2026年度までに、介護業界全体で約28万人の職員不足が予測されています。厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づくと、2026年度には約240万人の介護職員が必要とされる一方、現在の増加ペースでは約212万人にとどまる見込みです。この人手不足は単なる数字ではなく、統計グラフに明確に映し出されており、その背景と推移を理解することで、事業者が取るべき対策が見えてきます。
介護業界の人手不足は、高齢化の進行と働き手の減少が同時に起こる構造的課題です。本記事では、厚生労働省など公的機関の統計グラフを詳しく読み解き、介護職員需給の実態、地域差、そしてその対策について解説します。
グラフから読み解く介護職員不足の実態
職員必要数と現状の大きなギャップ
2019年度の介護職員は約211万人でしたが、2023年度には約233万人が必要となり、2025年度では約243万人、2040年度には約280万人の需要が見通されています。グラフで見ると、右肩上がりの需要に対し、実際の職員数はこれに追いつかない曲線を描いています。
この乖離が「人手不足」の正体です。要介護者数は毎年増加し続ける一方で、働き手となる若年層は減少しているため、需給ギャップは年々拡大する傾向にあります。特に2025年から2030年にかけてが、最も深刻な時期として統計では示されています。
有効求人倍率グラフが示す採用困難性
2024年12月時点で、介護サービス職業従事者の有効求人倍率は4.25倍であり、全業種平均の1.22倍と比べて圧倒的に高い。このグラフの意味するところは、求職者1人に対して4件以上の求人がある状態です。言い換えれば、「働き手を見つけるのが非常に難しい」ことを数字で証明しています。
過去10年のグラフ推移を見ると、介護職の有効求人倍率は常に全職業平均を大きく上回り、下がる兆候が見えません。これは業界全体の恒常的な採用困難を意味しており、事業者側も新規採用だけでなく、既存職員の定着対策に力を入れる必要があることを示唆しています。
離職率グラフ:改善傾向だが課題は残存
介護職員の離職率は約15%前後で推移しており、全産業平均を上回る状況が続いています。ただし、過去のグラフと比較すると、2010年代初期の20%以上から低下傾向にあることが分かります。
この改善は処遇改善加算や職場環境整備の効果とみられていますが、完全解決には至っていません。グラフから読み取れるのは、「待遇改善の施策が一定の効果をもたらしつつも、構造的な課題は残っている」という複雑な実態です。
地域別グラフから見える人手不足のばらつき
都市部と地方の大きな開き
都道府県別の介護職有効求人倍率を見ると、地方都市では2.5倍前後、首都圏や東海、関西などの都市部ではおおむね4倍以上となっており、大きな開きが生じている。このグラフの矢印が示すのは、「人手不足は都市部ほど深刻」という直感的な予想とは逆の現実です。
東京では2026年に212,525人の介護人材が必要とされる一方、現状推移では184,367人にとどまり、28,158人不足する見込み。一方、栃木県の場合、2026年に35,271人必要に対し27,196人と、8,075人不足という計算になります。絶対不足数では東京が大きいですが、相対的な採用難度は地方が高いということが、グラフから読み取れる重要な情報です。
地域ごとの高齢化ペースの違い
グラフで見ると、都市部では高齢化は進みつつも、転入による若年層の補充がある程度は期待できるのに対し、過疎地域では高齢人口は減少するものの、それ以上に働き手が流出するため、相対的な人手不足が深刻化するパターンが見られます。地域によって、対策の優先順位が異なることを、グラフは明確に示しています。
グラフ活用による現状分析と対策検討の実践方法
ステップ1:統計グラフの入手と基本的な読み方
所要時間:30分程度
まず、厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」からグラフをダウンロードします。公式サイトで無料公開されており、以下の情報が含まれています。全国集計グラフ、都道府県別グラフ、サービス種別グラフの3種類を確認することが、全体像把握の基本となります。
グラフの横軸は年度、縦軸は職員数です。このシンプルな構成から、「2026年度までにいくら不足するか」「その後どう推移するか」が一目瞭然になります。難易度は低く、Excelなどで数値を自事業所のデータと並べて比較することも容易です。
ステップ2:自事業所・自地域の位置付けを把握
所要時間:45分程度
グラフを見た後、「自事業所は全体のどこに位置するのか」を確認します。都道府県別グラフから、まず地域の人手不足度を数値化します。有効求人倍率3倍以上なら「極度の採用困難」、2~3倍なら「採用困難」、2倍以下なら「相対的には有利」という目安が立ちます。
次に、自事業所の職種別グラフと比較し、特に短期入所施設か訪問介護か、または特養かによって、人手不足の深刻度が異なることに気づきます。グラフの種別欄を見ると、入所系施設と訪問系サービスでは不足の進行スピードが異なることが分かり、採用戦略の優先度が決まります。
ステップ3:将来推計グラフから打ち手の時間軸を決定
所要時間:30分程度
2026年までと2040年までの2つの推計グラフを並べて見ます。最も深刻な時期は2025~2030年です。グラフから読み取れるのは、「今から3~5年が勝負」という警告です。
逆に2040年以降は、グラフの傾斜が緩和し、やや不足が改善する見通しが示されている場合もあります。これは高齢者数がピークアウトするためです。つまり、「短期的な急場対策」と「中期的な体質改善」を分けて考える必要があることを、グラフは教えています。
ステップ4:競争相手との人材争奪戦における位置付け確認
所要時間:20分程度
有効求人倍率グラフを見ながら、「求職者1人に対して何件の求人があるか」を認識します。4倍なら、求職者は「選び放題」の立場です。自事業所がこの競争で勝ち抜くには、待遇・働き方・研修制度など、複合的な魅力が必要であることが分かります。
グラフに地域別データが付いていれば、競争相手である近隣の他事業所の求人状況も推測でき、「この地域で自事業所はどう見られているか」の客観的な目安になります。
つまずきやすいポイントと対処法
グラフの読み違い: グラフの凡例をしっかり確認しないと、「職員数」と「必要数」を混同します。タイトルと軸ラベルを3回は確認してください。
地域差の過小評価: 全国平均だけを見て施策を決めると失敗します。都道府県別グラフまで必ず落とし込み、自地域の実情に合わせます。
単年度ごとの数字読み: グラフ全体の傾向を見ず、1年だけの数字で判断すると、短期的な変動に振り回されます。最低でも3年分の推移を確認する習慣をつけます。
職員数不足が生じる原因:グラフから見える背景
高齢化と出生率低下の同時進行
2040年には、85歳以上人口を中心とした高齢化と生産年齢人口の減少が同時に起こることが推計されている。このグラフの交差点こそが、介護業界の危機を象徴しています。要介護者は増える一方で、働き手は減り続けるという、解決が極めて難しい構造です。
職業イメージグラフ:「3K」のネガティブなイメージ残存
介護職員の中で「身体的負担が大きい」と回答した人は41.0%、「健康面の不安がある」が31.7%という調査結果が示すように、実際の職業経験に基づいたマイナスイメージが形成されています。このグラフが示すのは、「宣伝だけでなく、実際の労働環境改善が採用促進の不可欠要素」であるということです。
給与水準グラフ:全産業比で大きく下回る現実
介護職員の平均給与額は2022年9月時点で317,540円であり、全給与所得者の平均給与458万円と比べると大きく下回っている。グラフで見ると、介護職の給与線は他業種と大きく乖離し、処遇改善加算による上昇も緩やかです。この格差が、「介護職をキャリア第一選択肢にしにくい」という採用困難の根本原因になっています。
よくある質問(FAQ)
Q1:グラフから「2026年の人手不足数」を読み取るには、どこを見ればいい?
A:全国集計グラフの「必要数」と「推計供給数」の2本の線を比較します。2026年度の高さの差分が、その年の不足数です。おおよそ25~28万人の差が見られます。都道府県別グラフなら、自地域の数字が直接読み取れます。
Q2:有効求人倍率が4倍というのは、具体的にどういう意味?
A:求職者1人に対して、求人が4件あるということです。つまり、求職者が非常に少なく、採用側が困っている状態です。通常は1倍前後が均衡ですから、4倍は「極度の人手不足」を意味します。
Q3:グラフで見ると、2040年以降は人手不足が改善する見通しとも読めるが、本当?
A:部分的には改善する可能性があります。高齢者数自体がピークアウトするため、介護需要の伸びが鈍化するからです。ただし、総人口減少により働き手も減り続けるため、「相対的不足」は続く可能性が高いです。
Q4:地方と都市で人手不足の度合いが異なるのはなぜ?
A:都市部は高齢者も増えますが、転入による若年層流入もあります。一方、地方は高齢者の増加が緩やかな代わりに、働き手の流出が著しいため、採用倍率が高くなります。地域ごとの戦略が必要です。
Q5:グラフの数字をもとに、自事業所の採用計画を立てるには?
A:全国の不足数から自事業所の規模に応じた按分比率を算出し、「今後5年で何人採用が必要か」を逆算します。次に、有効求人倍率グラフから「採用競争の難易度」を把握し、待遇改善や採用広報の投資予算を決めます。
まとめ
介護業界の人手不足は、統計グラフから客観的に把握できる具体的な課題です。2026年度までに約28万人の不足、有効求人倍率4倍以上という現実は、「待ち」の姿勢では解決しないことを示しています。
グラフを読み解くことで、自事業所の位置付けが明確になり、採用・定着・処遇改善の各施策に優先順位がつけられます。特に、地域別・職種別のグラフから、「全国平均では見えない自地域特有の課題」が浮かび上がります。
これからの3~5年が、介護業界にとって最も重要な時期です。統計グラフを定期的に確認し、現状把握と対策検討を常に循環させることが、人手確保と職場定着につながる道筋です。

