介護人材不足と外国人受け入れ|4つの制度、現状と限界、成功の条件

福祉経営

外国人介護人材の受け入れは、深刻な人手不足に対する「切り札」として期待されていますが、実際には部分的解に過ぎません。

2023年時点で介護分野に従事する外国人は約4万人、特定技能は1.7万人に止まっており、推計される25万人の不足に対して2%未満しか埋まっていません。

本記事では、外国人介護人材受け入れの4つの制度、現在の進捗、成功と失敗の分岐点を詳しく解説し、外国人材をどう活用すべきかについて、現実的な戦略を示します。

  1. 介護人材不足における外国人受け入れの位置づけ
    1. 外国人材が見込まれる役割
    2. 現状:進捗率20%以下の課題
  2. 外国人介護人材受け入れ4つの制度と特性
    1. 制度1:EPA(経済連携協定)——高い即戦力性、少人数
    2. 制度2:在留資格「介護」——長期定着、即戦力
    3. 制度3:技能実習「介護」——育成と技能移転、中期確保
    4. 制度4:特定技能「介護」——即戦力、転職可能
  3. 外国人材受け入れの課題と失敗パターン
    1. 課題1:言語・文化の壁
    2. 課題2:受け入れコストと教育体制の不備
    3. 課題3:制度の複雑さと手続きの負担
    4. 失敗1:「一度にたくさん採用」で対応しきれなくなる
    5. 失敗2:文化理解・相互サポート体制なし
    6. 失敗3:期待値の設定が現実と乖離
  4. 外国人材受け入れで成功する3つの条件
    1. 条件1:受け入れ前の徹底的な準備
    2. 条件2:段階的・少人数での受け入れ
    3. 条件3:複数施設での共同受け入れ
  5. よくある質問(FAQ)
    1. Q1:2026年度の25万人不足を埋めるために、外国人材はどの程度必要ですか?
    2. Q2:外国人材受け入れと日本人材採用、どちらを優先すべきですか?
    3. Q3:小規模施設(職員15人)でも外国人材を受け入れられますか?
    4. Q4:2027年度の「育成就労」制度とは、技能実習とどう違いますか?
    5. Q5:外国人材受け入れが進まない地方の小規模施設は、どのような対策をすべきですか?
  6. まとめ

介護人材不足における外国人受け入れの位置づけ

外国人材が見込まれる役割

厚生労働省は、2026年度に約25万人の介護職員が必要であり、その不足の一部を外国人材で補うことを想定しています。ただし「一部」であることが重要です。

年間6.3万人の採用が必須ですが、その内訳は想定では以下のように分解されます:

  • 既存職員の定着強化による離職減:年2〜3万人の効果
  • 未経験者採用など既存人材の確保:年1〜2万人
  • 外国人材受け入れ:年1〜1.5万人

つまり、外国人材は「採用ニーズの20〜25%を補完する」という位置づけであり、決して「人手不足の全てを解決する手段」ではありません。

現状:進捗率20%以下の課題

2023年度の介護分野外国人職員数は約4万人(全介護職員の約1.9%)です。内訳は特定技能1.7万人、技能実習1.5万人、在留資格「介護」5,300人、EPA約500人となっています。

推計による必要数(年1〜1.5万人)に対し、実績(年1000人程度)は目標達成率10%前後に止まっており、当初の期待を大きく下回っています。

この低い進捗率の背景には、制度の複雑さ、受け入れコストの高さ、言語・文化課題があります。

外国人介護人材受け入れ4つの制度と特性

制度1:EPA(経済連携協定)——高い即戦力性、少人数

対象国:インドネシア、フィリピン、ベトナム

在留期間:原則4年間(介護福祉士取得時は延長可)

要件:自国で一定の教育・経験を有する人材

特徴:自国での厳格な選別により、即戦力性が高い

メリット:入国後すぐに業務に従事できる人材が多く、教育コストが低い

課題:受け入れ人数が限定的(年数百人程度)で、採用条件が厳しい

2026年の現状:約500人程度、進捗が最も遅い

制度2:在留資格「介護」——長期定着、即戦力

対象者:介護福祉士資格保有者

在留期間:制限なし(永続的就労可能)

要件:介護福祉士資格の取得が必須

メリット:長期定着が期待でき、質の高い人材確保が可能。資格保有者のため即戦力

課題:養成施設の外国人留学生数が限定的(年数千人程度)

2026年の現状:約5,300人、成長ペースが緩い

制度3:技能実習「介護」——育成と技能移転、中期確保

在留期間:通常3年、最長5年(実習終了後帰国が原則)

要件:母国での基礎教育と日本語能力(初級程度)

特徴:発展途上国への技能移転が目的

メリット:確定した期間(3〜5年)の人材確保が保証されやすい

課題:帰国が原則のため長期定着は困難。2027年度から「育成就労」制度に変更予定

2026年の現状:約1.5万人、比較的進捗している

制度4:特定技能「介護」——即戦力、転職可能

在留期間:最大5年(転職により期間延長も可能)

要件:介護技術試験・日本語試験に合格した人材

特徴:人手不足解決が目的で、即戦力を想定

メリット:対象者が幅広く、比較的採用しやすい制度。転職可能で本人の選択肢が広い

課題:教育負担が大きく、5年で帰国する前提

2026年の現状:約1.7万人、最も進展している制度

外国人材受け入れの課題と失敗パターン

課題1:言語・文化の壁

外国人職員が日本で働くには、「単なる日本語能力」ではなく「介護専門用語」「高齢者対応の言葉遣い」「文化的配慮」が必須です。

例えば、日本は「暗黙の了解」「空気を読む」文化(ハイコンテクスト文化)ですが、外国は「はっきり言う」文化(ローコンテクスト文化)が多く、コミュニケーション方法の違いが誤解を招きやすいです。

受け入れ施設の報告では、「外国人職員との指導に当たった日本人職員のストレスが非常に大きかった」という事例も多く報告されています。

課題2:受け入れコストと教育体制の不備

外国人材受け入れには、言語教育、介護技術研修、生活支援など多くのコストと時間がかかります。特定技能受け入れ時の費用は100万〜200万円程度(複数施設共同で50〜100万円程度)と高額です。

受け入れ後、教育体制が不十分だと、外国人職員は3ヶ月以内に離職し、すべての投資が無駄になります。

課題3:制度の複雑さと手続きの負担

4つの制度それぞれに要件、手続き、期間が異なり、施設が独自に対応することは実質不可能です。受け入れ機関(仲介業者)の利用がほぼ必須で、これが追加コストになります。

失敗1:「一度にたくさん採用」で対応しきれなくなる

複数の外国人職員を同時に受け入れると、同時多発的にトラブルが発生し、対応しきれなくなります。小規模施設では特に危険です。

対処法:最初は1人、その後の定着を確認してから追加受け入れを進める段階的アプローチ

失敗2:文化理解・相互サポート体制なし

言語教育だけに注力し、文化的配慮やメンター制度がないと、外国人職員が孤立して離職します。

対処法:文化理解研修、相談窓口設置、既存職員によるメンター制度の整備

失敗3:期待値の設定が現実と乖離

「人手不足が解決する」という過度な期待で受け入れると、期待と現実のギャップから施設と外国人職員の双方が疲弊します。

対処法:「既存職員の負担軽減の一部」「採用ニーズの20%補完」という現実的目標設定

外国人材受け入れで成功する3つの条件

条件1:受け入れ前の徹底的な準備

受け入れ前に、以下を実施することが鍵です:

  • 施設全体での文化理解研修
  • メンター職員の事前選定と訓練
  • 生活支援体制(住まい探し、銀行口座開設など)の整備
  • 日本語・介護技術教育カリキュラムの設計

特に「施設全体の心構え」がないと、現場の混乱が避けられません。

条件2:段階的・少人数での受け入れ

1人目の定着確認→2人目受け入れ、という段階的アプローチにより、トラブルを最小化できます。

施設規模(職員数)に応じた受け入れペース:

  • 職員20人未満:年1人程度
  • 職員50人前後:年2〜3人程度
  • 職員100人以上:年3〜5人程度

条件3:複数施設での共同受け入れ

同じ地域の複数施設が協力し、共同で外国人材受け入れを進めれば、費用負担の分散、相互サポート、効率的な研修実施が可能です。

地域全体の人手不足緩和にも貢献し、個別施設の負担が大幅に軽減されます。

よくある質問(FAQ)

Q1:2026年度の25万人不足を埋めるために、外国人材はどの程度必要ですか?

A:最大でも全体の20〜25%程度(年1.5万人規模)と想定されており、完全解決にはなりません。残りは国内人材の定着強化、未経験者採用で対応する必要があります。

Q2:外国人材受け入れと日本人材採用、どちらを優先すべきですか?

A:定着強化→未経験者採用→外国人材受け入れ、この順序です。国内人材の確保を最大限進めた上で、外国人材は補完的に活用することが現実的です。

Q3:小規模施設(職員15人)でも外国人材を受け入れられますか?

A:可能ですが、慎重な準備が必須です。受け入れ前に既存職員の同意、メンター制度の整備、生活支援体制の確保を完了させることが重要です。無理な受け入れは既存職員の疲弊につながります。

Q4:2027年度の「育成就労」制度とは、技能実習とどう違いますか?

A:育成就労は技能実習の後継制度で、より柔軟な転職や期間延長が可能になる予定です。詳細は厚生労働省の発表を確認してください。

Q5:外国人材受け入れが進まない地方の小規模施設は、どのような対策をすべきですか?

A:地域の複数施設での共同受け入れ、自治体による受け入れ支援の活用、外国人材紹介機関との連携が有効です。1施設だけでは困難な課題も、地域連携で解決可能です。

まとめ

外国人介護人材の受け入れは、深刻な人手不足への「部分的解」です。2026年度の25万人不足の約20〜25%を補完できる見込みですが、残り75〜80%は国内人材の定着強化と採用拡大で対応する必要があります。

受け入れを成功させるには、事前準備、段階的アプローチ、複数施設連携が不可欠です。現実的な期待値を設定し、既存職員と外国人職員の双方が働きやすい環境づくりに注力することが、持続的な人材確保につながります。

外国人材は「銀の弾」ではなく、国内人材確保の補完的手段と位置づけ、戦略的に活用してください。

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