「介護職員が足りない」という声を耳にしたことはありませんか?実は2026年には約28万人、2040年には約57万人もの介護職員が不足すると厚生労働省が推計しています。これは現場に10人必要なのに7〜8人しか配置できない状況を意味します。この記事では、介護職員不足の最新データ、なぜこれほど深刻化しているのか5つの原因、そして国や事業所が実施している具体的な解決策まで、実践的にわかりやすく解説します。介護業界で働く方、これから介護職を目指す方、施設運営に携わる方に役立つ情報をまとめました。
なぜ介護職員が足りないのか?|現状を数字で理解する
2026年・2040年の不足人数
厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」によると、介護職員の不足は今後さらに深刻化します。2023年時点で働く介護職員は約212万人ですが、2026年度には約240万人が必要とされ、約28万人が不足する見込みです。さらに2040年度には約272万人が必要になり、不足数は約57万人にまで拡大すると予測されています。
| 年度 | 必要な介護職員数 | 現状推移での職員数 | 不足数 |
| 2023年 | 約212万人 | 約212万人 | 0万人(基準年) |
| 2026年 | 約240万人 | 約212万人 | 約28万人 |
| 2040年 | 約272万人 | 約215万人 | 約57万人 |
この数字は、介護現場で10名体制が必要な施設に8名しか配置できない状況を意味しており、現場の負担増加や介護サービスの質の低下が懸念されます。
有効求人倍率から見る人材獲得の困難さ
介護職の人材不足は数字にも明確に表れています。厚生労働省のデータによると、介護関係職種の有効求人倍率は3.97倍です。これは求職者1名に対して約4件の求人がある状態で、全職種平均の1.16倍と比較すると3倍以上の競争率です。特に都市部では7.65倍と極めて高く、都市部ほど人材確保が困難な状況にあります。
離職率は改善傾向だが定着が課題
介護職の離職率は13.6%(令和5年度)で、全産業平均の15.4%と比べて決して高くはありません。むしろ近年は改善傾向にあり、2019年の15.4%から約2ポイント低下しています。しかし問題は、採用が困難なため離職者の補充ができず、結果として人手不足が慢性化している点です。
介護職員が足りない5つの原因|なぜ人材が集まらないのか
原因1:少子高齢化による需要と供給のアンバランス
介護職員不足の根本原因は、高齢者人口の急増と労働人口の減少です。2023年時点で65歳以上の高齢者は総人口の29.1%に達し、2040年には34.8%まで上昇すると予測されています。つまり3人に1人が高齢者になります。一方で15歳〜64歳の労働人口は2023年の7,395万人から2040年には6,213万人へと約1,182万人も減少する見込みです。
さらに要介護認定者数も増加傾向にあり、2000年度の約256万人から2023年度には約708万人と約2.8倍に増加しました。介護を必要とする人は増え続けるのに、支える側の人材は減少する構造的な問題が人手不足を加速させています。
原因2:賃金水準の低さと処遇への不満
介護職の平均月給は約27.1万円(医療・福祉施設等)で、全産業平均の約33.0万円と比較して約6万円低い水準です。体力的にも精神的にも負担の大きい仕事であるにもかかわらず、賃金が低いことが人材確保の大きな障壁となっています。業界データでは、介護従事者の29.3%が「身体的負担が大きい」、22.5%が「精神的にきつい」と回答しており、仕事の負担に見合った報酬が得られていないと感じている方が多い状況です。
原因3:身体的・精神的負担の大きさ
介護の現場では、入浴介助や移乗介助など身体を使う業務が多く、腰痛や肩こりに悩む職員が少なくありません。特に夜勤がある施設では生活リズムが不規則になり、体調管理が難しくなります。また、認知症の方への対応や利用者家族とのコミュニケーションなど、精神的な負担も大きい仕事です。
約50%の介護職員が「人手が足りていない」と感じており、人員不足が一人ひとりの業務負担をさらに増加させる悪循環に陥っています。
原因4:社会的評価の低さとネガティブイメージ
介護職に対して「きつい」「汚い」「危険」という3Kのイメージを持つ人が依然として多く、職業選択の際に敬遠されがちです。業界データでは、介護従事者の20.4%が「業務に対する社会的評価が低い」と感じています。人の命と生活を支える重要な仕事であるにもかかわらず、その価値が正当に評価されていないと感じる職員が多いのが現状です。
また、未経験者や若い世代は「介護は大変そう」というイメージだけで応募をためらうケースも多く、実際の職場環境の改善が進んでいることが十分に伝わっていません。
原因5:人間関係のストレスと離職への影響
人間関係の問題は、介護職を辞める理由の上位に常にランクインしています。特に小規模施設では職員同士の距離が近く、上下関係や価値観の違いがトラブルに発展しやすい傾向があります。介護現場は協力が不可欠な仕事であり、チームワークが崩れると業務効率が低下し、利用者へのケアの質にも影響します。
人間関係のストレスが蓄積すると、介護の仕事自体は好きでも職場を離れざるを得ない状況が生まれ、人材流出につながっています。
介護職員不足を解消する5つの対策|国と事業所の取り組み
対策1:処遇改善による給与水準の引き上げ
国は介護職員の賃金を他産業並みに引き上げるため、処遇改善に力を入れています。2024年6月には処遇改善加算が一本化され、加算率も引き上げられました。これにより2024年度に2.5%、2025年度に2.0%(月額約6,000円相当)のベースアップが目指されています。
平成21年度から令和元年度までの10年間で、介護職員の月額平均賃金は約5.7万円改善されており、今後もさらなる処遇改善が期待されます。事業所が処遇改善加算を取得することで、職員の給与アップにつながり、人材の定着率向上が見込まれます。
対策2:ICT・介護ロボット導入による業務効率化
記録業務のデジタル化や見守りセンサーの導入など、ICT技術の活用により職員の負担を大幅に軽減できます。実際にICTを導入した施設の多くが、プラスの効果を感じていると回答しています。
具体的には、タブレット端末での介護記録入力により記録時間が短縮されたり、見守りシステムの導入で夜間巡回の回数が減少したりするなど、職員がケアに集中できる時間が増えています。業務の効率化は職員の身体的・精神的負担を減らし、働きやすい環境づくりに直結します。
対策3:多様な働き方の推進と柔軟なシフト体制
短時間勤務、日勤のみ、週3〜4日勤務など、多様な働き方を受け入れる体制整備が進んでいます。国は介護現場における多様な働き方導入支援事業を通じて、家庭の事情で長時間働けない方や、子育て中の方でも介護職として活躍できる環境づくりを支援しています。
妊娠中のつわり休暇や子どもの病気休暇、男性の育児休暇取得推進など、ライフステージに合わせた働き方ができる施設は人材定着率が高い傾向にあります。
対策4:外国人介護人材の積極的受け入れ
人材不足解消の切り札として、外国人介護人材の受け入れが拡大しています。EPA(経済連携協定)、在留資格「介護」、育成就労制度(旧技能実習)、特定技能1号という4つのルートがあり、それぞれの特性に応じて受け入れが可能です。
最新の調査では、外国人労働者を受け入れている介護事業所は前年度より増加しており、若い労働力の確保や利用者への刺激になるなど、プラスの効果が報告されています。言語や文化の違いへの対応は必要ですが、適切なサポート体制を整えることで、貴重な人材として活躍できます。
対策5:資格取得支援とキャリアパス構築
介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士など、段階的に資格を取得できるキャリアパスを明確にし、取得費用を事業所が負担する支援制度が広がっています。資格取得により業務の幅が広がり、給与アップにもつながるため、職員のモチベーション向上と長期定着につながります。
また、研修機会の確保やメンタルヘルス対策、相談窓口の設置など、職員が安心して働き続けられる環境整備も重要な対策です。
よくある質問(FAQ)
Q1: 介護職員が足りないと具体的にどんな影響がありますか?
介護職員不足により、施設の入居待ちが増加し必要なサービスを受けられない高齢者が増えます。また、現場では一人あたりの業務負担が増大し、休憩時間の確保が困難になったり残業が増えたりします。結果として離職が加速し、ケアの質低下や介護事故のリスク増加、最悪の場合は施設の倒産につながる可能性もあります。
Q2: 介護職は給料が低いというのは本当ですか?
介護職の平均月給は約27.1万円で、全産業平均の約33.0万円より約6万円低い水準です。しかし近年は処遇改善加算により給与は改善傾向にあり、過去10年で月額約5.7万円の賃金アップが実現しています。事業所によって給与水準に差があるため、処遇改善加算を取得している施設を選ぶことが重要です。
Q3: 介護職は離職率が高いのですか?
介護職の離職率は13.6%で、全産業平均の15.4%より低く、むしろ改善傾向にあります。「介護職は離職率が高い」というイメージと実態は異なります。ただし、人間関係や身体的負担を理由に離職する方もいるため、働きやすい職場環境を選ぶことが大切です。
Q4: 未経験でも介護職として働けますか?
介護職は資格がなくても働き始められる職種です。実務経験を積みながら介護職員初任者研修や実務者研修を取得し、段階的にキャリアアップできます。資格取得支援制度のある事業所を選べば、費用負担を抑えながらスキルアップが可能です。
Q5: 介護業界の将来性はありますか?
高齢化が進む日本では、介護サービスの需要は2040年まで増加し続けると予測されています。人手不足により求人は安定しており、全国どこでも働き口があります。また処遇改善やICT導入など労働環境の改善も進んでおり、長期的なキャリアを築ける業界です。
まとめ
介護職員不足は2026年に28万人、2040年には57万人という深刻な規模で進行します。少子高齢化、賃金の低さ、身体的負担、社会的評価の低さ、人間関係の問題という5つの原因が複雑に絡み合っています。しかし、国や事業所は処遇改善、ICT導入、多様な働き方推進、外国人人材受け入れ、資格取得支援という5つの対策を強化しており、介護現場の環境は確実に改善しています。
介護職を目指す方は、処遇改善加算を取得している事業所や、ICT導入が進んでいる施設、資格取得支援制度のある職場を選ぶことで、働きやすい環境を見つけられます。介護は社会に不可欠な仕事であり、やりがいを持って長く働ける職業です。まずは入門的研修や職場見学に参加し、実際の介護現場を知ることから始めてみませんか。

