介護職員不足の現状を3つの視点で解説│2025年最新データと地域別実態

福祉経営

「介護現場の人手不足は本当に深刻なのか?」

介護職員不足の現状は、2023年時点で約212万人の職員に対し、2026年には約28万人、2040年には約69万人が不足すると予測されています。 有効求人倍率は3.71倍と全職業平均の3倍以上で、特に訪問介護と都市部での人材確保が極めて困難な状況です。

本記事では、厚生労働省の最新データ(2025年)をもとに、介護職員不足の現状を「全国」「地域別」「サービス種別」の3つの視点から立体的に解説します。数字の羅列ではなく、データが示す「本当の意味」を読み解き、現場で実感される人手不足の実態に迫ります。

離職率は改善しているのになぜ人手不足が解消しないのか、地方より都市部が深刻な理由は何か、といった疑問にも明確に答えます。

介護職員不足の現状│3つの視点で見る実態

介護職員不足を正確に理解するには、全国平均だけでなく、地域差やサービス種別による違いも把握する必要があります。

視点1│全国レベルでの人材不足の規模

厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によると、2023年時点の介護職員数は約212万人ですが、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人が必要と推計されています。

必要数と現状の職員数を比較すると、以下の不足が見込まれます。

介護職員の不足見込み

  • 2026年度:約28万人不足(必要数の約11.7%不足)
  • 2040年度:約69万人不足(必要数の約25.4%不足)

この数字が意味するのは、10人体制が必要な現場に9人しか配置できない状況が2026年に、10人体制に7.5人しか配置できない状況が2040年に到来するということです。

視点2│地域別の人材不足格差

介護職員不足は全国一律ではなく、都市部と地方で大きな格差があります。同じく厚生労働省のデータから、都市部と地方の事例を比較すると以下のようになります。

都市部の状況

  • 2026年必要数:212,525人
  • 現状推移での職員数:184,367人
  • 不足数:28,158人(13.2%不足)
  • 2040年不足数:73,473人(28.5%不足)

地方の状況

  • 2026年必要数:35,271人
  • 現状推移での職員数:27,196人
  • 不足数:8,075人(22.9%不足)
  • 2040年不足数:14,700人(37.1%不足)

データから読み解けること: 都市部は不足「率」では地方より低いものの、絶対数では約3.6倍の不足を抱えています。一方、地方は不足「率」が高く、1施設あたりの採用難易度はより深刻です。都市部は「量」の問題、地方は「率」の問題を抱えている構造です。

視点3│サービス種別での人材不足の違い

厚生労働省「介護人材確保の現状について」では、訪問介護の人手不足感が特に強いことが報告されています。

有効求人倍率を見ると:

  • 介護関係職種全体:3.71倍(2023年度)
  • 訪問介護員:高い地域では5倍超
  • 全職業平均:1.16倍

訪問介護が特に厳しい理由:

  • 移動時間が労働時間に含まれず効率が悪い
  • 利用者宅での単独業務で精神的負担が大きい
  • 資格要件(介護職員初任者研修以上)がある
  • 非常勤・パート求人が多く安定雇用が少ない

施設介護は24時間体制で夜勤があり負担は大きいものの、チームケアで安心感があり、訪問介護ほど求人倍率は高くありません。

「離職率は改善しているのに人手不足」の謎を解く

関係機関の調査では、介護職の離職率は2019年の15.4%から2023年には13.1%へ改善しています。全産業平均(15.4%)と比較しても低い水準です。

それなのになぜ人手不足なのか?

理由1│需要の増加スピードが供給を上回る

離職率が改善しても、要介護認定者の増加スピードがそれを上回っているためです。要介護認定者数は2000年の約256万人から2023年には約708万人と2.8倍に増加。介護職員数の増加(約2倍)が需要増加に追いつきません。

理由2│採用率も同時に低下している

離職率13.1%に対し、採用率は16.9%(2023年)ですが、2019年の18.2%から低下しています。離職は減っているが新規採用も減っているため、純増人数が伸び悩んでいます。

理由3│有効求人倍率の高止まり

離職率が改善しても、業界全体での人材の奪い合いが激化しているため、個々の施設では「募集しても応募が来ない」状況が続いています。有効求人倍率3.71倍は、1人の求職者を約4事業所で取り合っている状態です。

介護職員不足の現状を示す5つの重要指標

現状を正確に把握するには、複数の指標を組み合わせて見る必要があります。

指標1│有効求人倍率の推移

2023年度の介護関係職種の有効求人倍率は3.71倍で、全職業平均1.16倍の約3.2倍です。過去10年の推移を見ると、以下のような変化を辿っています。

  • 2015年:約2.5倍
  • 2019年:約3.9倍(ピーク)
  • 2020年:約3.8倍(コロナ影響)
  • 2023年:約3.7倍

コロナ禍で一時的に下がったものの、依然として高水準で推移しています。

指標2│介護職員数の伸び率

介護職員数は年平均約3〜4万人のペースで増加していますが、必要数の増加ペース(年平均約5万人)に追いついていません。

  • 2019年:約211万人
  • 2023年:約212万人(4年で約1万人増)
  • 必要な増加:2026年までに約28万人

増加ペースが大幅に鈍化していることが、人手不足の深刻化につながっています。

指標3│従業員の過不足感

関係機関の調査では、介護事業所の約50%が「従業員が不足している」と回答しています。特に訪問介護事業所では60%以上が不足を実感しています。

客観的なデータ(有効求人倍率)と現場の実感(不足感)が一致しており、統計上だけでなく実態としても深刻な状況です。

指標4│1人あたりの利用者数

施設では職員1人あたりが担当する利用者数が増加傾向にあります。特別養護老人ホームの配置基準は利用者3人に対し職員1人ですが、人手不足により基準ギリギリの配置が常態化しています。

人手不足は数字だけでなく、1人の職員が担う業務量の増加という形で現場に現れています。

指標5│若年層と高齢職員の比率

介護従事者の19.2%が60歳以上であるのに対し、10〜20代は6.2%のみ(介護労働安定センター調査)。若手が少なく高齢化が進む構造は、今後の定年退職による人材流出を予測させます。

時系列で見る介護人材不足の変化

過去10年間の変化を振り返ることで、今後の予測精度が高まります。

2015〜2019年│人手不足が顕在化

この時期、団塊の世代が高齢者となり、介護需要が急増。有効求人倍率は2.5倍から3.9倍へ上昇し、「介護人材不足」が社会問題として認識され始めました。

2020〜2021年│コロナ禍の影響

コロナ禍により他業種での失業者が増え、介護業界への転職者が一時的に増加。有効求人倍率はわずかに低下しましたが、3.7〜3.8倍と依然高水準でした。

2022〜2023年│採用率の低下と停滞

経済活動の正常化に伴い、他業種での採用が活発化。介護業界への転職者が減少し、採用率が18.2%から16.9%へ低下。人手不足が再び深刻化しています。

2024〜2026年│2025年問題の到来

団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題が現実化。要介護者の急増により、年間約5〜6万人の介護職員増加が必要ですが、現状のペースでは約2〜3万人しか増えず、ギャップが拡大します。

2040年以降│団塊ジュニア世代の高齢化

2040年には団塊ジュニア世代が高齢者となり、現役世代が著しく減少する「2040年問題」が待ち受けています。高齢者人口はピークアウトしますが、支え手が減るため、1人あたりの負担はさらに増大します。

都道府県別│介護人材不足の地域格差

地域によって人手不足の深刻度は大きく異なります。

不足数が多い地域トップ5(2040年予測)

  • 都市部(大都市):約73,473人不足
  • 都市部(大都市):約40,000人以上不足
  • 都市部(大都市):約35,000人以上不足
  • 都市部(大都市):約30,000人以上不足
  • 都市部(大都市):約28,000人以上不足

不足率が高い地域の特徴

地方の小規模県では、絶対数は少ないものの、不足「率」が30〜40%に達する地域もあります。若年人口の都市部流出により、地方での採用はさらに困難です。

よくある質問(FAQ)

Q1: 介護職員は全国で何人不足していますか?

A: 2026年には約28万人、2040年には約69万人が不足すると予測されています。2023年時点で約212万人の職員がいますが、需要増加に追いつかない状況です。

Q2: 離職率が改善しているのになぜ人手不足なのですか?

A: 要介護者の増加スピードが職員増加を上回っているためです。離職率は13.1%と改善していますが、採用率も低下しており、純増人数が不十分な状況です。

Q3: 訪問介護と施設介護ではどちらが人手不足ですか?

A: 訪問介護の方が深刻です。有効求人倍率が5倍を超える地域もあり、単独業務の負担や非常勤求人の多さが原因で、施設介護以上に人材確保が困難です。

Q4: 都市部と地方ではどちらが人手不足が深刻ですか?

A: 都市部は不足「数」が多く、地方は不足「率」が高い状況です。都市部は約7万人不足する一方、地方小規模地域では不足率が30〜40%に達する地域もあります。

Q5: 今後介護職員不足は改善する見込みはありますか?

A: 2040年まで悪化が続く見込みです。2025年問題、2040年問題と高齢化の波が続き、現状のペースでは需要増加に供給が追いつきません。抜本的な対策が必要です。

まとめ│現状認識から始まる対策

介護職員不足の現状は、2026年に約28万人、2040年に約69万人の不足が予測される深刻な状況です。有効求人倍率3.71倍、特に訪問介護と都市部での人材確保が極めて困難で、離職率改善にもかかわらず採用率低下により人手不足は解消していません。

現状を正しく認識するための3つのポイント:

  • 全国・地域・サービス種別の3つの視点で現状を立体的に把握する
  • 数字だけでなく「なぜその数字になるのか」を理解する
  • 過去の変化と今後の予測を時系列で捉える

まずは自施設がある地域の具体的なデータを確認し、全国平均だけでなく地域特性を踏まえた対策を検討しましょう。現状認識が正確であればあるほど、効果的な対策を立案できます。

タイトルとURLをコピーしました