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2025年4月に改正育児・介護休業法が施行され、介護離職防止のための雇用環境整備が企業の義務となります。現在、年間約10万人が介護を理由に離職する一方で、企業側の対応は進んでいません。こうした背景から、働き方改革コンサルティング企業が、経営層から一般社員まで対象とした包括的な研修を年額88万円の定額制で提供開始。介護と仕事の両立を阻む誤解を解き、組織全体の意識変革を促す取り組みが注目されています。
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団塊世代の高齢化と介護離職の急増
日本の高齢化は、企業経営において看過できない課題となっています。団塊世代が2025年には後期高齢者世代に突入し、75歳以上の約3割が要支援・要介護認定を受けているという統計があります。その総数は700万人以上に達しており、急速に高齢化が進展しているのです。
一方、企業の中核を支える団塊ジュニア世代(現在50代)の多くが、介護の当事者世代へと移行しています。現実の数字は深刻です。総務省の調査によると、介護や看護を理由に前職を離職した者は年間10.6万人にのぼります。さらに特別養護老人ホームの要介護3以上の入所待機者だけで25.3万人という状況から見えるのは、介護ニーズが急速に高まる一方で、既存の介護インフラが対応しきれていないという構造的課題です。
経済産業省の推計によると、仕事と介護の両立困難による経済損失は2030年には約9兆1792億円に達すると見込まれており、単なる個人の問題ではなく、日本経済全体に影響を与える課題となっているのです。
法改正による企業責任の明確化
2025年4月に施行される改正育児・介護休業法により、企業側の対応が法的に義務化されます。その主な内容は以下の通りです。
個別の周知・意向確認措置:介護に直面した労働者に対して、面談や書面交付を通じた個別の対応が必須となります。これまで以上に、企業側が従業員の介護状況を把握し、対応する責任が問われることになるのです。
早期段階での情報提供:40歳などの介護に直面する前の早い段階で、企業が両立支援制度に関する情報提供を行うことが求められるようになります。
雇用環境整備:研修の実施や相談窓口の設置など、介護と仕事の両立を支援する環境整備が企業の選択的な義務となります。
テレワーク選択肢の提供:要介護状態の家族を介護する労働者に対して、テレワーク利用を可能にする努力義務が課されます。
介護休暇要件の見直し:これまで勤続6カ月未満の労働者を除外する仕組みが廃止されます。
企業の準備不足と意識ギャップ
しかし、多くの企業がこの法改正への対応に遅れている現状があります。経営層の優先順位の低さや、人事担当者から経営層への説得の困難さが指摘されています。経済産業省の「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」でも、最初のステップとして「経営者自身が知ること」「経営者からのメッセージ発信」が重要とされていますが、この段階での取り組みが不十分な企業が少なくありません。
さらに、介護と仕事の両立に関する報道や情報発信は、育児と仕事の関係性に比べて約3分の1の量にとどまっており、企業や個人のリテラシー醸成が困難になっているのです。多くのビジネスパーソンにとって、「親の老い」というテーマは「できれば直視したくない」領域であり、情報収集が後回しにされてしまう傾向があります。
「介護休業」に対する誤解が離職を招く
介護対応における最大の課題は、介護休業制度に対する根本的な誤解です。多くの労働者は、介護休業を「仕事を休んで、自身が介護をするための期間」と認識しています。しかし、制度本来の目的は異なります。
介護休業は「すみやかに外部のリソース(デイサービス、訪問介護、特養老人ホームなど)を活用して、介護体制を整えるための準備期間」です。休業中に自分自身が介護を開始してしまうと、デイサービスの探索や介護保険の申請などに時間が取られ、実際の介護体制が構築できないまま期間が終了し、そのまま離職に至るという悪循環が生まれるのです。
この誤解は、個人レベルの問題ではなく、上司や人事部を含めた組織全体の「介護リテラシーの不足」に起因しています。管理職が介護休業の本質を理解していないと、法改正に対応して個別の周知・意向確認を実施する際に、育児休業の「仕事を休んで育児をする」というイメージに引きずられ、誤った情報提供をしてしまう可能性があるのです。
組織文化の転換が真の対策
適切な介護と仕事の両立支援には、単なる制度整備だけでなく、組織文化の根本的な転換が必要です。重要なのは、「誰が休んでも職場が回る」という働き方の実現です。
介護や育児、その他のライフイベントを迎えた従業員が、第一線から退かされることなく活躍し続ける組織では、全員が仕事を引き継ぎ合える体制が日常的に構築されています。このような環境では、独身社員を含めたすべての従業員が休みを取りやすく、相互にサポートできるようになります。
結果として、多様なライフイベントを経験した従業員の知識や経験が、組織全体の付加価値となり、これが企業の競争力向上につながるのです。
定額制研修サービスの登場
こうした課題を解決するため、働き方改革コンサルティング企業の株式会社ワーク・ライフバランスが、年額88万円(税込)の定額制「介護離職予防研修」サービスを2025年1月から提供開始します。受付は2024年12月3日より開始されました。
このサービスは、企業規模を問わず利用可能であり、従業員とそのパートナーは何人でも参加できるという設計になっています。既に提供されている各研修は、平均満足度97%以上の高評価を得ており、実績に基づいた質の高いコンテンツが特徴です。
包括的な7つのコンテンツ
本サービスに含まれるのは、以下の7つの要素です。
①トップメッセージサポート:経営層が介護と仕事の両立支援について発信することのハードルを下げ、効果を高めるサポート体制が用意されています。
②経営層・管理職向け研修(120分):介護と仕事の両立が必要とされる背景を理解し、「誰が休んでも回る職場作り」の具体的なノウハウを習得できます。
③全年代向け「介護と仕事の両立セミナー」(90分):すべての年代に必要な介護の基礎知識と、介護休業の本来の目的、初動段階での具体的な対応方法について学べます。
④「人生100年時代のキャリアデザイン研修」(120分):30~40代の働き盛りの層を対象に、今後のキャリア形成の中に介護を組み込んで考えるセミナーです。
⑤「介護と仕事の相談カフェ」(60分):介護の専門家を招聘し、カフェのような気軽な雰囲気の中で個別の相談に応じます。100人いれば100通りの介護があるという考えのもと、ランチタイムにリラックスして参加できるように設計されています。
⑥人事・推進者向け交流会(90分):法改正の内容を正しく理解し、導入企業同士が情報交換できる場が提供されます。
⑦e-ラーニング動画コンテンツ(20分):「介護が始まる前に知っておきたい初動のキホン」というテーマで、事前準備の重要性を学べます。自社システムへの掲載など、柔軟な活用が可能です。
講師陣の実績と専門性
本サービスの講師陣は、介護や働き方改革の領域での豊富な実績を持っています。株式会社ワーク・ライフバランスの代表取締役社長である小室淑恵は、3000社以上への経営コンサルティング実績を持ち、安倍内閣の産業競争力会議民間議員を務めるなど、国政と民間企業の両面から働き方改革を推進してきた人物です。
一方、NPO法人となりのかいご代表の川内潤は、老人ホーム紹介事業や介護職員経験を経て、市民団体を設立した社会起業家であり、育児・介護休業法改正の際には国会に参考人として出席するなど、介護領域での専門性と実務経験を備えています。
法改正対応の具体的なスケジュール
サービスの利用申込は既に受け付けられており、2025年1月28日には代表取締役社長である小室淑恵によるオンライン講演「介護で社員が辞めない組織を創る!あらゆるライフイベントとの両立も企業価値に」が開催される予定です。参加は無料で、オンライン方式での開催となります。
また、2024年12月11日には、経済産業省主催の「企業における仕事と介護の両立支援セミナー」において、小室が基調講演に登壇し、事例紹介と意見交換のファシリテーターを務める予定となっています。
企業にとっての実装の課題と展望
改正育児・介護休業法の施行まで、企業側には限られた時間しか残されていません。法規制への対応だけでなく、組織文化の転換を含めた取り組みが必要です。
本サービスが注目される理由は、経営層から一般社員まで、段階的かつ包括的にアプローチできる設計にあります。また、定額制であることで、企業規模や参加者数に左右されない利用が可能という実用性も備えています。
介護と仕事の両立支援は、単なる福利厚生ではなく、組織の持続可能性と競争力に直結する経営課題です。多様なライフイベントを経験する従業員が活躍し続ける組織を実現することで、企業価値の向上にもつながる――このような視点から、本サービスの取り組みは、今後の企業経営における一つの重要なモデルケースとなる可能性を持っています。
参照元
株式会社ワーク・ライフバランス プレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000099.000052805.html

