介護人材不足の2022年度データ徹底解説|厚生労働省推計215万人を起点とした経営戦略

福祉経営
  1. 2022年度データが示す介護人材確保の実態
  2. 2022年度データの正確な定義と測定方法
    1. 215万人という数字が示す範囲
    2. 調査方法の変遷と数値の信頼性
    3. 第8期計画と第9期計画における基準年の違い
  3. 厚生労働省が示す2026年度・2040年度の推計根拠
    1. 第9期計画に基づく240万人という目標
    2. 2040年度272万人推計の意味と背景
    3. 地域別推計から見える格差の実態
  4. 2022年度データを経営判断に活かす5つのステップ
    1. ステップ1:自施設の2022年度時点との比較分析(所要時間:3日)
    2. ステップ2:地域の人材需給バランスを推計と照合(所要時間:1週間)
    3. ステップ3:第8期と第9期の推計変化から傾向を読む(所要時間:2日)
    4. ステップ4:年間6.3万人ペースの実現可能性を評価(所要時間:継続的)
    5. ステップ5:2040年を見据えた段階的計画の策定(所要時間:2週間)
  5. 公的データ活用で陥りがちな3つの誤解
    1. 推計値を確定値と誤認する危険性
    2. 全国データを自地域にそのまま適用する間違い
    3. 過去の増加ペースが今後も続くと仮定する楽観
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1: 2022年度の215万人には派遣職員や業務委託先の職員も含まれますか?
    2. Q2: 第8期と第9期で推計方法は変わりましたか?
    3. Q3: 2022年度データはどこで入手できますか?
    4. Q4: 常勤換算ではなく実人員でカウントする理由は?
    5. Q5: 2024年度に職員数が減少した理由は何ですか?
  7. まとめ:データを羅針盤に確実な一歩を踏み出す

2022年度データが示す介護人材確保の実態

介護事業の経営において、人材確保の計画立案に欠かせないのが公的統計データです。2022年度の介護職員数は約215万人とされ、この数字が第9期介護保険事業計画における人材確保目標の基準点となっています。本記事では、この2022年度データの正確な意味と、そこから導き出される2026年度・2040年度の推計値を経営判断に活かす方法を解説します。筆者は福祉分野のデータ分析と事業所支援を12年間行ってきた経験から、数字の裏側にある実態をお伝えします。

2022年度データの正確な定義と測定方法

215万人という数字が示す範囲

2022年度の介護職員数約215万人は、介護保険給付の対象となる介護サービス事業所および介護保険施設に従事する職員の実人員数です。この数値は「介護サービス施設・事業所調査」に基づいており、常勤・非常勤を問わず、2022年10月1日時点で実際に働いていた人を1人としてカウントしています。

重要なのは、この215万人には介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)のうち、従前の介護予防訪問介護・通所介護に相当するサービスに従事する職員も含まれている点です。つまり、制度上の介護保険サービスに関わる人材をほぼ網羅した数字といえます。

調査方法の変遷と数値の信頼性

実は2022年度までのデータには、調査方法の変更による影響があります。2020年度までは全数調査として実施されていましたが、2021年度以降は回収率の低下により、社会・援護局が未回答分を推計して全数を算出する方式に変更されました。

このため、2022年度の215万人という数字は実測値ではなく推計値を含んでいます。とはいえ、この推計方法は統計学的に妥当性が検証されており、経営計画の基礎資料として十分に活用できる精度を持っています。

第8期計画と第9期計画における基準年の違い

第8期介護保険事業計画(2021〜2023年度)では2019年度の約211万人を基準としていましたが、第9期計画(2024〜2026年度)では2022年度の215万人が基準年となりました。この3年間で約4万人増加していることになります。

ただし、最新の調査では2023年度に約212.6万人まで減少し、2024年度も同水準にとどまっているという報告があります。この減少傾向が、今後の人材確保をより困難にする要因となっています。

厚生労働省が示す2026年度・2040年度の推計根拠

第9期計画に基づく240万人という目標

2022年度の215万人から2026年度には約240万人が必要という推計は、各市町村が第9期介護保険事業計画に位置付けたサービス見込み量に基づいています。都道府県がそれぞれの地域特性を踏まえて算出した数値を国が集計したものです。

年間約6.3万人のペースで増員する必要があるという計算は、4年間で25万人を増やす必要があることを意味します。第8期計画時と比較すると、年間の養成目標が約8,000人増加しており、より厳しい目標設定となっています。

2040年度272万人推計の意味と背景

2040年度に約272万人が必要という推計は、2022年度比で約57万人の増加を示しています。注目すべきは、2026年度以降の増加ペースが年間3.2万人と、それ以前の6.3万人から半減する点です。

これは2040年頃に高齢者人口の増加ペースが緩やかになるためですが、生産年齢人口(15〜64歳)の減少は加速度的に進みます。つまり、必要人数の増加ペースは落ち着くものの、採用の母数となる労働人口が減るため、実際の採用難易度はむしろ上昇すると予測されています。

地域別推計から見える格差の実態

都道府県別の推計を見ると、2040年度時点で現状の増加ペースのままでは30の道府県で介護職員数が2022年度より減少する見込みです。特に東京都、神奈川県、埼玉県など首都圏での不足数が突出して大きく、地域による格差が顕著です。

一方、地方では高齢者人口自体が減少に転じる地域もありますが、若年人口の流出により採用の絶対数が不足する構造的な問題を抱えています。全国一律の対策ではなく、地域ごとの実情に応じた戦略が不可欠です。

2022年度データを経営判断に活かす5つのステップ

ステップ1:自施設の2022年度時点との比較分析(所要時間:3日)

まず自施設の2022年10月1日時点の職員数を確認します。当時の常勤・非常勤の内訳、年齢構成、職種別人数を記録し、現在と比較しましょう。全国平均では2022年度から横ばいまたは微減ですが、自施設はどうだったかを把握することが重要です。

つまずきやすいポイントは、当時の記録が残っていない場合です。労働保険の届出書類や給与台帳から復元できるので、経理担当者と協力して数値を特定しましょう。

ステップ2:地域の人材需給バランスを推計と照合(所要時間:1週間)

自治体が公表している第9期介護保険事業計画の介護人材推計を入手します。自地域で2026年度までに何人の増員が必要か、現状のペースでどれだけ不足するかが記載されています。

この情報と自施設の採用計画を照らし合わせ、地域全体の採用競争の厳しさを数値で把握します。例えば、地域全体で年間500人の増員が必要なのに、養成校の卒業生が年間100人しかいなければ、中途採用や潜在的有資格者の掘り起こしが必須となります。

ステップ3:第8期と第9期の推計変化から傾向を読む(所要時間:2日)

第8期計画では2025年度に約243万人必要とされていましたが、第9期では2026年度に240万人へと修正されました。必要数が下方修正された背景には、介護予防の進展やサービス利用者数の伸びの鈍化があります。

この傾向が自地域でも同様か、それとも異なるかを分析することで、中長期的な事業規模の予測精度が高まります。需要予測が下振れしているなら、過度な設備投資は避けるべきかもしれません。

ステップ4:年間6.3万人ペースの実現可能性を評価(所要時間:継続的)

全国で年間6.3万人の増員が必要という目標に対し、2023〜2024年度の実績は横ばいまたは減少です。この乖離を自施設の採用活動にも当てはめ、楽観的すぎる計画になっていないかを検証します。

採用市場が想定以上に厳しい場合は、定着率向上や業務効率化による必要人員の削減など、採用以外の手段も併用する戦略に切り替える必要があります。

ステップ5:2040年を見据えた段階的計画の策定(所要時間:2週間)

2022年度から2040年度まで約18年間あります。この期間を3つのフェーズ(2026年度まで/2035年度まで/2040年度まで)に分け、それぞれの必要人員と採用戦略を明確にします。

各フェーズで重点施策を変えることが重要です。例えば、2026年度までは若年層の新規採用に注力し、2035年度までは定着率向上と外国人材活用を強化、2040年度までは業務のデジタル化による省人化を進めるといった具合です。

公的データ活用で陥りがちな3つの誤解

推計値を確定値と誤認する危険性

215万人という数字はあくまで推計値であり、実際にはプラスマイナス数万人の誤差がある可能性があります。特に総合事業従事者の推計には不確実性が伴います。

この誤差を理解せずに精緻すぎる計画を立てると、現実とのずれが生じたときに修正が困難になります。データは目安として活用し、定期的に実態との照合を行う柔軟性が必要です。

全国データを自地域にそのまま適用する間違い

全国で年間6.3万人の増員が必要だからといって、自地域でも同じペースで増やせばよいわけではありません。高齢化の進展度合い、生産年齢人口の減少率、既存施設の充足状況は地域ごとに大きく異なります。

必ず自治体の地域別推計を確認し、全国平均との差異を把握した上で、自施設の計画を立てましょう。都市部と地方では必要な戦略がまったく異なります。

過去の増加ペースが今後も続くと仮定する楽観

2019年度211万人から2022年度215万人への増加ペース(年間約1.3万人)が今後も続くと仮定すると、2026年度には約220万人にしかなりません。目標の240万人には20万人も届きません。

実際、2023〜2024年度は増加どころか減少しており、過去の延長線上では目標達成は不可能です。この現実を直視し、これまでとは異なる抜本的な対策が求められています。

よくある質問(FAQ)

Q1: 2022年度の215万人には派遣職員や業務委託先の職員も含まれますか?

A: 含まれません。215万人は事業所に直接雇用されている常勤・非常勤職員の実人員数です。派遣や業務委託の人員は別途カウントされます。

Q2: 第8期と第9期で推計方法は変わりましたか?

A: 基本的な推計方法は同じですが、基準年が2019年度から2022年度に変更され、より直近のサービス見込み量に基づいて算出されています。精度は向上しています。

Q3: 2022年度データはどこで入手できますか?

A: 介護サービス施設・事業所調査の結果として、政府統計の総合窓口(e-Stat)や厚生労働省のウェブサイトから無料で入手できます。都道府県別の詳細データも公開されています。

Q4: 常勤換算ではなく実人員でカウントする理由は?

A: 実人員は実際に働いている人の頭数であり、採用・配置計画を立てる際に直感的にわかりやすいためです。常勤換算は労働時間を基準とした別の指標として併記されています。

Q5: 2024年度に職員数が減少した理由は何ですか?

A: 明確な原因は特定されていませんが、離職率の上昇、新規採用の停滞、他業種への人材流出などが複合的に作用したと考えられています。2026年度目標達成には深刻な懸念材料です。

まとめ:データを羅針盤に確実な一歩を踏み出す

2022年度の介護職員数215万人という基準値から、2026年度240万人、2040年度272万人という推計値が導き出されています。これは単なる数字の羅列ではなく、各自治体が地域の実情を踏まえて算出した、実現すべき具体的な目標です。

今すぐ取り組むべきアクションは、自施設の2022年度時点との比較、地域別推計の確認、採用計画の現実性検証です。公的データを正しく理解し、楽観的な希望的観測ではなく、厳しい現実に基づいた戦略を立てることが、持続可能な介護事業経営の鍵となります。

データは味方にすれば強力な武器ですが、誤解したまま使えば判断を誤ります。2022年度を起点とした推計の意味を正確に理解し、地域の実情に合わせた柔軟な対応を続けていきましょう。一人ひとりの利用者に質の高いサービスを提供し続けるために、データに基づく賢明な経営判断が、かつてないほど重要な時代になっています。

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