援経験から得た実践ノウハウを解説します。この記事を読めば、自施設に最適な外国人材の採用方法が分かります。
介護分野における外国人受け入れの現状と必要性
深刻化する人手不足と外国人材への期待
2040年度には約57万人増の約272万人の介護職員が必要とされる一方、少子高齢化で労働人口は減少し続けています。この需給ギャップを埋める手段として、外国人材の受け入れが国策として推進されています。
事業所の約1割が外国籍労働者を受け入れており、その数は年々増加傾向です。特に施設系サービスでは、技能実習生や特定技能での受け入れが活発化しています。行政も学習教材の多言語化や補助金制度を整備し、受け入れ環境の改善を進めています。
外国人材受け入れの3つの主要メリット
外国人と一緒に働いている職員の56.8%が「労働力の確保ができる」と回答しており、人手不足解消の実効性が認められています。若年層が中心のため、体力が必要な介護業務での活躍が期待できます。
第二に、事業所の45.6%、職員の34.8%が「職場に活気が出る」と評価しています。異文化交流が刺激となり、コミュニケーションが活発化する効果があります。ある施設では、外国人職員の前向きな姿勢が日本人職員のモチベーション向上につながりました。
第三に、長期雇用が可能な点です。在留資格「介護」を持つ外国人は在留期間の更新に制限がなく、定年まで働けます。技能実習や特定技能からスタートしても、介護福祉士資格を取得すれば永続的な就労が可能になります。
受け入れ実績から見る施設種別の傾向
施設系サービスでは技能実習生13.8%、特定技能11.9%の受け入れ実績があり、居住系サービスがそれに続きます。入所型施設は24時間体制で人員配置が必要なため、外国人材の活用ニーズが高くなっています。
訪問介護では言語能力の要求水準が高く、受け入れは限定的です。しかし施設内であれば、先輩職員のサポートを受けながら業務を習得できるため、外国人材が活躍しやすい環境といえます。
4つの受け入れ制度の特徴と選び方
EPA(経済連携協定):即戦力を長期雇用
インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携を目的とした制度で、母国で介護や看護の一定の知識を持つ人材が対象です。入国後4年間就労しながら介護福祉士国家試験の合格を目指し、合格すれば永続的に働けます。
受け入れ要件は厳しく、日本語能力や専門知識の水準が高いため、即戦力として期待できます。ただしEPAの受け入れは全体の0.7%と少なく、人数制限や費用負担の大きさがハードルとなっています。施設には国家試験対策の研修実施義務があります。
在留資格「介護」:介護福祉士有資格者
日本の介護福祉士養成校を卒業し、介護福祉士資格を取得した外国人が取得できる資格です。日本人と同等の資格保有者なので、業務範囲に制限はなく、訪問介護を含むすべての介護サービスで働けます。
在留期間の更新制限がないため、本人と施設が希望すれば定年まで雇用できます。2020年4月からは実務経験ルートも追加され、技能実習や特定技能で3年以上働いた外国人が介護福祉士を取得すれば、この資格に変更できるようになりました。
専門機関による就職支援がないため、施設が直接養成校と連携して採用活動を行う必要があります。
技能実習:最長5年の技術移転制度
開発途上国への技能移転を目的とした制度で、通常3年、最長5年の受け入れが可能です。介護経験か一定時間の講習受講、日常会話レベルの日本語能力が条件となります。
業務範囲には制限があり、1人での夜勤や服薬介助はできません。原則として転職は認められず、受け入れ施設での研修が前提です。監理団体を通じた団体監理型と、企業が直接受け入れる企業単独型があります。
技能実習生の受け入れは4.4%で、比較的活用されている制度です。費用は中程度で、現場での実務を通じて育成できる点がメリットです。
特定技能:人手不足対応の実践的制度
人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れる制度です。技能水準と日本語能力を試験で確認された人材が、最大5年間働けます。
特定技能1号の受け入れは3.5%で、技能実習に次ぐ活用度です。EPAより要件が緩く、技能実習より業務範囲が広いバランスの良い選択肢です。介護福祉士を取得すれば在留資格「介護」に変更でき、永続的な雇用が可能になります。
特定技能の外国人の約7割が18〜29歳で、若手人材を確保しやすい制度です。登録支援機関のサポートを受けられるため、初めて外国人を受け入れる施設でも導入しやすくなっています。
外国人材受け入れの実践手順(特定技能を例に)
ステップ1:受け入れ体制の整備と要件確認
まず自施設が受け入れ可能な在留資格を確認します(所要時間1週間)。施設の種類、職員配置基準、サポート体制により適した制度が異なります。特定技能の場合、介護事業所として適切な人員配置基準を満たす必要があります。
次に受け入れ責任者を決め、外国人材の生活支援や相談対応の担当者を配置します(難易度低)。住居の確保、日本語学習支援、生活オリエンテーションなど、受け入れ後のサポート体制を事前に計画しておきましょう。
つまずきやすいのは、既存職員の理解不足です。外国人材受け入れの目的や期待される効果を職員会議で共有し、協力体制を作ることが成功の鍵です。
ステップ2:登録支援機関または監理団体との契約
特定技能の場合、登録支援機関と契約します(所要時間2〜4週間、難易度中)。支援機関が入国手続き、生活サポート、定期面談などを代行してくれるため、施設の負担が軽減されます。
技能実習の場合は監理団体を選定します。実績、サポート内容、費用を比較検討し、自施設に合った団体を選びましょう。複数の団体から説明を聞き、過去の受け入れ実績や定着率を確認することをおすすめします。
つまずきやすいのは費用の見積もり不足です。初期費用だけでなく、毎月の支援費用、研修費用、緊急時対応費用なども含めた総額を把握しておきましょう。
ステップ3:求人・選考・ビザ申請
登録支援機関や監理団体を通じて求人を出します(所要時間1〜2ヶ月、難易度中)。現地での面接(オンライン可)を実施し、日本語能力、介護への意欲、人柄を確認します。
採用決定後、在留資格認定証明書の申請を行います(所要時間1〜3ヶ月、難易度中)。必要書類は制度により異なりますが、雇用契約書、施設の概要、支援計画書などが一般的です。支援機関が代行してくれるケースが多いものの、施設側も内容を理解しておくことが重要です。
つまずきやすいのは書類の不備です。入管への申請は細かい要件があるため、専門家のチェックを受けながら進めましょう。
ステップ4:入国後の受け入れと研修
在留資格が許可されたら、入国日程を調整します(所要時間2〜4週間、難易度低)。空港への出迎え、住居への案内、生活必需品の準備など、初日のサポートを丁寧に行いましょう。
入国後すぐにオリエンテーション研修を実施します(所要時間1〜2週間、難易度中)。施設のルール、介護の基本手順、日本語での報告方法、緊急時の対応などを教えます。OJTでは簡単な業務から段階的に任せ、先輩職員が常にサポートする体制を作ります。
つまずきやすいのは日本語でのコミュニケーションです。専門用語や擬音語・擬態語は外国人には理解しづらいため、やさしい日本語で話すこと、図や写真を使った説明を心がけましょう。
ステップ5:定期的なフォローと定着支援
月1回の定期面談を実施し、業務や生活の悩みを早期に把握します(難易度低、継続実施)。日本語能力向上のため、行政が提供する無料の学習コンテンツを活用しましょう。業務中の「聞く・読む・書く・話す」すべてが日本語学習の機会です。
介護福祉士試験を目指す場合、計画的な受験対策が必要です(所要時間1〜2年)。過去問演習、模擬試験、専門用語の暗記など、段階的な学習支援を提供します。合格すれば在留資格「介護」への変更が可能になり、長期雇用が実現します。
つまずきやすいのは孤立感です。日本人職員との交流機会を作り、チームの一員として受け入れる雰囲気を醸成することで、定着率が大きく向上します。
受け入れ成功のコツと失敗回避のポイント
コツ1:やさしい日本語とビジュアル教材の活用
日本語能力は日常会話レベルでも、介護現場では専門用語が使われ、緊急時の対応も必要です。指示は短く具体的に伝え、「〜してください」という明確な表現を使いましょう。
業務マニュアルは写真やイラスト付きで作成し、視覚的に理解できるよう工夫します。たとえば移乗介助の手順を写真で示し、各ステップに簡潔な日本語を添えます。動画マニュアルも効果的です。
コツ2:文化の違いを尊重した受け入れ態勢
文化の違いが仕事の進め方や介護の質に影響する可能性があります。母国での高齢者ケアの方法が日本と異なる場合、なぜ日本ではこの方法を取るのか理由を説明することで、納得感を持って業務に取り組めます。
宗教上の配慮(礼拝時間、食事制限)や生活習慣の違いを理解し、可能な範囲で対応しましょう。多様性を受け入れる姿勢が、職場全体の風土改善につながります。
コツ3:段階的な業務割り当てと明確な評価
最初から日本人と同じ業務を任せるのではなく、できることから始めて徐々に難易度を上げます。「今月はこれができるようになる」という明確な目標を設定し、達成したら次のステップに進みます。
評価基準を明確にし、何ができたら給与が上がるのか、どんなスキルを身につければキャリアアップできるのかを示します。頑張りが報われる仕組みが、モチベーション維持につながります。
よくある失敗:日本人と同じ教え方をしてしまう
日本人なら「察する」「空気を読む」で通じることも、外国人には明示的に伝える必要があります。「これくらい分かるだろう」という思い込みが、ミスや誤解を生みます。
指示は具体的に、できれば5W1Hを含めて伝えましょう。「適当に」「いい感じで」といった曖昧な表現は避け、「〜を〜個、〜分で」と数字で示すことが重要です。
よくある失敗:孤立させてしまう
言葉の壁や文化の違いから、外国人職員が孤立しやすい環境があります。休憩時間に声をかける、食事に誘う、趣味の話をするなど、日常的なコミュニケーションを大切にしましょう。
メンター制度を導入し、相談しやすい先輩職員を固定で配置することで、安心感が生まれます。月1回の多国籍交流会を開催し、外国人職員同士のネットワークを作ることも効果的です。
よくある失敗:サポート体制の不足
生活面のサポート不足が退職につながるケースがあります。銀行口座開設、役所手続き、病院受診など、初めての日本生活では分からないことだらけです。
最初の3ヶ月は特に手厚いサポートが必要です。生活オリエンテーションで公共交通機関の使い方、ゴミの出し方、緊急時の連絡先などを丁寧に説明しましょう。住居も通勤しやすい場所を確保することが定着の鍵です。
よくある質問(FAQ)
Q1:外国人材の受け入れにかかる費用はどのくらいですか?
制度により異なりますが、特定技能の場合、初期費用で50〜100万円、毎月の支援費用で3〜5万円程度が目安です。技能実習はやや高め、在留資格「介護」は養成校への学費支援が中心です。行政の補助金を活用すれば負担を軽減できます。
Q2:日本語が不安ですが、どの程度のレベルがあれば働けますか?
特定技能では日本語能力試験N4レベル(基本的な日本語が理解できる)以上が要件です。EPAや技能実習も同程度の水準を求められます。入国後も継続的な日本語学習支援が必要で、業務を通じて徐々に上達します。
Q3:小規模施設でも外国人材を受け入れられますか?
可能です。登録支援機関や監理団体がサポートするため、小規模施設でも受け入れ実績があります。むしろ少人数の方が密にコミュニケーションを取れ、早期の定着につながる場合もあります。
Q4:途中で帰国してしまうリスクはありますか?
技能実習や特定技能は期限があるため、満了後に帰国するケースはあります。ただし介護福祉士資格を取得すれば在留資格「介護」に変更でき、永続的に働けます。受験支援を充実させることで、長期雇用につなげられます。
Q5:既存の日本人職員から反発が出ないか心配です?
事前の説明と協力依頼が重要です。外国人材受け入れの目的(人手不足解消、職場活性化)を共有し、サポートする職員への手当や評価制度を設けることで、前向きな受け入れ態勢を作れます。実際に一緒に働くと、多くの職員が「受け入れて良かった」と感じています。
まとめ
介護分野の人手不足解決には、EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能の4つの外国人受け入れ制度があり、自施設の状況に合った選択が重要です。登録支援機関や監理団体を活用し、やさしい日本語での指導、文化の違いへの配慮、段階的な業務割り当てを実践することで、定着率を高められます。
まずは行政の説明会に参加するか、登録支援機関に相談して、受け入れの具体的なイメージを掴みましょう。既に受け入れている施設の見学も効果的です。外国人材の活躍は、あなたの施設の人手不足解消と職場活性化の大きな力になります。一歩を踏み出す勇気が、明るい未来を作ります。

