「介護施設で働きたいけど、人手不足で大変そう…」そんな不安を抱えていませんか?
介護職の人手不足の原因は、低賃金・身体的負担・人間関係の3つが主な要因です。しかし実際には、これらが複雑に絡み合い、少子高齢化という社会構造の問題とも深く結びついています。
本記事では、行政機関の2025年最新データをもとに、介護業界の人手不足がなぜ起こるのか、その根本原因を5つの視点から徹底解説します。他業種との具体的な比較データも交えながら、現場のリアルな実態をお伝えします。
介護業界への就職・転職を考えている方、現場で働く方の両方に役立つ内容です。現状を正しく理解することで、あなた自身のキャリア選択や職場環境の改善に活かせるでしょう。
介護職の人手不足はどれくらい深刻なのか
2025年に約32万人、2040年には約69万人が不足
行政機関の最新推計によると、2026年度には約240万人の介護職員が必要とされていますが、現状では約215万人しかおらず、約25万人の不足が見込まれています。さらに2040年度には約272万人が必要とされ、約69万人もの介護職員が不足すると予測されています。
これは10人体制が必要な現場に7〜8人しか配置できない計算であり、一人ひとりの負担が確実に増加することを意味します。たとえば30名の入居者がいる施設で、本来5名必要なところを3〜4名でまわさなければならない状況が、全国の介護現場で常態化しているのです。
有効求人倍率は全職種平均の3.4倍
2025年3月時点で、介護関係職種の有効求人倍率は3.97倍に達しています。これは全職種平均の1.16倍と比較して約3.4倍という高水準です。つまり、求職者1人に対して約4件の求人がある状態で、事業所間で限られた人材を奪い合う構図になっています。
特に大都市部では7.65倍と全国平均の約2倍に達しており、都市部ほど人材確保が困難な状況です。
現場の84%が「人材不足」と回答
介護事業所を対象とした調査では、84%の事業所が人材不足を実感していると回答しています。これは単なる印象ではなく、現場が日々直面している切実な課題です。
実際に多くの施設で欠員が出ても補充できず、残された職員の負担が増加し、サービスの質低下や離職の連鎖を招いています。
介護職の人手不足を引き起こす5つの根本原因
介護業界の人手不足は、単一の要因ではなく、複数の原因が複雑に絡み合って生じています。ここでは根本原因を5つに整理して解説します。
原因1:少子高齢化による需要と供給のギャップ
要介護者は増加、働き手は減少
日本の高齢化率は2023年時点で29.1%に達し、2040年には34.8%まで上昇すると予測されています。つまり3人に1人が65歳以上という超高齢社会が目前に迫っています。
一方で、15歳〜64歳の生産年齢人口は2023年の7,395万人から、2040年には6,213万人へと約1,182万人減少する見込みです。介護を必要とする人は増え続けるのに、支える側の人口は大きく減少するという構造的な問題があります。
要介護認定者は20年で2.8倍に増加
介護保険制度が始まった2000年度の要介護・要支援認定者は約256万人でしたが、2023年度末には約708万人となり、わずか23年で約2.8倍に増加しました。高齢者人口の増加に比例して、介護サービスを必要とする人も急増しています。
この需要増加に人材供給が追いつかず、慢性的な人手不足を引き起こしているのです。
原因2:他業種と比較して低い賃金水準
平均月給は全産業より約6万円低い
行政統計調査によると、介護職を含む「医療・福祉産業」の平均賃金は約30.6万円です。これは全産業平均の約33万円と比較して月額約2〜3万円低い水準となっています。
年収にすると約24〜36万円の差が生まれます。たとえば30歳の介護職員の年収が約350万円であるのに対し、同年代の全産業平均は約380万円となり、生涯賃金では数百万円単位の差が生じる計算です。体力を使い社会的意義の大きい仕事であるにもかかわらず、経済的な報酬が見合っていないと感じる人が多いのです。
労働量に見合わない給与への不満
介護現場では入浴介助や移乗介助など体力を使う業務が多く、夜勤がある施設では生活リズムも不規則になります。さらに利用者やその家族への気配り、記録業務、ケア会議への参加など、業務内容は多岐にわたります。
こうした業務の負担と責任の重さに対して、「給与が見合っていない」と感じる職員が多く、それが離職や新規参入の妨げとなっています。
原因3:身体的・精神的な負担の大きさ
4人に1人が「身体的負担が大きい」と回答
介護業界の調査では、介護従事者の24.6%が「身体的負担が大きい」と答えています。入浴介助では40kg以上の体重を支える場面もあり、排泄介助や車いすへの移乗など、腰や膝に負担がかかる業務が1日に何度も繰り返されます。
実際に介護職員の職業病として腰痛が最も多く、ぎっくり腰やヘルニアで休職・退職する職員も少なくありません。特に高齢の介護職員にとっては身体的負担が大きく、年齢とともに仕事を続けることが困難になるケースもあります。
精神的ストレスも大きい
身体的負担だけでなく、精神的なストレスも深刻です。利用者の急変対応や認知症ケアでは気が抜けず、常に緊張状態が続きます。また夜勤では少人数で多くの利用者を見守る責任があり、心理的プレッシャーも大きくなります。
同調査では「人手が足りていない」と感じる方が約50%おり、人員不足が職員一人ひとりの負担をさらに増大させる悪循環に陥っています。休憩時間が十分に取れない、トイレに行く時間もないといった声も現場から聞かれます。
原因4:職場の人間関係とハラスメント
離職理由の上位に「人間関係の問題」
介護職員が退職を考える理由として、「職場の人間関係に問題があった」が常に上位にランクインしています。介護現場では職員同士の連携が不可欠ですが、小規模施設では特に人間関係が濃密になりやすく、一度こじれると働きづらさを感じやすい環境です。
具体的には、先輩職員からの厳しい指導、介護方針の違いによる対立、情報共有の不足によるミス、利用者家族からのクレーム対応での板挟みなどが挙げられます。上司や先輩からのハラスメント、職員間の派閥なども、本来やりがいを感じられる仕事なのに職場を離れる原因となっています。
相談窓口や支援体制の不足
多くの事業所では人間関係の悩みを相談できる窓口や、メンタルヘルスのサポート体制が十分に整っていません。問題を一人で抱え込んでしまい、心身の健康を損なってから退職に至るケースも多いのです。
人材不足が深刻な中、既存職員の離職を防ぐためにも、相談しやすい職場環境づくりが急務となっています。
原因5:社会的評価の低さとマイナスイメージ
「3K」イメージが根強く残る
介護の仕事は「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージが根強く残っており、特に若い世代からは敬遠されがちです。実際には職場環境が改善され、ICT機器の導入や処遇改善が進んでいる施設も増えていますが、そうした情報は広く認知されていません。
業務に対する社会的評価が低い
介護従事者の20.2%が「業務に対する社会的評価が低い」と回答しています。高齢者や障がい者の生活を支える社会的に価値のある仕事であるにもかかわらず、その専門性や貢献度が正当に評価されていないと感じる職員が多いのです。
資格や経験を積んでも、社会からの評価や尊敬を得にくいと感じることが、キャリア形成への意欲低下や離職につながっています。
人手不足が引き起こす5つの深刻な問題
サービスの質低下と利用者への影響
人手不足により一人の職員が担当する利用者数が増えると、一人ひとりに十分な時間をかけられなくなります。その結果、入浴や排泄の介助が不十分になったり、利用者との会話の時間が減少したりと、ケアの質が低下するリスクがあります。
本来なら毎日入浴できるはずが週2回に減らされる、レクリエーションの時間が削られるといった事例も報告されています。
職員の負担増加と離職の連鎖
人員が不足すると残された職員に業務が集中し、残業や休日出勤が増加します。心身への負担が限界を超えると離職につながり、さらに人手不足が深刻化するという悪循環に陥ります。
施設の入居待ちと事業所の閉鎖
適切な人数の職員を確保できなければ、新規の入居者を受け入れられず、待機者が増加します。最悪の場合は経営が成り立たず、事業所の閉鎖に至るケースもあります。実際に2023年には全国で数十件の介護施設が人手不足を理由に閉鎖しています。
家族介護の負担増大
施設や訪問介護が利用できなくなると、家族が介護を担う負担が増します。仕事と介護の両立が困難になり、介護離職や介護うつといった社会問題にも発展しています。
介護事故とトラブルのリスク増加
職員の疲労が蓄積すると注意力が低下し、転倒や誤嚥といった事故、服薬ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすくなります。利用者の安全を守るためにも、適切な人員配置が不可欠です。
介護業界の人手不足、国と現場の対策は?
処遇改善加算の一本化と加算率引き上げ
2024年6月、政府は介護職員処遇改善加算を一本化し、加算率を引き上げました。2024年度に2.5%、2025年度に2.0%(月額6,000円相当)のベースアップを図る施策です。制度を簡素化することで上位加算を取得しやすくし、給与改善を促しています。
ICT導入による業務効率化
勤怠管理やシフト作成アプリ、タブレットでの介護記録など、ICT技術の導入が進んでいます。行政機関の調査では、ICTを導入した施設の多くがプラスの効果を実感しており、職員の負担軽減と業務効率化に貢献しています。
外国人介護人材の受け入れ拡大
経済連携協定、在留資格制度、育成就労制度、特定技能制度など、複数のルートで外国人介護人材の受け入れが進められています。若い労働力の確保につながる施策として期待されています。
多様な働き方の導入
短時間勤務、季節限定勤務、兼業など、さまざまなライフスタイルに合わせた働き方を導入する動きが広がっています。国と地域が連携して柔軟な雇用形態を推進しています。
介護職の魅力発信と認知度向上
介護職の日を設定し、定期的な重点実施期間として、全国で就職面接会や施設見学ツアーを実施しています。SNSや動画を活用した若者向けの情報発信も強化され、介護職のポジティブなイメージ形成に取り組んでいます。
よくある質問(FAQ)
Q1: 介護職の離職率は本当に高いのですか?
A: 介護業界の離職率は13.8%で、全産業平均の14.2%とほぼ同水準です。「離職率が特別高い」というのはイメージであり、実際のデータとは異なります。
Q2: 介護職の給与は今後上がりますか?
A: 処遇改善加算の見直しにより、2024〜2025年度で月額6,000円相当のベースアップが見込まれています。給与改善の取り組みは継続的に進められています。
Q3: 介護職は体力的にきつい仕事ですか?
A: 身体的負担は確かにありますが、介護ロボットや福祉用具の導入により軽減されつつあります。職場によって環境は大きく異なるため、見学や体験を通じて実態を確認するのがおすすめです。
Q4: 人手不足の施設で働くと激務になりますか?
A: 人員配置基準を満たしている施設でも、人手不足を感じるケースはあります。求人情報だけでなく、職員定着率や残業時間など、具体的な労働環境を事前に確認することが重要です。
Q5: 未経験でも介護職に就けますか?
A: 介護職は無資格・未経験からスタートできます。資格取得支援制度を設けている事業所も多く、働きながらスキルアップできる環境が整っています。
まとめ
介護職の人手不足は、少子高齢化・低賃金・身体的精神的負担・人間関係・社会的評価の低さという5つの原因が複雑に絡み合って生じています。2025年には約32万人、2040年には約69万人もの介護職員が不足すると予測され、今後ますます深刻化する見込みです。
一方で、国や事業所による処遇改善、ICT導入、外国人材の受け入れ、柔軟な働き方の導入など、さまざまな対策が進められています。介護の仕事には確かに大変な面もありますが、それ以上にやりがいや社会貢献を実感できる魅力があります。
これから介護業界を目指す方は、職場の環境や支援制度を十分に確認し、自分に合った働き方ができる事業所を選びましょう。現場で働く方は、自分の職場環境を客観的に見直し、必要であれば改善提案や転職も視野に入れることで、より良いキャリアを築くことができます。

