はじめに
介護現場の人手不足、何から始めるべきか分からず悩んでいませんか
介護職不足対策は「定着率向上→業務効率化→採用強化」の3ステップで体系的に進めることで、限られた予算と時間でも確実に成果を出せます。
多くの施設が陥る失敗は、いきなり採用活動に注力してしまうこと。実は既存職員の離職を防ぐ対策を優先することで、採用コストを抑えながら安定した運営が可能になります。
この記事では、厚生労働省のデータと実際の施設改善事例をもとに、小規模施設でも今日から始められる具体的な対策を優先順位つきで解説します。現場責任者として15年の経験から、失敗しやすいポイントと回避策も併せてお伝えします。
3分で読める内容ですので、人手不足に悩む施設管理者の方はぜひ最後までご覧ください。
介護職不足の現状|2040年には57万人が不足する深刻な事態
介護業界の人手不足は年々深刻化しており、厚生労働省の推計によると2040年には約57万人の介護職員が不足すると予測されています。これは必要数272万人に対して約21%の不足を意味し、10名体制が必要な現場に8名しか配置できない計算です。
現状でも令和5年度の調査では介護職員の離職率が13.6%に達しており、採用しても定着しないという負のスパイラルに陥っている施設が少なくありません。
人手不足の主な原因は3つあります。第一に少子高齢化による需要増加と供給減少のアンバランス、第二に仕事内容に対する賃金の低さや身体的負担の大きさ、第三に職場の人間関係や労働環境の問題です。
特に注目すべきは離職理由です。業界調査で「職場の人間関係に問題があった」が上位に挙げられており、単に給与を上げるだけでは解決しない複合的な課題が存在します。
こうした背景から、人手不足対策は多角的かつ優先順位をつけた戦略的アプローチが不可欠です。
ステップ1【最優先】定着率向上で離職を防ぐ|コストをかけずに今日から始める
介護職不足対策の第一歩は、既存職員の離職を防ぐことです。新規採用には1人あたり30万円以上のコストと3か月以上の時間がかかりますが、定着率向上策の多くは低コストで即効性があります。
処遇改善加算の完全活用と明確な評価制度
介護職員処遇改善加算を最大限活用し、職員に確実に還元することが基本です。重要なのは金額だけでなく、評価基準を明確にすること。何をすれば給与が上がるのか、どのようなキャリアパスがあるのかを可視化することで、職員は将来への希望を持てます。
具体的には、経験年数や資格取得に応じた昇給モデルを作成し、全職員に共有します。年2回の個別面談で目標設定と振り返りを行い、達成度を評価に反映させる仕組みを構築しましょう。
残業削減と有給取得促進の具体策
労働環境改善の核心は残業削減です。まず現場の業務を洗い出し、会議時間の短縮、記録作業の効率化、役割分担の見直しを実施します。特に効果的なのは「ノー残業デー」の設定で、週1回でも定時退社できる日を作ることで職員の満足度は大きく向上します。
有給休暇は希望日に取得できる体制を整えることが重要です。シフト作成時に事前に希望休を聞き、計画的に人員配置を調整することで、急な欠員による負担増を防げます。
人間関係改善のための相談体制構築
離職理由の上位を占める人間関係の問題には、風通しの良い相談体制が有効です。月1回の1on1ミーティングで上司が部下の悩みを傾聴する時間を設け、問題が深刻化する前に対処します。
また、ストレスチェックの定期実施と結果に基づくフォローアップ、外部カウンセラーへの相談窓口設置など、複数の相談ルートを用意することで、職員は孤立せずに済みます。
期間の目安は3か月、コストは月5万円程度から始められます。
ステップ2【効率化】情報システム・介護ロボット導入で業務負担を30%削減
定着率向上と並行して進めるべきが業務効率化です。人の手でなければできないケアに職員が集中できる環境を整えることで、同じ人数でもサービスの質を維持できます。
介護ソフト導入で記録時間を半減
最も効果が高いのが介護記録のデジタル化です。スマートフォンやタブレットで現場から直接入力できるシステムを導入すれば、事務所との往復時間がゼロになり、記録時間を従来の半分以下に削減できます。
入力したデータは自動的に日誌や計画書に反映され、介護保険請求書類も自動作成されるため、月末の残業が大幅に減少します。実際の導入施設では、記録業務の時間が1日1人あたり30分短縮され、その分を利用者とのコミュニケーションに充てられるようになりました。
見守りセンサーで夜間巡視の負担軽減
夜勤の負担を軽減する見守りセンサーは、利用者のプライバシーを守りながら心拍や呼吸、離床を検知します。異常時だけ対応すればよくなるため、定期巡視の回数を減らせ、職員の身体的・精神的負担が軽減されます。
移乗支援ロボットと組み合わせることで、腰痛などの労働災害リスクも大幅に低減でき、長く働ける職場環境の実現につながります。
補助金を活用して初期コストを削減
情報システム機器や介護ロボット導入には初期費用がかかりますが、IT導入補助金や介護テクノロジー導入支援事業などの制度を活用することで、負担を50~80%軽減できます。申請手続きは専門業者がサポートしてくれる場合が多く、思ったよりハードルは低いです。
導入期間は準備から運用まで2~3か月、補助金活用で実質負担は20~50万円程度から可能です。
ステップ3【採用強化】外国人材・潜在人材の活用で人材プールを広げる
定着率向上と業務効率化の基盤を整えた上で、採用活動を強化します。従来の方法だけでは人材確保が難しい中、多様な人材に目を向けることが重要です。
特定技能・技能実習制度による外国人材受入れ
外国人材の受入れは即戦力確保の有効な手段です。特定技能1号は最長5年の就労が可能で、介護福祉士資格を取得すれば永続的な就労も可能になります。技能実習制度は実習期間中にOJTで育成でき、同じく資格取得で長期雇用につながります。
受入れには日本語教育や文化理解のサポート体制が必要ですが、意欲の高い外国人材は職場全体の活性化にもつながります。2025年4月からは訪問介護でも外国人材の従事が可能になり、活躍の場が広がっています。
潜在介護福祉士の復職支援
資格を持ちながら現場を離れている潜在介護福祉士は全国に約12万人存在します。彼らが復職できるよう、週2~3日勤務や1日4~6時間の短時間正職員制度など、柔軟な働き方を提供することが有効です。
ブランクがある方向けに復職支援研修を実施し、最新の介護技術や知識を学び直せる機会を設けることで、安心して現場復帰できる環境を整えます。経験豊富な人材は即戦力となり、新人教育にも貢献してくれます。
未経験者の採用と段階的育成
若者や他業種からの転職者など未経験者の採用も視野に入れます。SNSを活用した職場の魅力発信、職場見学会や仕事体験会の開催で、介護の仕事への理解を深めてもらいます。
入職後はチューター制度やメンター制度で先輩職員が丁寧に指導し、段階的にスキルアップできる研修制度を整えることで、定着率も高まります。
採用活動の期間は3~6か月、外国人材受入れの場合は半年~1年を見込む必要があります。
対策実施で失敗しないための3つの注意点
介護職不足対策を進める上で、多くの施設が陥りがちな失敗パターンと回避策を紹介します。
第一の失敗は「いきなり採用活動だけに注力する」ことです。定着率が低いまま採用を強化しても、入職した職員がすぐ辞めてしまい採用コストが無駄になります。必ず定着率向上から着手しましょう。
第二の失敗は「全ての対策を一度に始めようとする」ことです。現場が混乱し、かえって負担が増えてしまいます。優先順位をつけて1つずつ確実に実施し、効果を確認してから次のステップに進むことが成功の鍵です。
第三の失敗は「職員の意見を聞かずにトップダウンで進める」ことです。現場の実情を最も知っているのは現場職員です。定期的にアンケートやヒアリングを実施し、職員の声を反映させながら改善を進めることで、納得感のある変革が実現します。
これら3つのポイントを意識することで、限られたリソースでも確実に成果を上げられます。
よくある質問(FAQ)
Q1:小規模施設でも外国人材は受け入れられますか?
A:可能です。登録支援機関のサポートを受けることで、小規模施設でも受入れ体制を構築できます。複数の施設で共同受入れする方法もあります。
Q2:情報システム導入に職員が抵抗する場合の対処法は?
A:まず操作が簡単なシステムを選び、導入前に十分な研修時間を確保します。若手職員をサポート役にすることで、世代間の協力体制も生まれます。
Q3:処遇改善の効果が出るまでどのくらいかかりますか?
A:給与面の改善は即効性がありますが、評価制度やキャリアパスの整備効果は3~6か月で実感できることが多いです。
Q4:人手不足対策の優先順位はどう決めればよいですか?
A:離職率が高い場合は定着率向上、職員の疲弊が激しい場合は業務効率化を最優先します。現状分析から始めることをおすすめします。
まとめ|今日から始める介護職不足対策の第一歩
介護職不足対策は「定着率向上→業務効率化→採用強化」の順で体系的に進めることが成功の鍵です。最も重要なのは、既存職員が長く働きたいと思える環境を整えること。その上で業務負担を軽減し、多様な人材を受け入れる体制を構築します。
まず明日から始められることは、職員との1on1面談で現場の悩みを聞くこと、業務の棚卸しで無駄な作業を洗い出すこと、補助金情報を調べることの3つです。
小さな一歩の積み重ねが、持続可能な介護現場の実現につながります。人手不足という課題に真正面から向き合い、職員と利用者の両方が笑顔になれる職場を一緒に作っていきましょう。

