医療・介護業界で「求人を出しても応募が来ない」「採用しても定着しない」と悩んでいませんか。2026年度には介護職員が28万人、2040年度には57万人不足すると厚生労働省が発表し、人材確保の競争は年々激化しています。
本記事では、厚労省の最新データと採用成功事業所の実例をもとに、人手不足の本質的な原因と、明日から始められる5つの実践策を解説します。大規模な投資なしで離職率を下げ、採用力を高める具体的方法を、現場経験15年の介護人材コンサルタントの知見から紹介します。
記事を読み終える頃には、自施設の状況に合わせた優先的な改善策が明確になり、2026年問題に備えた人材戦略の第一歩を踏み出せるでしょう。
医療・介護の人材不足はどれほど深刻なのか
2026年28万人、2040年57万人の不足が確定
厚生労働省の第9期介護保険事業計画によると、介護職員の必要数は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人に達します。2022年度の介護職員数は約215万人のため、わずか3年後には28万人、18年後には57万人もの人材が不足する計算です。
この数字は介護保険サービスの需要予測に基づいており、高齢者人口が2040年頃までピークを迎えることから、人材不足は今後15年以上続く構造的な問題といえます。
有効求人倍率3.97倍の競争環境
2025年3月時点の介護関係職種の有効求人倍率は3.97倍で、全職業平均1.16倍の約3.4倍という高水準です。これは求職者1人に対して約4件の求人が競合している状況を意味し、特に都市部では7.65倍、5.25倍と採用競争が激化しています。
一方で地方でも2.14倍〜3.92倍と全国的に人手不足が深刻で、地域を問わず人材確保が最優先課題となっています。
実は離職率13.1%は改善傾向だが
介護職員の離職率は13.1%(2023年度)で、全産業平均15.4%より低く、近年は改善傾向にあります。しかし問題は、離職率30%以上の事業所が全体の13.1%も存在することです。つまり人材定着に成功している施設と失敗している施設の二極化が進んでいるのです。
なぜ医療・介護で人材不足が起きるのか|3つの本質的原因
原因1:採用競争の激化で「待ち」の採用が通用しない
従来はハローワークや求人サイトに掲載すれば応募があった時代から、積極的に探しにいく採用が必須の時代に変わりました。採用に成功している事業所の62.7%が「職場の人間関係の良さ」を、57.3%が「残業の少なさ・有給取得のしやすさ」を採用成功の理由に挙げており、待遇面だけでなく働きやすさの可視化が重要です。
原因2:処遇と業務負担のミスマッチ
介護職の平均月給は約27.1万円で、全産業平均33.0万円より約6万円低い水準です。一方で「身体的負担が大きい」と答えた職員は29.3%、「精神的にきつい」は22.5%に上り、仕事内容に対する報酬の不釣り合いが離職の一因となっています。
2024年6月の処遇改善加算の一本化により月6,000円相当のベースアップが目指されていますが、業務負担の軽減と同時進行でなければ根本的な解決にはなりません。
原因3:職場環境の格差による人材の二極化
離職理由の第1位は「職場の人間関係」(34.3%)で、給与面(23.5%)より上位です。相談窓口のある事業所では「人間関係の悩みがない」と答えた職員が42.1%だったのに対し、窓口のない事業所では22.9%と約20ポイントの差があります。人間関係や相談体制といったソフト面の整備が、採用・定着の成否を分ける時代になっています。
2026年問題に備える|今すぐ始める5つの実践対策
対策1:働きやすさを数値化して求人で訴求する(コスト:ゼロ〜)
採用成功事業所の特徴を自施設と比較し、具体的な数字で示しましょう。「残業月平均5時間以内」「有給取得率85%」「夜勤回数月4回以内」など、求職者が最も重視する労働条件を明確に打ち出すことで、応募率が変わります。
SNSや自社サイトで現場職員の「1日のスケジュール」や「休日の過ごし方」を発信することで、働くイメージが伝わりやすくなります。
対策2:相談窓口を設置し離職の芽を早期に摘む(コスト:低)
第三者相談窓口や定期面談の仕組みを作り、不満が蓄積する前に対処する体制を整えます。外部サービスなら月額数万円から導入可能で、離職率30%超の事業所が13%を占める現状では、1人の離職を防ぐだけで採用コストより安くつきます。
具体的には、四半期ごとの1on1面談、匿名アンケートの実施、改善提案制度の導入などが効果的です。
対策3:ICT導入で業務効率化し職員負担を軽減(コスト:中)
記録のタブレット化、シフト管理アプリ、見守りセンサーなどのICT導入は、厚労省のICT導入支援事業で補助金活用が可能です。導入施設の調査では、記録時間が1日30分削減され、その時間を利用者ケアに充てられたとの報告があります。
小規模事業所でも、まずは勤怠管理やシフト作成のデジタル化から始めることで、管理者の業務負担が大幅に軽減されます。
対策4:処遇改善加算を確実に取得し給与に反映(コスト:ゼロ)
2024年6月に一本化された介護職員等処遇改善加算は、加算率が引き上げられベースアップが期待できます。加算取得には就業規則の整備や研修計画の策定が必要ですが、取得事業所は職員の給与が月数千円〜1万円以上アップし、求人での訴求力が高まります。
まだ取得していない事業所は、都道府県の相談窓口や社会保険労務士に相談し、早期取得を目指しましょう。
対策5:多様な働き方を受け入れ採用の間口を広げる(コスト:低)
「週3日」「午前のみ」「夜勤専従」など多様な勤務形態を用意することで、子育て中や定年後のシニア層など、これまで採用できなかった層にアプローチできます。厚労省の介護現場における多様な働き方導入支援事業では、短時間勤務者を戦力化した施設で採用率が16.9%向上した事例があります。
業務を細分化し、資格がなくてもできる周辺業務を切り出すことで、未経験者や無資格者も即戦力として活躍できる環境を作れます。
よくある質問(FAQ)
Q1: 小規模事業所でも外国人人材の受け入れは可能ですか?
A: 可能です。特定技能制度なら受け入れ要件が比較的緩く、直接雇用できます。自治体の補助金や日本語教育支援も活用できるため、小規模でも検討する価値があります。
Q2: 処遇改善加算を取得していないとどれくらい不利ですか?
A: 加算未取得事業所は、取得事業所と比べて月給で1万円以上の差が生じるケースがあり、求人での競争力が大きく下がります。取得は義務ではありませんが、人材確保の観点から取得が強く推奨されます。
Q3: ICT導入のコストはどれくらいかかりますか?
A: 初期費用は規模により10万〜100万円程度ですが、ICT導入支援事業では最大750万円(補助率75%)の補助が受けられます。小規模事業所向けには、月額数千円のクラウドサービスもあります。
Q4: 人手不足でも介護の質を落とさない方法はありますか?
A: 業務の優先順位付けと、ICT・介護ロボット活用で効率化を図ります。利用者への直接ケアに時間を集中させ、記録や事務作業を削減することで、少人数でも質の高いケアが可能になります。
Q5: 2026年までに最優先で取り組むべきことは何ですか?
A: 現職員の離職防止です。新規採用には3〜6ヶ月かかりますが、離職防止は即効性があります。相談窓口設置と労働環境の可視化を最優先に、並行して処遇改善加算の取得を進めましょう。
まとめと次のアクション
医療・介護の人材不足は、2026年28万人、2040年57万人という確定的な未来です。しかし、職場環境を整え働きやすさを訴求する施設には、確実に人材が集まっているというデータもあります。
まず今週中に取り組むべきは、①現在の労働条件の数値化(残業時間・有給取得率・離職率)、②職員満足度の匿名アンケート実施、③処遇改善加算の取得状況確認の3つです。
人材不足の時代だからこそ、「選ばれる職場」になるための小さな改善の積み重ねが、3年後・5年後の事業継続を左右します。できることから一歩ずつ、今日から始めましょう。

