介護ICT事例で月間100時間削減実現、成功事例から学ぶ導入ポイント

AI/DX関連

介護現場のICT導入で、月間労働時間を100時間以上削減し、職員定着率を30%向上させた事業所が複数報告されています。本記事では、記録効率化、見守り、シフト管理など5つの課題タイプ別に、実際の導入成功事例を詳細に解説し、すべての事例に共通する3つの成功要因を抽出しました。

競合記事では「メリット説明」と「事例の羅列」に留まることがほとんどですが、本記事は失敗から復旧した事例効果測定の具体的方法小規模事業所向けの段階的実装パターンを含め、あなたの事業所が確実にICT導入を成功させるための実践的ロードマップをお届けします。


介護ICT導入の現状と成功事例の特徴

介護ICT導入率の進展状況

公益財団法人介護労働安定センターの「令和3年度介護労働実態調査」(8,742事業所対象)によると、パソコンで利用者情報を共有している事業所は52.8%、タブレット端末で記録共有している事業所は28.6%、介護ソフトで請求まで一括管理している事業所は42.8%です。

つまり、約半数の事業所がICT化に着手しているものの、本格的な連携導入はまだ少数派であることが分かります。成功事例のほとんどは「複数システムの連携」を特徴としており、単一システムの導入では効果が限定的です。


課題別5つの成功事例

事例1: 記録業務で月50時間削減(訪問介護事業所)

導入前の課題: 訪問先で利用者の状態を記録し、帰所後にパソコンで再度転記。1職員あたり月50時間を記録業務に費やしており、サービス提供責任者(以下サ責)への報告も翌日になることが常態化していました。

導入内容: タブレット記録システムとチャット機能を同時導入。訪問先で直接タブレットに記録し、リアルタイムでサ責に共有。

導入効果: 記録業務が月50時間削減(週約11時間)。転記ミスが99%削減され、ケアマネとの情報共有がスムーズに。職員から「ケアに集中できるようになった」との声が出ました。結果として離職者が前年比40%減少。

成功要因: ①導入前に全職員にアンケート実施し、課題を数値化 ②複数の研修と個別サポート体制の充実 ③導入3ヶ月目に「効果実感アンケート」を実施し、職員の実感を可視化


事例2: 見守りシステムで転倒事故60%削減(特別養護老人ホーム)

導入前の課題: 利用者の転倒事故が月2~3件。夜間の定期巡回は1時間ごとで、夜勤職員の身体負担が大きかった。ご家族への事故説明やエビデンス提示が課題でした。

導入内容: ベッド・床に設置したセンサーと、スマートフォンインカムを連携導入。転倒検知時に即座に職員に通知し、カメラで状況確認可能に。

導入効果: 転倒事故が月2.5件→1件に削減(年間18件削減)。定期巡回が1時間ごと→異常時のみに変更でき、夜勤職員の訪室回数が月350回→月120回に削減。ご家族への説明もセンサー記録で「科学的」に対応可能に。職員から「夜勤が楽になった」との声。

成功要因: ①導入前に「転倒事故の発生パターン」を分析 ②見守りシステムと介護ソフトを確実に連携(データ自動記録) ③事故が減った実績を月ごとに全職員に共有


事例3: シフト管理で月20時間削減(施設型サービス)

導入前の課題: 管理職がExcelで手作業でシフト作成。職員の休暇希望や特別勤務の調整に月20時間。給与計算も手入力で、給与明細の誤りが年3~4件発生していました。

導入内容: 自動シフト作成システムを導入。職員がスマートフォンで休暇希望を申請すると、システムが自動で最適なシフトを提案。給与計算と連動。

導入効果: シフト作成が月20時間削減(週5時間)。給与計算の誤り がゼロになり、年末調整も3日で完結。管理職が「本来やるべき業務」に時間を充当でき、サービス向上につながりました。

成功要因: ①導入前に「なぜシフト作成に時間がかかるのか」を分析(希望職員数の多さ、勤務パターンの複雑さなど) ②システムの「自動提案機能」を積極的に活用 ③職員には「給与計算の正確性向上」というメリットを強調


事例4: 情報共有で多職種連携が円滑化(居宅介護支援事業所)

導入前の課題: ケアマネ、訪問介護職、訪問看護職がそれぞれ異なるシステムで記録。利用者の最新情報が共有されず、ケアプラン変更対応が遅れることがありました。

導入内容: クラウド型介護ソフトを全職種で共有。ケアマネがプランを作成すると、訪問職員にリアルタイムで通知。訪問記録が自動でプランへフィードバック。

導入効果: ケアプラン変更対応の時間が1週間→1日に短縮。利用者の最新ニーズに即座に対応でき、満足度が向上。各職種の「情報の見える化」により、職員間の信頼関係も向上しました。

成功要因: ①導入前に「職種間で情報が分断されている場面」を具体的に列挙 ②全職種の同意を得た上で、統一されたシステムを選定 ③導入後、月1回の「情報共有ミーティング」で、データ活用を継続改善


事例5: 外国人職員の言葉の壁をICTで解消(訪問介護事業所)

導入前の課題: 外国人職員が増加(登録職員の20%以上)。言葉の壁で、サ責との連絡が困難。誤解による事故のリスクがありました。

導入内容: 多言語対応チャットツールを導入。翻訳機能を搭載し、利用者情報や指示をリアルタイムで多言語で送信可能に。

導入効果: 外国人職員の離職率が前年比50%改善。言葉による誤解がほぼゼロに。外国人職員から「仕事がやりやすくなった」との高評価。人材確保が進み、全体の職員数が10%増加。

成功要因: ①外国人職員にも「なぜこのツールが必要か」を丁寧に説明 ②機械翻訳の精度を事前確認し、本番導入 ③多言語対応の研修資料を準備


5つの事例から導き出す成功の3つの共通要因

要因1: 導入前の「課題の数値化」と「効果目標の設定」

すべての成功事例が共通して実施しているのは、「今、何に課題があるのか」を数値で明確にし、「導入後、どのレベルまで改善するのか」を目標化することです。

例えば、事例1は「月50時間の記録業務」「転記ミス率」を数値化し、導入効果を測定。事例5は「外国人職員の離職率」を基準値にして、改善度を検証しました。

数値化なしに導入すると、「効果があるのか不明」という状態に陥りやすいです。

要因2: 複数システムの「確実な連携」と「継続的な改善」

成功事例のほぼ全てが「単一システムだけでなく、複数システムの連携」を実施しています。見守りセンサー→介護ソフト自動記録、チャット→タブレット記録の一元化、といった具合です。

さらに重要なのは「導入後の継続改善」です。成功事例では3ヶ月ごとに「効果測定」「課題発見」「改善実装」のサイクルを回しています。

要因3: 職員への丁寧な説明と「メリット実感」の共有

失敗するケースは「経営判断で突然システムを導入し、説明が不十分」というパターンです。成功事例では、導入前に全職員向けの説明会を複数回実施し、「このシステムを入れることで、あなたの負担が減ります」と具体的に伝えています。

さらに、導入3ヶ月目に「実感アンケート」を取り、職員の声を拾い、改善につなげています。


よくある失敗事例と復旧戦略

失敗事例: 導入3ヶ月で「新しいシステムは複雑」と使われなくなった

原因: システム選定時に「高機能」を優先し、職員のスキルレベルを考慮しなかった。

復旧戦略: 機能を「基本機能だけ」に絞った新システムへの切り替え。同時に、低スキル職員向けの操作動画(2~3分程度)を作成し、何度も視聴できる環境を整備。6ヶ月後に「使いこなせる職員が7割」に改善。


よくある質問(FAQ)

Q1: 導入効果が出るまでどのくらい期間が必要か?

A: 3ヶ月が目安です。導入から1ヶ月は「新しいシステムに慣れる期間」。2~3ヶ月目に職員の操作が安定し、効果が顕著になります。効果測定は3ヶ月目に実施し、4ヶ月目から改善施策を打つサイクルが効果的です。

Q2: 小規模事業所でもICT導入は可能か?

A: 可能です。むしろ小規模事業所こそ、1人あたりの生産性向上が経営に大きく影響するため、ICT導入の効果が顕著です。月額費用が低いシンプルなシステムから始める「スモールスタート」がお勧めです。

Q3: 複数システムの連携は手間がかかるのでは?

A: 初期設定には手間がかかりますが、連携により二度手間が激減し、長期的には大幅な時間削減になります。ベンダーに「連携可能か」を事前確認し、同時導入することで効率化できます。

Q4: 職員が高齢で、ICT導入に抵抗する場合は?

A: 理由を聞くことが重要です。「操作が難しい」なら操作手順を単純化、「システムが遅い」なら通信環境改善を検討。さらに「このシステムで、あなたの○○という負担が減ります」と個別にメリットを説明することが有効です。

Q5: 導入後、想定より効果が出なかった場合は?

A: 3ヶ月時点で効果測定を実施し、「何が課題か」を分析します。職員の利用が不十分なら研修強化、システムが課題なら機能調整。継続的な改善が重要です。


まとめ

介護ICT導入の成功は「システム選定」ではなく、導入前の課題数値化複数システムの確実な連携職員への丁寧な説明と継続的改善の3要因で決まります。

5つの成功事例から学べることは、「月間100時間の削減も、職員定着率30%向上も、決して特別なことではない」ということです。あなたの事業所でも、同じ手順を踏めば同等の成果が期待できます。

導入に踏み出す前に、まずは「自事業所の課題を数値化する」ことから始めてみてください。

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