デイサービス業務効率化で利用者ケア時間を30%増加させる5ステップ実装法

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デイサービスの職員は記録業務や送迎管理に費やす時間が多く、利用者への直接ケアが全業務の40~50%に留まっています。適切な業務効率化により、利用者ケアを60~70%に引き上げることができます。

本記事では、厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」に基づきながら、実際にデイサービス経営を安定させた事業所が実施した「業務負担割合の可視化」「業務分担表の具体的作成」「5S活動の実装」など、競合記事では説明されていない実装的なロードマップをお届けします。特に、赤字経営を脱却したデイサービスの事例を基に、送迎業務の効率化と安全性の両立、記録業務の削減方法まで、詳細に解説します。


デイサービスの業務構造と業務効率化の必要性

デイサービスの業務負担割合の現実

デイサービスでは送迎・記録業務・レクリエーション準備・直接介護業務など、複数の業務が並行します。厚生労働省の実態調査によると、現在の業務配分は送迎に35~40%、記録業務に15~20%、レクリエーション準備に15~20%、直接介護業務に25~30%です。

これは、本来の目的である「利用者への質の高いケア」に費やす時間が40~50%に留まり、事務作業に50%以上を費やしているということです。

令和3年度の経営実態: 独立行政法人福祉医療機構が発表した「通所介護(デイサービス)の経営状況」レポートによれば、赤字経営の事業所の割合が年々増加しています。その主要因は「人員不足のため、限られたスタッフが事務業務に追われ、サービス品質が低下する悪循環」です。

業務効率化により、この悪循環を断つことが経営安定化の決定的な条件となります。


デイサービス業務効率化の5つのメリット

1. 利用者ケア時間を30%増加で満足度向上

業務効率化により、事務業務を20時間削減できれば、その分が利用者ケアに充てられます。結果として、レクリエーション・機能訓練の質と量が向上し、利用者満足度が向上。口コミによる新規利用者も増加します。

2. 職員の残業が月25時間削減

現在、月平均35~40時間の残業をしているデイサービスが多いです。業務効率化で月25時間削減できれば、職員のWLB(仕事生活バランス)が大幅に改善され、離職率低下に直結します。

3. 赤字経営を脱却できる可能性

業務削減で人件費相当額が浮く。これを経営利益に計上するか、職員給与引き上げに充当することで、収支改善が実現します。年間300万円程度の利益改善が見込まれます。

4. サービスの標準化で質の一貫性確保

業務分担表やマニュアルを整備すると、新人職員でも統一された対応が可能になり、利用者へのサービス品質が均等化されます。これにより、利用者から「いつも同じ良いサービスが受けられる」との評価が定着します。

5. 介護報酬加算対象化の可能性

令和6年度以降、生産性向上推進体制加算などの対象に「業務改善の取り組み」が含まれています。効率化の実績を数値で示すことで、加算要件を満たす可能性があります。


デイサービス業務効率化の5ステップ実装フロー

ステップ1: 業務負担割合の可視化(2~3週間)

最初のステップは「現状把握」です。全職員に1~2週間の業務日記をつけてもらい、「誰が何をどのくらいの時間で行っているか」を30分単位で記録します。所要時間は2~3週間、難易度は低めです。

実装内容は以下の通りです。全職員の業務記録、業務を「利用者直接関わる業務」「記録・事務業務」「その他」に分類、各カテゴリーの時間配分を計算。理想は利用者ケア60~70%、事務業務15~20%、その他10~15%です。

つまずきポイントは「職員が業務記録に手を抜く」こと。「経営改善のため」という目的を明確に伝え、記録の正確性を強調しましょう。また、管理職も同じ期間、自分の業務記録を取ることで、職員の協力を引き出します。

実例では、あるデイサービスが業務可視化で「記録業務が予想より15時間も多い」ことを発見。その後の改善の重点が明確になりました。

ステップ2: 業務分担表の作成と共有(2~4週間)

可視化された課題に基づき、「誰が・何を・どのくらい」担当するかを表形式でまとめます。所要時間は2~4週間、難易度は中程度です。

業務分担表は単なる「表」ではなく、組織の「約束」です。作成時は全職員の声を聞き、「Aさんはレク準備」「Bさんはシフト管理」という具合に、明確に役割を決めます。

重要なポイントは、分担表を定期的(月1回)に見直すこと。「この業務分担で実際に効果が出ているか」「職員は満足しているか」をチェックし、改善していきます。

つまずきポイントは「強い職員に業務を集中させる」傾向です。短期的には効率が上がるように見えますが、その職員の離職で組織が機能不全に陥ります。「誰でもできる」という仕組みづくりが重要です。

実例では、業務分担表導入後、「毎日の申し送りが30分→10分に短縮」「書類作成が明確な担当者に定着」といった改善が進みました。

ステップ3: マニュアルと5S活動の実装(4~8週間)

ここからが実装段階です。業務分担に基づき、各業務の標準的な手順をマニュアル化し、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を実行します。所要時間は4~8週間、難易度は中~高です。

マニュアル作成のポイント:

  • 送迎業務:「安全第一」で、事故対応フロー、ヒヤリハット報告を記載
  • 記録業務:法的に必要な記録と任意の記録を分け、不要な記録を削減
  • レクリエーション準備:利用者に直接関わる時間を確保するため、前準備の時間短縮方法を記載

5S活動の実装:

  • 整理:古い書類の廃棄、重複書類の削除
  • 整頓:オムツ・介護用品を決まった場所に配置
  • 清掃:施設全体の定期清掃スケジュール化
  • 清潔:衛生管理の標準化
  • 躾:全職員が同じ行動をするための習慣化

つまずきポイントは「マニュアル作成に時間がかかる」こと。完璧なマニュアルを目指さず、「80点のマニュアルで始める→運用で改善」というアプローチが現実的です。

ステップ4: ICTツール導入(4~12週間)

業務分担・マニュアル化が定着してから、初めてツール導入が有効です。手作業で対応できない部分をICT化するのが原則です。所要時間は4~12週間、難易度は高めです。

導入対象ツールの優先順位は以下の通りです。

優先度1: 介護記録ソフト 月15~20時間の記録業務削減が見込まれます。法定記録と任意記録が自動分別され、プランテンプレート機能で作成時間も短縮されます。

優先度2: 送迎管理システム 配車・ルート作成の自動化で、管理職の事務業務を月5~8時間削減。ただし、送迎の安全性は最優先。ツール導入により安全性が低下しないか、十分確認することが重要です。

優先度3: シフト管理システム 職員の勤務希望を自動で最適配置。給与計算ソフトとの連動で、給与明細作成が自動化されます。

つまずきポイントは「使いにくいツール導入」です。職員がツール使用に費やす時間が、削減効果を上回ることもあります。導入前に必ず現場職員にデモを使わせ、「本当に使いやすいか」を確認しましょう。

ステップ5: 効果測定と継続改善(3ヶ月以上)

ここが最重要です。導入した改善策が、実際に効果を生んでいるか定期的に測定し、改善を続けることが成功の鍵です。所要時間は継続的、難易度は低~中です。

測定項目は以下の通りです。月間事務業務時間、月間残業時間、利用者ケア時間の割合、利用者満足度、職員離職率、事故件数。導入前と3ヶ月後、6ヶ月後で比較し、データを全職員と共有します。

成功事例では、3ヶ月後に「残業が月40時間→月15時間」「利用者ケア時間が45%→62%」など、明確な効果が数値で現れます。

つまずきポイントは「測定を忘れる」こと。測定がなければ、改善の実感がわかず、職員のモチベーション維持が難しくなります。毎月1回の「効果測定ミーティング」を経営層と現場職員で実施することをお勧めします。


デイサービス業務効率化の失敗3例と対策

失敗例1: 強い職員に業務を集約

事象: 管理者が能力の高い職員に記録業務を一任。短期的に効率が上がったように見えたが、その職員が退職。組織が機能不全に陥った。

原因: 「その職員ができるから任せよう」という短期思考。組織全体で業務を分担する仕組みができていなかった。

対処法: 業務分担表を作成し、複数人が同じ業務を担当できる体制を整備します。「誰が欠けても回る組織」を目指すことが、長期的な効率化の鍵です。

失敗例2: ツール導入が逆効果

事象: 高機能な介護ソフトを導入したが、職員が使いこなせず、結局紙に戻った。導入費用が無駄に。

原因: ツール選定時に現場職員の操作性を確認しなかった。「高機能=良い」という誤解。

対処法: 導入前に必ず現場職員にデモを体験させ、「このツール、実務で使えるか」を判断させます。シンプルなツールから始める「スモールスタート」も有効です。

失敗例3: マニュアル作成に時間を費やしすぎ

事象: マニュアル完成までに3ヶ月を要し、その間、業務改善が進まなかった。完成後も「現場と違う」という不満が出た。

原因: 完璧なマニュアルを目指し、細部にこだわりすぎた。

対処法: 「70~80点で運用開始→運用で改善」というアジャイル的アプローチ。初期マニュアルは簡潔に、実運用で見えた課題を月1回改訂する方式が現実的です。


よくある質問(FAQ)

Q1: 業務効率化で本当に赤字脱却できるのか?

A: 年間300万円程度の利益改善が見込まれます。月25時間の残業削減は、年間300時間。時給1,000円なら年間30万円。さらに記録業務削減で月10時間削減なら年間120時間、120万円相当。複合効果で数百万円の経営改善が期待できます。

Q2: 小規模デイサービス(職員5名程度)でも効率化は可能か?

A: むしろ小規模事業所ほど、業務効率化の効果が顕著です。1人あたりの生産性向上が直結するため、月10時間削減でも職員1名分の時間が浮きます。「スモールスタート」で、高価なツール導入より、業務分担表作成から始めることをお勧めします。

Q3: 職員が「業務が増える」と反発したら?

A: 反発の理由を聞くことが重要です。「初期の教育負担」で一時的に増えることは説明し、「3ヶ月後に楽になる」と明示します。同時に、効果測定データを毎月共有し、「本当に効果が出ている」ことを実感させることが有効です。

Q4: 利用者安全性を損なわずに効率化できるのか?

A: 送迎業務など「安全が最優先」の業務は、効率化ではなく「安全第一で手順の見直し」です。一方、配車管理・書類作成などの事務業務は効率化対象。安全に関わる業務と事務業務を分け、優先順位を明確にすることが重要です。

Q5: 業務改善に着手してから、効果が出るまでどのくらいかかるのか?

A: 3ヶ月が目安です。最初1ヶ月は「新しい仕組みに慣れる期間」。2~3ヶ月目に職員の操作が安定し、効果が数値で現れます。4ヶ月以降、改善を続けることで、さらなる効率化が期待できます。


まとめ

デイサービス業務効率化は、単なる「ツール導入」ではなく、業務の可視化→業務分担→マニュアル化→ツール導入→継続測定という5ステップを焦らず進めることが成功の鍵です。

特に重要なのは、利用者に直接関わる業務を60~70%に引き上げ、サービス品質を向上させながら、同時に職員の働きやすさを改善することです。赤字経営が続いているデイサービスは、今月中に「業務日記」の実施を始めることをお勧めします。

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