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一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構が2025年12月15日に刊行した「次世代サービスロボット白書2026年版」では、サービスロボット産業がこれまでの単純なタスク自動化の枠組みを超え、人間と深い関係性を構築する時代へ踏み込んでいることが明らかにされている。総2,250ページに及ぶこの報告書は、医療、飲食、セキュリティ、物流など13領域にわたる市場動向や技術トレンドを体系的に整理した、業界で注目される包括的なレポートとなっている。
サービス概念そのものが変わりつつある
これまでサービスロボットは、反復的な作業を人間の代わりに行う存在として捉えられてきた。しかし、白書によると、2026年以降のサービスロボットは4つの異なる価値の層を持つものとして再定義されるという。物理的な作業の実行に加え、知的支援や意思決定のサポート、さらには対話やケアを通じた信頼関係の構築、そしてRobot-as-a-Service(RaaS)やクラウド連携を中心とするエコシステム全体での価値共創——これらが、次世代サービスロボットに求められる役割の全体像だとされる。
フィジカルAIとエンボディッド知能の融合が潮目を変える
技術側のキーワードとなるのが「フィジカルAI」と「エンボディッド知能」の組み合わせである。生成AI、マルチモーダル認識、エッジAIといった技術が相補的に進化し、ロボットは単なる事前設定に基づいて動作する機械ではなく、物理世界で自律的に状況を把握し、自己で判断を行う知的エージェントとして機能できるようになっている。
この報告書が特に強調しているのは、「予測的サービス」の実現である。ユーザーが具体的に何かを求める前に、ロボットが潜在的なニーズを先読みして対応を開始するという発想は、現時点では多くの企業にとっても新たな視点になるであろう。
RaaSの台頭で、導入障壁が急激に下がる
ビジネスモデルの面でも大きな変化の波が訪れている。ロボット本体を購入する「所有モデル」から、利用量や期間に応じて課金する「サービス提供モデル」へのシフトが急速に進んでいる。白書では、物流分野のRaaS市場が2024年に前年比で約42%の成長を記録したことを示唆しており、導入企業側のコストも従来の購入モデルと比較して平均60〜75%程度の削減になっていると報告されている。中小企業にも高度な自動化が現実的な選択肢となりつつある点は、産業構造に対する影響も大きい。
倫理やガバナンスも技術開発と同じ優先度で議論される
医療や介護、セキュリティなど社会的に敏感な領域へのロボット活用が拡大する中で、倫理的な議論も技術開発と同等の重要性として取り上げられている。ロボットが誤った判断をした場合の責任の所在や、ユーザーのプライバシー保護、障害者やマイノリティを排除しないインクルーシブなロボット設計——これらが、次世代サービスロボットの開発や導入に際する必須条件として位置づけられている。EU AI Actなどの国際規制の動向も視野に入れた対応が、企業レベルで早急に求められるとされている。
日本の強みとなる「おもてなし」の工学的実装
この白書が特に興味深い視点を示すのが、日本企業の国際競争力に関するセクションである。潜在的なニーズの先読みや、場の空気を読んだ適応的なサービス提供という、「おもてなし」の理念をロボット工学に実装することで、日本企業がグローバル市場で独自の優勢を生み出せる段階に到達しているとされる。技術の優越性だけでなく、文化的背景に基づくサービス設計が、新たな競争軸として浮かび上がっている。
まとめ
「次世代サービスロボット白書2026年版」は、サービスロボット産業が技術的・経済的・社会的に同時に大きな変動期を経ていることを、幅広い視点で示したレポートとなっている。経営戦略や技術開発の方針を検討している企業や、政策立案に携わる組織にとっても、現時点での業界全体の動向を把握するために価値のある資料であるだろう。
参照元: PR TIMES プレスリリース(一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000115680.html

