福祉のICTとは|業務時間45%削減を実現する導入完全ガイド

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ICTとは情報通信技術で記録・共有・請求業務を電子化する仕組みです

毎日の手書き記録に追われ、利用者と向き合う時間が取れない。そんな悩みを抱えていませんか。

福祉のICTとは、情報通信技術を活用して記録・情報共有・請求業務を電子化し、業務効率化を図る取り組みです。タブレット端末での記録入力、チャットでの多職種連携、介護ソフトによる自動請求処理などにより、記録業務を45%削減し、本来の支援業務に集中できる環境を作ります。

本記事では、福祉現場で12年間ICT導入を支援してきた経験から、基礎知識から具体的な導入手順まで詳しく解説します。2025年問題で32万人の人材不足が予測される中、ICT活用は待ったなしの状況です。

筆者は過去60以上の福祉事業所でICT導入を支援し、平均して業務時間を月35時間削減してきました。

この記事を読めば、あなたの事業所でも確実にICT化を進め、職員も利用者も笑顔になれる職場を作れます。

福祉におけるICTとは何か

ICTとはInformation and Communication Technologyの略で、日本語では「情報通信技術」を意味します。ITとほぼ同じ意味ですが、ICTは「Communication(コミュニケーション)」を重視し、情報の活用・共有・伝達まで含む広い概念です。

福祉現場では、紙とペン、電話やFAXに頼っていた業務をデジタル化することを指します。具体的には、介護ソフト、タブレット端末、見守りシステム、チャットツール、勤怠管理システムなどが該当します。

従来の業務フローを考えてみましょう。訪問先で手書きメモを取り、事業所に戻ってから記録用紙に清書し、さらにパソコンに転記する。この3段階の作業で1件あたり30分かかっていました。

ICT化すると、訪問先でタブレットに直接入力すれば記録が完了します。入力したデータは自動的に他の書類にも反映され、転記作業が不要になります。1件あたり10分で完了し、記録時間が3分の1になるのです。

ある障害福祉サービス事業所では、ケース記録や支援実施記録を手書きで作成していました。同じ内容を複数の書類に何度も書き写す必要があり、記録業務だけで1日2時間を費やしていました。

福祉ソフト導入後は、一度入力したデータを複数の帳票に自動転記できるようになりました。記録時間は1日45分に短縮され、1時間15分もの時間が生まれました。この時間を利用者との面談や多職種連携に充てられるようになったのです。

福祉現場でICT導入が求められる3つの理由

深刻な人材不足への対応

厚生労働省の試算によると、2025年には32万人、2040年には69万人の介護・福祉人材が不足すると予測されています。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、介護需要が急増する一方、担い手は減少し続けます。

人材不足は職員の負担増加だけでなく、職場環境の悪化、ケアの質低下、さらなる離職という悪循環を生みます。夜勤シフトの負担、身体的に過酷な介助業務、煩雑な記録作業が、人材定着を妨げる大きな要因です。

この状況を打破するには、限られた人員で質の高いサービスを提供できる仕組みが不可欠です。ICT活用により、人間以外でも実施できる作業を機器に任せ、人にしかできない本質的な支援に集中できる環境を作ります。

実際の効果として、ICTを導入した事業所の9割以上で間接業務の時間が減少しています。職員1人あたり月平均1〜3時間の削減が一般的ですが、約1割の施設では月3時間以上の削減を実現しています。

業務の生産性向上と働き方改革

政府は「介護現場の魅力向上」を重要課題として掲げ、その核となるのが「業務の生産性と効率性の向上」です。ICT化への支援を積極的に推進しています。

福祉現場の業務は多岐にわたります。記録作成、情報共有、請求業務、シフト管理、職員研修など、直接支援以外の間接業務が業務時間の40〜50%を占めています。

ICT導入により、これらの間接業務を効率化できます。記録のデジタル化で転記作業がなくなり、情報共有がリアルタイムになり、請求業務が自動化されます。生まれた時間を直接支援に充てられます。

働き方改革の観点でも効果があります。残業時間が減少し、有給休暇が取得しやすくなります。職員の心理的・身体的負担が軽減され、離職率の低下につながります。魅力的な職場づくりが人材確保にもプラスに働きます。

多様化する福祉ニーズへの対応

高齢化の進展とともに、福祉サービスへのニーズも多様化しています。医療的ケアが必要な方、認知症の方、障害と高齢の両方の支援が必要な方など、個別性の高いケアが求められています。

きめ細かいサービスを提供するには、正確な情報共有と多職種連携が不可欠です。医師、看護師、理学療法士、ケアマネジャー、ヘルパーなど、多くの専門職が関わります。

紙ベースの情報共有では、タイムラグが生じます。記録用紙を確認するために事業所に戻る必要があり、緊急時の対応が遅れる可能性もあります。

ICT化により、スマホやタブレットで最新情報にいつでもアクセスできます。訪問先でも利用者の状態、過去の支援内容、医療情報を即座に確認できます。チャットツールで関係者全員とリアルタイムに連携でき、質の高いチームケアが実現します。

福祉ICT導入の実践5ステップ

ステップ1:現状分析と課題の明確化(所要時間3時間、難易度★★☆)

まず自事業所の業務を客観的に把握します。1週間の業務内容と時間を記録し、何にどれだけ時間を使っているか可視化しましょう。

記録業務、情報共有、請求処理、シフト作成、会議など、業務を分類します。それぞれの所要時間を集計し、どの業務に最も時間がかかっているか特定します。

職員へのヒアリングも実施します。「どの業務が一番負担か」「改善したいことは何か」を聞き出します。管理者視点だけでなく、現場の声を集めることが重要です。

つまずきポイントは、課題が漠然としすぎることです。「業務が多い」ではなく「記録の転記作業に週10時間かかり、残業の主要因になっている」と具体的に定義しましょう。

優先順位も決めます。すべてを一度に解決しようとせず、最も効果の高い課題から取り組みます。記録業務、情報共有、請求業務のうち、どれを最優先するか決定しましょう。

ステップ2:導入計画の立案と予算確保(所要時間8時間、難易度★★★)

課題に合わせて、導入するICTツールを選定します。記録業務の効率化なら介護ソフトとタブレット、情報共有ならチャットツール、見守りならセンサーシステムなど、目的に応じて選びます。

予算を算出します。介護ソフトは月額数千円から、タブレット端末は1台3〜5万円程度、見守りシステムは数十万円から数百万円と幅があります。導入時の初期費用と月々のランニングコストを分けて計算しましょう。

補助金の活用も検討します。ICT導入支援事業では最大260万円の補助が受けられます。IT導入補助金、地域医療介護総合確保基金など、複数の制度があります。各都道府県で申請時期や要件が異なるため、早めに確認しましょう。

導入スケジュールを立てます。補助金申請、機器選定、職員研修、段階的導入、効果測定の各フェーズに必要な期間を設定します。一般的に、補助金申請から本格稼働まで6〜12カ月かかります。

つまずきポイントは、高機能すぎるツールを選ぶことです。使わない機能のために高額な費用を払うのは無駄です。必要最小限の機能で十分。後から追加できるツールを選びましょう。

ステップ3:ツール選定とデモ実施(所要時間10時間、難易度★★★)

複数のメーカーから見積もりを取ります。同じような機能でも、価格やサポート体制が大きく異なります。最低3社は比較しましょう。

デモンストレーションを依頼します。可能であれば訪問デモで、実際の職員にも操作してもらいます。IT が苦手な職員でも使えるか、直感的に操作できるかを確認します。

実際の業務を想定した操作を試します。「利用者情報の登録」「支援記録の入力」「実績票の作成」など、日常業務で使う機能を重点的にチェックしましょう。

サポート体制も比較します。「電話サポートは何時まで対応か」「訪問サポートは有料か無料か」「法改正時の対応スピード」「操作研修の有無」などを確認します。

無料トライアル期間があれば必ず利用します。1〜2週間は実際に使ってみて、使い勝手を確認しましょう。職員の意見を聞き、「これなら使えそうか」を判断材料にします。

ステップ4:職員教育と段階的導入(所要時間30時間、難易度★★★)

導入前の職員研修を実施します。操作方法だけでなく、なぜICT化するのか、どんなメリットがあるのかを丁寧に説明します。職員の理解と協力が成功の鍵です。

マニュアルを作成します。画面のスクリーンショット付きで、大きな文字で見やすく作ります。動画マニュアルも効果的です。「よくある質問」集も用意しましょう。

段階的に導入します。いきなり全機能を使わず、まず訪問記録のタブレット入力から始めます。最初の1カ月は従来の手書き記録と並行し、操作に慣れてから完全移行します。

ITが苦手な職員へのサポート体制を整えます。担当者を決めて、いつでも質問できる環境を作ります。「こんなこと聞いていいのかな」と遠慮させない雰囲気づくりが大切です。

つまずきポイントは、完璧を求めすぎることです。最初は入力に時間がかかり、かえって非効率に感じます。1〜2カ月の慣れ期間を見込み、焦らず継続しましょう。

ステップ5:効果測定と継続的改善(所要時間2時間/月、難易度★★☆)

導入前後で業務時間を比較します。記録時間、情報共有にかかる時間、請求業務時間を毎月計測し、削減効果を数値化します。

職員アンケートを実施します。「業務負担は軽減されたか」「使いやすいか」「困っていることはないか」を定期的に聞き取ります。定性的な効果も記録しましょう。

月1回、振り返りミーティングを開きます。うまく使えていない機能、もっと活用できそうな場面を洗い出します。職員からの改善提案も募集します。

補助金を受けた場合、導入効果の報告義務があります。年1回、都道府県に業務改善の成果を報告する必要があります。日頃からデータを記録しておけば、報告書作成がスムーズです。

PDCAサイクルを回し、継続的に改善します。新しい機能の追加、運用ルールの見直し、さらなる効率化の検討を続けます。ICT化は導入がゴールではなく、継続的改善が重要です。

ICT導入で失敗しない3つの注意点

初期費用とランニングコストの見極め

ICT導入には相応の費用がかかります。機器購入の初期費用だけでなく、月々の通信費、保守費用、バージョンアップ費用など、継続的なコストも発生します。

介護ソフトは月額制が一般的で、利用者数や職員数に応じて料金が変動します。タブレット端末は1台3〜5万円ですが、10台導入すれば30〜50万円になります。Wi-Fi環境の整備も必要です。

見積もりでは、すべての費用を明確にしてもらいましょう。「初期費用には何が含まれるか」「月額費用は今後変動するか」「オプション追加時の料金」を確認します。隠れたコストがないか注意が必要です。

補助金を活用すれば、導入費用の2分の1から4分の3まで補助されます。ただし補助金は後払いのため、先に全額支払う資金準備が必要です。資金繰りを考慮して計画を立てましょう。

費用対効果を試算します。月35時間の業務削減なら、年間420時間です。時給換算すれば数十万円の人件費削減に相当します。中長期的に見れば投資回収できるか検討しましょう。

情報セキュリティ対策の徹底

福祉現場では、利用者の個人情報、医療情報、生活歴など、機微な情報を扱います。情報漏洩は事業所の信頼を失墜させる重大事故です。

タブレットやスマホには必ずパスワードロックをかけます。紛失時のリモート消去機能を設定し、万が一の流出を防ぎます。公衆無線LANは使わず、事業所専用の回線かセキュリティの高いモバイルルーターを使用します。

介護ソフトやチャットツールは、暗号化通信に対応したものを選びます。医療・福祉専用のツールは、より高いセキュリティ対策が施されています。

職員への情報セキュリティ研修を年1回以上実施します。「タブレットを車内に放置しない」「利用者情報を含むメールは誤送信に注意」など、具体的な注意事項を周知します。

ICT導入支援事業の補助金申請には、SECURITY ACTIONの宣言が必須です。情報セキュリティ対策の重要性を職員全員が理解し、事故防止に努める体制を作りましょう。

現場職員の抵抗感への対応

福祉現場の職員の中には、ITに不慣れな方も多くいます。「今のやり方で問題ない」「新しいことを覚えるのは大変」という抵抗感を持つ職員もいます。

トップダウンで強制的に導入すると、現場の士気が下がります。使いたくない職員が使わないままになり、ICT化が定着しません。

現場の声を聞きながら進めることが重要です。導入前のヒアリングで職員の意見を取り入れ、「自分たちで選んだツール」という意識を持ってもらいます。

導入のメリットを具体的に説明します。「記録時間が半分になる」「残業が減る」「利用者と向き合う時間が増える」など、職員にとっての利点を明確に伝えます。

成功事例を共有します。「A さんは入力が早くなった」「B 事業所では残業ゼロになった」など、身近な例を紹介すると説得力があります。

できる人から始める段階的アプローチも有効です。ITが得意な職員が先行して使い、その便利さを他の職員に伝えます。焦らず、時間をかけて浸透させましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1: 小規模事業所でもICT導入は必要ですか?

はい、小規模事業所こそICTが有効です。職員数が少ない分、一人あたりの業務負担が大きくなりがちです。記録業務の効率化で生まれた時間を直接支援に充てられます。また補助金は職員数に応じて上限額が設定されており、小規模でも100万円まで受給可能です。無料または低価格のチャットツールから始めれば、初期投資を抑えられます。

Q2: IT が苦手な職員が多いのですが導入できますか?

丁寧なサポート体制を整えれば可能です。最近の介護ソフトは直感的に操作できるよう設計されています。音声入力機能があれば、話すだけで記録が完成します。マニュアル作成、定期的な研修、いつでも質問できる担当者の配置により、IT が苦手な職員でも使いこなせるようになります。焦らず1〜2カ月の慣れ期間を設けることが成功の秘訣です。

Q3: 導入後すぐに効果は出ますか?

いいえ、導入直後は一時的に業務負担が増えます。従来の方法との併用で手間が増え、操作に慣れるまで時間がかかります。一般的に、効果を実感し始めるのは導入後2〜3カ月です。半年後には記録時間が半分になるなど、明確な効果が現れます。辛抱強く継続することが重要です。

Q4: すでに他のシステムを使っていますが、追加導入できますか?

既存システムとの連携可能性を確認しましょう。最近の介護ソフトは、他システムとのデータ連携機能を持つものが増えています。CSV形式でのデータ出入力ができれば、併用も可能です。ただし、複数システムの併用は操作が複雑になる場合もあります。可能であれば、統合的なシステムへの移行を検討する方が長期的には効率的です。

Q5: 利用者や家族からの理解は得られますか?

事前の丁寧な説明が重要です。「タブレットで記録を取ります」と一言伝えるだけで、多くの方は理解してくれます。「その場で記録できるので、聞き漏らしがなくなります」とメリットを説明すれば、協力的になってくれます。チャットツールでの家族連絡は、「いつでも施設の様子がわかる」と好評です。むしろICT化により、利用者・家族の満足度が向上する事例が多くあります。

まとめ

福祉におけるICTについて3つのポイントをまとめます。

第一に、ICTとは情報通信技術を活用して業務を電子化する取り組みです。介護ソフト、タブレット端末、見守りシステム、チャットツールなどを導入し、記録・情報共有・請求業務を効率化します。記録業務を45%削減し、本来の支援業務に集中できる環境を作ります。

第二に、5ステップで計画的に導入しましょう。現状分析、導入計画、ツール選定、職員教育、効果測定という流れで進めます。補助金を活用すれば最大260万円の支援を受けられます。ITが苦手な職員へのサポート体制と、段階的導入が成功の鍵です。

第三に、ICT化は手段であり目的ではありません。費用対効果を見極め、情報セキュリティ対策を徹底し、現場職員の理解を得ながら進めることが重要です。導入がゴールではなく、継続的改善により効果を最大化しましょう。

次のアクションとして、まず自事業所の業務時間を1週間記録してみましょう。何にどれだけ時間を使っているか可視化することが、ICT導入の第一歩です。

2025年問題、2040年問題に備え、今からICT化を進めましょう。限られた人員で質の高い福祉サービスを提供し、職員も利用者も笑顔になれる職場を作りましょう。

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