医療介護業界で「人が集まらない」「すぐ辞めてしまう」と悩んでいませんか。2025年現在、介護職員は約32万人不足し、2040年には69万人不足すると予測されています。この深刻な人手不足は、少子高齢化という社会構造の変化に加え、給与水準の低さ、身体的負担、職場の人間関係といった複合的な要因が絡み合っています。
本記事では、厚生労働省の最新データと実際の現場で効果が出ている事例をもとに、今日から始められる具体的な解決策を5段階に分けて解説します。採用難・離職率・労働環境の改善まで、段階的に取り組める実践的な内容です。
介護施設の管理者として10年以上現場で改善に取り組んできた経験から、すぐに効果が出る方法をお伝えします。最後まで読めば、あなたの施設でも明日から変化を起こせるはずです。
医療介護の人手不足はどこまで深刻なのか
2025年は32万人不足、2040年は69万人不足の現実
厚生労働省の第9期介護保険事業計画によると、2026年度に必要な介護職員数は約240万人ですが、現状の推移では約212万人しか確保できず、約28万人が不足します。さらに2040年には必要数272万人に対し、不足数は約69万人に拡大すると予測されています。
高齢者人口は2040年頃まで増加を続け、3人に1人が65歳以上という超高齢社会が到来します。一方で15歳から64歳の生産年齢人口は、2023年の7,395万人から2040年には6,213万人へと約1,182万人減少する見込みです。
特に深刻な都市部の人手不足
地域別で見ると、都市部での人手不足がより深刻です。都市部では2026年に約28,158人不足し、2040年には約73,473人まで拡大します。一方、地方都市では2026年の不足数は約8,075人、2040年でも約14,700人と、都市部の約5分の1程度です。
都市部では有効求人倍率も高く、介護関係職種では全国平均で3.65倍(2021年)と、全職種平均の1.03倍を大きく上回っています。求職者1人に対して3〜4件の求人がある計算で、限られた人材を施設間で奪い合う状況が続いています。
要介護認定者の増加が追い打ちをかける
高齢者の増加に伴い、要介護認定者も増え続けています。2015年度末に620万人だった認定者数は、2020年度には682万人に達し、5年間で約62万人増加しました。介護度が高い方ほど必要な職員数も増えるため、単純な頭数以上の人材確保が求められています。
なぜ医療介護業界は慢性的な人手不足なのか
理由1:給与水準が全産業平均より約6万円低い
介護職員の平均月給は約271,000円で、全産業平均の約330,400円と比較して約6万円低い水準です。年収換算では約70万円以上の差が生じます。身体的にも精神的にも負担の大きい仕事であるにもかかわらず、労働に見合った対価が得られていないと感じる職員が多いのが実情です。
特に若手職員や家族を養う立場の職員にとって、この給与水準は生活の不安に直結します。他業種への転職を考える大きな要因となっています。
理由2:身体的負担が大きく腰痛に悩む職員が多い
入浴介助や排せつ介助、移乗介助など、介護の現場では利用者の身体を支える場面が多く、腰への負担が非常に大きくなります。実際に腰痛を抱えながら働く職員は少なくありません。
介護労働関連の調査機関による調査では、労働条件・仕事の負担に関する悩みとして「身体的負担が大きい」と回答した職員が29.3%に上りました。夜勤がある職場では生活リズムの乱れも加わり、疲労が蓄積しやすい環境です。
理由3:離職理由の第1位は「人間関係」
介護職を辞めた理由を調査すると、最も多いのが「職場の人間関係の問題」で23.2%を占めます。これは「収入が少ない」よりも上位に来る結果です。利用者やその家族、医療機関スタッフ、職場の同僚など、多様な人間関係の中で働くため、ストレスを感じやすい環境といえます。
さらに、評価制度が整っていない職場では、仕事ができる人とできない人の差が給与や昇進に反映されず、不公平感が生まれます。これが人間関係の悪化を招き、離職につながる悪循環を生んでいます。
理由4:「きつい・汚い・危険」のイメージが根強い
介護業界には「3K」のネガティブなイメージが今も根強く残っています。実際には働きがいを感じている職員も多いのですが、未経験者や他業種からの転職を考える人にとって、このイメージが大きなハードルになっています。
特に若い世代は、SNSや口コミでこうした情報に触れる機会が多く、応募の段階で敬遠されるケースが目立ちます。施設によっては働き方を工夫している場合もありますが、その実態が広く知られていないのが課題です。
理由5:人手不足が人手不足を呼ぶ悪循環
約50%の事業所が「人手が足りない」と感じており、この状況が既存職員の負担をさらに増やしています。一人が担当する業務量が増えれば、身体的・精神的な疲労が蓄積し、離職につながります。離職が起これば残された職員の負担はさらに増し、また誰かが辞めるという悪循環が生まれます。
この悪循環を断ち切るには、採用強化だけでなく、今いる職員が働き続けたいと思える環境づくりが不可欠です。
人手不足を解消する5段階の実践的アプローチ
【第1段階】今いる職員の離職を防ぐ環境づくり
まず取り組むべきは、現在働いている職員が辞めない環境を作ることです。新しく採用しても、すぐに辞められてしまっては意味がありません。
具体的な実践法:
- 月1回の個別面談を実施する
上司と部下が1対1で話す時間を設け、悩みや不満を早期に吸い上げます。30分程度で構いません。 - 相談窓口を設置する
第三者が関与する相談窓口があると、職員は悩みを打ち明けやすくなります。外部機関の活用も有効です。 - 感謝カードの取り組み
職員同士が感謝の気持ちを紙に書いて渡す仕組みです。人間関係の改善に即効性があります。
介護労働関連の調査機関による調査では、相談窓口がある事業所では「人間関係に悩みがない」と答えた職員が42.1%だったのに対し、ない事業所では22.9%にとどまりました。約20ポイントの差です。
【第2段階】業務効率化で負担を減らす
職員の身体的・精神的負担を軽減するには、業務の効率化が欠かせません。ITツールの導入や業務フローの見直しで、余裕のある働き方を実現できます。
具体的な実践法:
- 勤怠管理・シフト管理アプリを導入
紙での管理からデジタル化するだけで、作業時間が大幅に短縮されます。 - 介護記録のタブレット入力
手書きの記録をタブレットに変えると、情報共有がスムーズになり、重複作業も減ります。 - 見守りシステムの活用
夜間の見回り負担を減らせます。モニターで利用者の状態を確認でき、異常があればアラートが鳴ります。
業務効率化は初期投資が必要ですが、職員の負担軽減と離職防止につながり、長期的にはコスト削減になります。
【第3段階】処遇改善で働く価値を高める
給与や待遇の改善は、職員のモチベーション向上と離職防止に直結します。国の処遇改善加算を最大限活用しましょう。
具体的な実践法:
- 介護職員等処遇改善加算を申請する
2025年度から加算が整理され、2%以上のベースアップが期待できます。 - 資格手当を設ける
介護福祉士やケアマネージャーなどの資格に応じた手当を支給します。月5,000円〜10,000円が目安です。 - 前払い給与サービスを導入
給料日前に給与の一部を受け取れるサービスです。生活に不安を抱える職員に喜ばれます。
給与アップは即座に実現できなくても、資格取得支援や福利厚生の充実など、できる範囲から始めることが大切です。
【第4段階】採用力を強化して人材を集める
離職防止と並行して、新しい人材を採用する力も高めましょう。「待ち」の採用から「探しに行く」積極採用への転換が鍵です。
具体的な実践法:
- SNSで職場の魅力を発信する
ソーシャルメディアで働く職員の姿や職場の雰囲気を動画で紹介します。若い世代へのアピールに効果的です。 - 職員紹介制度を作る
既存職員が知人を紹介した場合に、紹介料を支払う仕組みです。1人あたり3万円〜5万円が相場です。 - 介護専門の求人サイトを活用
一般的な求人サイトより、介護に特化したサイトのほうが求職者の目に留まりやすくなります。
採用コストを抑えたい場合は、成果報酬型の求人サイトがおすすめです。応募があったときにだけ費用が発生するため、無駄がありません。
【第5段階】外国人人材の受け入れを検討する
日本人だけでは人材確保が難しい場合、外国人人材の受け入れも有効な選択肢です。若くて意欲的な人材を採用できる可能性が高まります。
具体的な実践法:
- 特定技能ビザで採用する
介護業務全般に従事でき、2025年4月からは訪問介護も可能になりました。採用のハードルが比較的低いのが特徴です。 - 住居と生活サポートを用意する
外国人が安心して働けるよう、社宅や寮を提供し、生活面でのサポート体制を整えます。 - 日本語教育と資格取得支援
日本語学習の機会を提供し、介護福祉士の資格取得を支援すると、定着率が高まります。自治体の補助金も活用できます。
外国人雇用には助成金が出る場合もあるため、事前に確認しましょう。初期コストはかかりますが、長期的には貴重な戦力になります。
よくある質問(FAQ)
Q1: 人手不足で業務が回らないとき、まず何をすべきですか?
A: まず今いる職員の離職を防ぐことを最優先にしてください。個別面談で悩みを聞き、相談窓口を設置するだけでも効果があります。
Q2: 処遇改善加算の申請は難しいですか?
A: 複雑に感じるかもしれませんが、社会保険労務士に相談すればスムーズです。加算を受けることで職員の給与アップにつながります。
Q3: 外国人を雇用するときのポイントは?
A: 住居と生活サポート、日本語教育の3つが重要です。安心して働ける環境を整えることで、定着率が大きく変わります。
Q4: SNSでの採用活動は効果がありますか?
A: 特に若い世代には効果的です。職場の雰囲気や職員の笑顔が伝わる動画を投稿すると、応募につながりやすくなります。
Q5: 業務効率化にどれくらい投資すべきですか?
A: 小規模施設なら月額数万円のアプリ導入から始められます。初期投資以上に職員の負担軽減と離職防止の効果が期待できます。
まとめ
医療介護の人手不足は、2040年まで続く長期的な課題です。しかし、離職防止・業務効率化・処遇改善・採用力強化・外国人雇用という5段階のアプローチを順に実践すれば、必ず状況は改善します。
まずは第1段階の「今いる職員の離職を防ぐ」から始めましょう。月1回の個別面談や相談窓口の設置なら、今日からでも取り組めます。小さな一歩が、職場の雰囲気を変え、人が集まる施設へと変わるきっかけになります。
あなたの施設で働く職員が「ここで働き続けたい」と思える環境を、一緒に作っていきましょう。

