厚生労働省が発表する介護職員不足データとは?活用法を解説
厚生労働省が発表する介護職員不足データとは、将来必要な介護職員数と実際の供給見込みの差を示す統計です。2024年7月の発表では、2026年度に約25万人、2040年度に約57万人の介護職員が不足すると推計されています。このデータは単なる統計ではなく、介護事業者の採用計画、現役介護職のキャリア戦略、求職者の就職判断に直結する重要な情報です。
本記事では、厚労省データを事業者・現役職・求職者の3つの立場から読み解き、2026年に迫る人材不足にどう対応すべきかを具体的に解説します。
押さえるべき5つの重要数字│厚生労働省の最新データ
厚生労働省が公表した介護職員不足に関するデータには、現状と将来を理解するための重要な数字が含まれています。ここでは特に注目すべき5つの数字を紹介します。
【数字1】2026年度必要数: 約240万人
第9期介護保険事業計画に基づく推計では、2026年度には全国で約240万人の介護職員が必要とされています。2022年度時点での介護職員数は約215万人でしたので、わずか4年間で25万人の増員が求められる計算です。
これは年間約6.3万人のペースで介護職員を確保する必要があることを意味します。介護事業者にとっては採用活動の大幅な強化が不可欠であり、求職者にとっては就職・転職の好機といえます。
【数字2】2026年度不足数: 約25万人
2026年度時点で、必要な240万人に対して約25万人が不足すると推計されています。この不足率は約10%に相当し、10人体制が必要な現場に9人しか配置できない状況を示します。
特に訪問介護では人手不足感が強く、厚労省の調査では事業所の多くが「採用が困難」と回答しています。この数字は介護業界全体の深刻な人材難を物語っており、早急な対策が求められています。
【数字3】2023年度の変化: 初のマイナス2.9万人
2023年度の介護職員数は約212.6万人で、前年度比で2.9万人減少しました。これは介護保険制度開始以来、初めての減少です。厚労省の担当者は、人口減少による働き手不足と他産業との賃金格差が背景にあると分析しています。
この歴史的な転換点は、これまでの「増加ペースが鈍化」から「実際に減少」へと状況が悪化したことを示しており、従来の対策だけでは不十分であることを意味します。
【数字4】離職率: 13.6%
令和5年度の調査によると、介護職員の離職率は13.6%、訪問介護員では11.8%となっています。約7人に1人が1年以内に職場を離れる計算です。
離職理由として「職場の人間関係」「仕事内容に対する賃金の低さ」「身体的・精神的負担」が上位に挙げられています。新規採用を増やすだけでなく、既存職員の定着支援が人手不足解消の鍵となります。
【数字5】有効求人倍率: 3.57倍
介護職の有効求人倍率は全国平均で3.57倍です。これは1人の求職者に対して約3.6件の求人がある状態を示します。特に都市部では4.91倍と競争が激しく、事業者間での人材獲得競争が激化しています。
求職者にとっては選択肢が豊富な売り手市場である一方、事業者にとっては採用難易度が極めて高い状況です。
立場別データ活用法│事業者・現役職・求職者それぞれの読み方
厚生労働省のデータは、見る立場によって全く異なる意味を持ちます。ここでは事業者・現役介護職・求職者の3つの視点から、データをどう活用すべきかを解説します。
介護事業者向け: 採用計画と定着支援の両輪で対応
介護事業者にとって、2026年に25万人不足というデータは採用計画の抜本的見直しを迫るものです。まず、自事業所が位置する都道府県の不足数を確認し、地域内での競争環境を把握しましょう。
有効求人倍率が高い地域では、給与水準の引き上げや労働環境の改善が急務です。厚労省が推進する処遇改善加算の活用、ICT導入による業務効率化、週休3日制など多様な働き方の導入を検討してください。
また、離職率13.6%を踏まえ、新規採用だけでなく既存職員の定着支援に同等以上のリソースを割くべきです。職場の人間関係改善、キャリアパス明確化、メンタルヘルスケアの充実が効果的です。
現役介護職向け: キャリア形成と待遇改善の好機
現役介護職にとって、人手不足データは自身のキャリア形成と待遇改善の交渉材料になります。有効求人倍率3.57倍という売り手市場を背景に、より良い労働条件を求めて転職するチャンスが広がっています。厚労省が処遇改善に年間2,000億円を投じていることから、処遇改善加算を活用している事業所への転職は賃金アップの近道です。
また、2023年度に介護職員数が初めて減少したことは、業界全体が人材確保に本気で取り組み始めたサインでもあります。資格取得支援、研修制度充実、キャリアアップ制度など、自己投資をサポートする職場を選びましょう。
介護職志望者向け: 安定性と将来性を見極める
介護職を目指す求職者にとって、2040年まで継続的に人材需要がある点は大きな安心材料です。272万人必要で57万人不足という数字は、今後15年以上にわたって雇用が保証されることを意味します。就職先選びでは、都道府県別の不足状況を確認し、需要が高い地域ほど待遇改善が進みやすい傾向にあることを押さえてください。
また、厚労省が外国人材受け入れを推進していることから、多文化共生の職場環境が整いつつあります。未経験者向けの入門的研修や、働きながら資格を取れる実務経験ルートなど、国の支援制度も充実しています。
2026年問題への実践的対応│2年後に備える具体策
2026年度の25万人不足まで残り2年を切りました。ここでは、事業者・現役職・求職者それぞれが今すぐ取るべき具体的な行動を紹介します。
今すぐ始める3つのアクション
事業者の行動1: 処遇改善加算の最大活用
2024年度の介護報酬改定で、3種類の処遇改善加算が一本化され、活用しやすくなりました。2024年度に2.5%、2025年度に2%のベースアップにつながる加算率引き上げが実施されています。
未取得の事業所は早急に申請手続きを進め、既に取得済みの事業所も配分ルールを見直し、経験・技能のある職員への重点配分を検討しましょう。厚労省の試算では、これらの施策により介護職員の月額平均賃金が段階的に改善されています。
現役職・求職者の行動2: 国の支援制度を活用
厚労省は介護福祉士を目指す学生への返済免除付き修学資金貸付、未経験者向けの入門的研修、他業種からの転職希望者への職業訓練など、多様な支援制度を用意しています。
特に介護福祉士資格の取得は、処遇改善加算の対象となりやすく、長期的なキャリア形成に有利です。実務経験ルート、養成施設ルート、経済連携協定ルートなど、自分の状況に合った資格取得方法を選びましょう。
共通の行動3: ICT・介護ロボット活用
厚労省は業務効率化のため、ICT機器や介護ロボットの導入を支援しています。記録業務のデジタル化により1日1時間以上の業務時間削減が可能という事例もあります。
事業者は積極的に導入し、職員の負担軽減を図りましょう。現役職・求職者は、こうした最新技術を導入している事業所を選ぶことで、働きやすさが大幅に向上します。
よくある質問│厚生労働省データの活用に関する疑問
Q1. 厚労省の推計は当たるのか?
厚労省の推計は都道府県が提出した第9期介護保険事業計画を集計したものです。過去の推計では、実際の不足数が予測を上回るケースもありました。2023年度に介護職員数が初めて減少したことから、今回の推計も楽観視できない状況です。むしろ予測より厳しい現実に備えるべきでしょう。
Q2. 都道府県別のデータはどこで見られる?
厚生労働省の公式サイト「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」のページで、都道府県別の詳細データが公開されています。自分の地域の必要数・不足数を確認し、採用難易度や待遇改善の可能性を判断する材料にしてください。
Q3. 外国人材の増加で日本人の雇用は減る?
厚労省は外国人材を「補完的な人材」と位置付けており、日本人の雇用を奪うものではありません。2040年に57万人不足という状況では、日本人だけで需要を満たすことは困難です。むしろ多文化共生の職場環境が整うことで、働きやすさが向上する可能性があります。
Q4. 処遇改善で給与はどれくらい上がる?
厚労省の施策により、平成21年度から令和元年度までに介護職員の月額平均賃金は5.7万円改善されました。2024〜2025年度のベースアップ支援を含めると、さらなる改善が期待できます。ただし、事業所によって処遇改善加算の取得状況や配分方法が異なるため、就職・転職時には必ず確認しましょう。
Q5. 2026年までに状況は改善する?
厚労省は5つの施策(処遇改善・人材確保・定着支援・イメージ向上・外国人材)を推進していますが、2年間で25万人を確保するのは極めて困難です。現実的には、不足を前提とした業務効率化やICT活用による生産性向上が鍵となります。個人レベルでは、早めのキャリア形成や職場選びが重要です。
まとめ│データを知って次の一歩へ
厚生労働省の介護職員不足データは、2026年度に25万人、2040年度に57万人が不足するという深刻な状況を示しています。2023年度には介護職員数が初めて減少し、問題はさらに深刻化しています。
このデータは、介護事業者には採用・定着戦略の見直しを、現役介護職にはキャリア形成の好機を、求職者には安定した就職先の選択肢を提供します。
国は処遇改善や外国人材受け入れなど総合的な対策を進めていますが、2年後に迫る2026年問題への対応は待ったなしです。まずは自分の立場でできることから始めましょう。事業者は処遇改善加算の活用、現役職・求職者は国の支援制度の確認が第一歩です。

